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てんてこ舞いが止まらない  作者: 金子ふみよ
第四章
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三善には反論できない

 何とも俺って男はなどと、動揺しっぱなしだった自身を叱っていると、間もなく仕事現場に到着。すると、

「あら、お二人さんでのご帰還かしら」

 三善がいきなりそんなことを言うものだから、

「ワリイかよ」

 売り言葉に買い言葉である。己の妄想をばれないようにすると、男子はこうなるものなのだ。

「しばらく時間が経っていたけれど、どうしていたのかしら。まるで、二人で仲よろしくいらしたようで」

 部室のことが思い出され、ついつい

「ち、ちげえよ」

 言い淀んでしまった。

「あら、ほんとによろしいことでもしていたのかしら? 動揺しているようだけど」

 しまった。完全に三善の術中にはまったようだ。

「茅上の手伝いをしていただけだ。悪いことなんてしてない」

「私は悪いことなんて言ってないわ。それとも貢、あなたにとっては悪いことという認識があったのかしら」

 さすが三善、将来は法廷で活躍できそうだな。って言っている場合じゃなく、

「ただ手伝ってたって言ってんだろ」

「ムキになるところが怪しいわね」

「自己弁護しているだけだ」

「弁護しなければならないようなことでもあったの?」

 すげえぞ、こいつ。シナリオもねえのに、まるで俺の言うことを想定できていたかのように、淀みなくツッコんできやがる。久米の情報は間違いではない。三善の頭の回転の速さは尋常ではないぞ。

「あの」

 そこまで沈黙だった、茅上が口を開いた。

「荷物、運んでもらっただけです。その後、みっちーの口に歯磨き粉が付いているのを言ってあげただけです。それ以外は何も……ないよ」

 三善の言いに、悪いと思ったのか茅上はうつむき加減で、事実を述べた。身長が更に小さく見えるから、どんと胸を張っていろよ、悪いことなんてしていないんだから。

「そう。作業を続けましょう」

 何だよ、その剣の収め方。俺には辻斬りみたいな言い方しといて。

「貢には前科があるからよ」

 橘の廊下事件と、お前がいた保健室事件は、完全に冤罪だろ。

「けれど、あなたにはそうしたことがあり得るってことでしょ」

 ……確かに。って認めちゃいかん。が、確かに動機や原因を度外視し、状況だけをかいつまんでみれば、俺はヤバイな。これ以上評価を下げないように、慎重に行動しよう。

「悪かったよ」

「何が?」

「茅上の手伝いする前に、ちと顔出せばよかった」

「そう」

 三善はそれ以上追及しようともせず、眠気などまるでなかったかのように、俺は淡々と作業を進めたのだった。


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