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てんてこ舞いが止まらない  作者: 金子ふみよ
第五章
51/108

三善がアレンジしてみれば

 午後からの思案タイムは、理事長が悪くないと評した、祭り→法被というベクトルを発展させることから始め、各クラスの応援合戦に仮装行列的な要素を加味して、ストーリー性を付ける演目をホワイトボードに記すことから始まった。これで、一つくらいオリジナルなものをという要求はクリアするだろ。それは三善の賛同も得られた。

「理事長、オーケーを出すんじゃないかしらね」

 それなら、この演目の名前だな。

「パレイドスコープ」

 俺がそう言った瞬間に三善は冷笑をし、橘は目が点になり、茅上は失笑した。やはりだめか。パレードと、万華鏡――そうクラスの出し物はそれこそ万華鏡のように百花繚乱的な意味を込めて――を表すカレイドスコープを混ぜてみたが、不評この上なかった。

「貢、あなたネーミングセンス最悪ね」

 じゃあ、候補を上げてもらおうか。

「そんなことしている暇あったら、別の種目を考えなさい」

 会長に従順な会計と書記は、俺の提案から回避するため、親ライオンの背後に隠れる子ライオンのようにして頷いていた。

「なら、まんま応援合戦な」

 詳細は説明すればいいだけのことだからな。どうにも腑に落ちない心持ながら、そこに固執しているわけにもいかないので、次行ってみよう。棒倒しや騎馬戦は危険だからとか言って却下されたしな。ただ走って終わりの徒競走は

「つまらん。祭りじゃない」

 扱いされたしな。ネットで探してみるのが手っ取り早いようだ。ただキーワード検索は、「体育祭」から「祭り」に変更せねばならんようだが。

 が、結局のところ「祭り」ではやはり参考になるような種目があるはずもなく、図書室に足を運び、『盛り上がるグループゲーム』とか『運動会はこれだ!』とかいったようなタイトルの本を手にしてみたはいいが、あまり参考にはならないどころか、理事長にはきっとまた拒否られるだろうと思え、とぼとぼと生徒会室に戻ってみたら、三善がホワイトボードの前にいた。俺が書いた競技案に補助線を引いていた。

 障害物競争……ダイ・ハード・リアル版

 リレー……駅伝短距離ヴァージョン

 綱引き……大木押し合い

 パン食い競争……喉から手が出るほどの渇望を示せ!

 ……

「三善、何やってんだ?」

 一番最初の名称はハリウッドから提訴されるぞ、きっと。

「アレンジよ」

「アレンジって」

 いやしかし、三善の書いたものの方が、こうイメージが付きやすいと言うか興味をそそると言うか。

「大木押し合いってのは?」

「その名の通りよ、縄を引くのではなく、その逆に大木を大勢の人数が抱えて押し合って、ラインから押し切った方が勝ちよ」

 綱引きとは正反対の内容。逆転の発想ってことか。橘や茅上も感心のまなざしを送っている。

「面白そうだな、それ」

「そう……」

 三善が今まで見たことのない素振りをした。胸の前でペンを両手で摘んで上半身をわずかに左右にひねった。

「どうした、三善。そんなしおらしい返事して」

「別に、どうということではないわ。貢がもっとアイディアを出せば、いいだけのことと思って、部下の業務怠慢を憂鬱になっただけよ」

 会長様は早口にそう言って着席をして自分の業務に戻った。俺が珍しくお前を褒めたって言うのに、なんて態度だろうね。それにしても見事なものだ。これを見習って進めないとな。

 ホワイトボードを見直してみると、没案には赤色の二重横線が引かれていた。ただ、応援合戦だけは朱を入れられることはなく、そのままだった。


 結局。五月初旬の三連休プラス土日の休日は、新設高校に缶詰めという状態になり、ゴールデンとは程遠いウィークを過ごすことになった。


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