茅上は語る
三善、橘の話を聞いている間に、すでにカレーを食べ終わっていた茅上は、
「う~ん、私はカイチョーや和沙みたいに理事長ってのは……あった」
茅上の話。茅上のいた中学は部活が厳しく、ということは上下関係もかなりきつかったらしい。その辺は俺も同じ部活をしていたから、茅上の中学のそれは噂で耳にはしていた。高校でも部活をしたいと思っていた茅上は、そんな部活の姿に違和感を抱いていた。理不尽な上下関係や根性主義なんかはまだどこでもあることだろうが、それが部活動のあるべき姿ではなく、他にもいろいろな活動の方向があってもいいんじゃないかと。
「んで、新設高校なら先輩もいないし、自由勝手出来るかなって思って。そんな感じでここもありかなと思ってね」
照れ臭そうに笑った。
「でも、それってどうしたらいいかわかんないってことでもあるんだよね。評判がない、指導者が誰かもわからない。チームはどうなるかわからない。結局どの高校にしようかって頭の中が堂々巡りになってさ。とりあえず公立高校との併願で受験したのよ」
そしたら、面接官が理事長だったと。んで、あの人はまたうまい具合に茅上のそんな心中を引き出して喋らせたわけだ。
「そしたらね、理事長はこう言ったんだ。『好きなように作っていけばいいじゃん』て。そうなんだよね。自分が思っていること、入部してくれた皆が考えていること、顧問の先生の意見。与えられた組織でやるのは中学で沢山。楽しく勝ちたいんだ。今んとこ、皆と実際仲良くやってるしね」
三人三様の明確な志望理由、いやこれは動機だな、があったわけか。
それで残る俺の番となったわけか。こんな話を聞いた後じゃ、俺の理由など話しづらくて仕方ない。しかし、俺が話題を振っておいて、俺がその話をしないというわけにもいかない。平日なら昼食タイムの終了を告げるチャイムがあるが、今日にいたってはそれは無い。回避策がないわけだ。
「貢、あなたの番よ」
だろうな。では……
「頼まれたから」
俺の一言に一同がキョトンとしている。それはそうだろ。文脈がまるでないからな。
「貢、詳しく」
三善が冷たく視線を送る時はけっこう感情が揺れている時と思って間違いはないだろう。しかも喜怒哀楽の中で言えば、「怒哀」の辺りで。だから、これ以上さかなでると、業務が増えかねない。正直に語るか。




