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ゲーム終了
機体から降り、動かなくなったそれに触れてみた。熱かったが触れない温度ではなかった。そこへ理事長が近づいて来た。
「おい、いいか」
俺は機体から手を離す。理事長は白衣のポケットから、あのリモコンを取出し、ボタンを押す。理事長の機体が動きただし、動かなくなった俺の機体の腕を引っ張って、校舎陰に消えて行った。
「裏技の使い過ぎでエンスト状態になったみたいだな。前も言ったろ、お前は突っ込み過ぎだ」
「敗者には言葉は無い」
「で?」
「あ?」
「これ、やってよかったか? やらない方がよかったか?」
俺は応援席だけでなく、学外の方々の反応も一瞥してみた。興奮冷めやらぬとはこのことか。それならば、俺がそれを興ざめにするような言葉を使うはずはなく、
「後者ではないよ」
というのが俺の返答であった。
「素直じゃねえな」
「理事長はそれらしく席に戻れよ。これ以上妨げると、リコール運動起こすぞ」
「へいへい」
自分の席に戻って行く理事長の背中は、満足げに見えた。




