聖夜 answer present~クリスマスの奇跡~
前作の続編、というか、視点変更ver.です。
今回も読了3〜5分程度。
「光祐が何考えてるのか全っ然分かんない。あんたなんて大嫌い」
「へぇ、大嫌いか…。じゃあ別れてくれよ。」
「二度と顔も見たくないから。さよなら。」
―元彼と喧嘩別れして、今日で丁度一年。
今日はクリスマス。
どこもかしこもカップルだらけで、街はピンク色の光で溢れていた。
それなのに…
あたしは一人、仕事帰りの電車の中。
ここですらカップルだらけで、独り者には目に毒だ。
長いようで短かった一年。
光祐を早く忘れたくて、アイツの好きだった長い髪も、バッサリ切った。
「次だよ、次。」
親友にそう言われて、男の子を見繕ってもらったけど、光祐以上の男性には出会えなかった。
あたしには光祐しか居ない、アイツだけなんだって思わされた、必要な時間だった。
喧嘩なんてする筈じゃなかったのに…。
光祐の居ない、空っぽのあたし。
後悔だけが残った。
窓の外に目をやると、色を失ったイルミネーションが輝いている。
あれから、色をなくした世界…。
"光祐、あたしは今でも好きだよ…?"
「次は~、○○~、○○駅~。」
プシュー。
どこかの駅に着いたらしく、アナウンスと、扉が開く音がする。
けど、あたしが降りるのはまだまだ先だ。
構わずに、窓の外を見ていた。
ところが、一向に閉まる気配のない扉と、動き出さない電車。
"あれ?何かおかしい。"
窓から、車内に目を移すと。
"人が…、居ない?"
カップル合わせて、二十人は居たであろう、電車の車内。
だけど、誰もいない。
今さっき入ってきた、一人を除いては。
「メリークリスマス。」
話しかけてきた、人物。
初老の男性で、多分コスプレだろう、赤い帽子に、赤い服、赤いズボンに、大きな袋。
色を失った目でも、鮮やかすぎるその色は、確認出来た。
そして何より、特徴的な白い髭を、鼻の下から胸元にまでたくわえていた。
話しかけてきたのだから、一応返すのが礼儀だろう。
「メリークリスマス。おじいさん、サンタのコスプレですか?」
サンタクロースなんて架空の人物。
そんな事、誰だって知ってる事実だ。
「こすぷれ?儂は本物のサンタさんじゃ。メリークリスマス。」
"からかわれてるのかな?"
そんなあたしの疑いの目もお構い無しに、袋から何かを取り出した。
「よしよし。これが君へのプレゼントじゃな。」
手渡されたのは、小さな箱。
中身は確認出来ないけれど、綺麗にリボンのラッピングが施されている。
「じゃあ儂は、次の子供達の所へ行くとするかの。」
出て行こうとするおじいさんを
「ちょっと待って。」
呼び止めた。
「そうそう、忘れるところじゃった。」
"もしかして本当に…?"
そんなあたしの気も知らず、言葉を続ける。
「そのプレゼントは、君をずっと待っているはずじゃ。」
ポカンとするあたし。
「じゃあの。メリークリスマス。」
あたしを後目に、さっさと電車を後にするおじいさん。
プシュー
扉が閉まる音で我に返ったけど、その時には遅かった。
残されたあたしと小箱。
"返そうかな。"
そう思ったけど、
"君をずっと待っているはず。"
その言葉が頭を過ぎった。
"元に戻せば、分からないよね。"
そう言い聞かせて、リボンを解く。
そっと箱を開け、中身を確認する。
中に入っていたのは…。
"光!?"
眩しい光に目が眩んだあたしは、咄嗟に目を瞑った。
と、目を瞑る直前に、何かを掴んだ。
「…きぃ~、…駅~」
その声とともに、目を開けた。
ここは、電車の中。
さっきまでどこかに行っていた乗客達が、今は居る。
「はっ!!降りなきゃ!!」
ガサガサと荷物をまとめ、慌てて電車を後にする。
"夢だったのかな?"
そう思い、ポケットに手を突っ込むと
カサッ―
手に何か握っている事に気がついた。
何かが書かれた紙みたい。
開いてみると、そこには誰かの電話番号が。
"この番号は…"
何度もかけた相手の携帯番号。
"かけろって事かな?でも…。"
迷惑をかけたくなくて、ポケットに手を突っ込んだまま、駅を後にする。
外に出ると、自分の家の近くではないものの、見覚えのある風景が広がっていた。
ここまでくれば、もう分かった。
"お膳立てはされてるって事か…"
思い切って、電話をかける。
プルルル、プルルル、プルルル
三コール後に出た、愛しい彼。
"もしもし…"
「もしもし、光祐?あたし…。」
「もう、喧嘩して一年だよ?」
"ああ、そうだな…"
言ってから、この一年を振り返ってみる。
あんな奴を好きになるんじゃなかった…。
そう思って、沢山泣いた。
けれど、どんなに格好いい男の子を前にしても、好意どころか、触れられただけで、嫌気さえ覚えてしまう始末。
会いたい…。声だけでも良い。
今度は、そう思って泣いた。
泣き虫。
自分でもそう思ってるのに、迷惑になりたくなくて、ずっと我慢してた。
でも今は…。
「今、一人?」
"だったら何だって言うんだよ。"
ここで声を荒らげれば、また逆戻りしてしまう。
「今、駅に居るんだけど、せっかくのクリスマスに一人なんて寂しいじゃない?あたしも一人だから…。」
"だから?"
「だから、今から会えないかな…?」
言ってしまった。
"…すぐ行く。そこで待ってろ。"
その言葉に、内心喜んでる自分が居た。
"もしかして、プレゼントって彼のこと?"
電話を切ると、自然と笑みがこぼれた。
そして、思い付く。
"彼が来たら、思いっ切り抱きついてやろう。それで、サンタの話をするんだ。"
驚く顔、困った顔。
どれにしたって愛おしい。
思案したまま、空を見上げた。
雪がちらついている。
今日は、ホワイトクリスマスだ。
~Your Christmaspresent from me
あなたから大切な人へ、素敵な聖夜を贈り物に〜
いかがだったでしょうか?お引越し作第2弾。
今回は、前作が男性(光祐)視点だったのに対し、今作は女性(美咲)視点となっておりました。
ん?クリスマスは終わった?
そんな野暮な事は言っちゃ駄目ですよ?(圧)
あと2作ほど、続編としてあるので、読んでくださる奇特な方がいらっしゃれば、投稿しようかと…。
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