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てんてこ舞いが止まらない  作者: 金子ふみよ
第四章
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小野教諭の指令

 その翌日、学校へ着くなり校内放送が響いた。

「生徒会役員は、教務室小野まで、一分以内。来られなければ、副会長責任」

「待てェイ!」

 教室からダッシュしたのは、言うまでもない。教室では久米が腹を抱えて大爆笑をしていたがな。

 教務室へ着くと、他のメンバーはすでに揃っており、

「副会長、遅い」

 小野教諭から早速の小言をいただくことになった。

「いや、一分以内でしょ?」

「それで、理事長から何だがな……」

「待て、さすがにスルーするな」

「常設委員会はオーケー、だけれども体育祭実行委員を臨時委員会としてすぐに発足させることだって」

 俺のツッコミさえも完全無視である。昨日作った委員会の発足案についての理事長側の申し分てことか。それよりもさ、

「体育祭って、まだ早いんじゃ?」

 俺以外でも率直に思うであろう。まだ四月である。予定では体育祭は六月である。まだ二カ月もある。その行事は規定事項としてそのまま日程通り行うことが議決されたんだがな。その疑問に対して

「知らん。が、早くはないと個人的には思うがな」

 理事長だけでなく、小野教諭もそう思う理由を訊いてみた。が、小野教諭は実に面倒臭そうにため息をついてから、お答えになりました。

「この学校は新設だろ。何でもやるんだったら、事前準備を念入りにしておくのに越したことはない。他の高校みたいに伝統とか慣習があるわけじゃない。まさにゼロから作らなきゃならんからな。それにだ……」

「それに?」

「あの理事長が他の学校みたいな体育祭の内容にオーケー出すと思うか?」

「……そうですね」

 俺の三点リーダーの所では、理事長が満面の笑みでサムズアップをしている姿が思い出されていた。

「しかし、昨日もクラス代表には会議に参加してもらってます。新しく議題ができたからと言ってまた招集するのは、段取りが上手くないと思いますが」

「巨勢の言うこともわかる。私もその点に関してはどうしたものかと思うのだ。ただでさえ部活やら委員会やらが始まったばかりだからな、これ以上ばたつくのはそれこそ収拾がつかんかもしれないからな」

「それなら」

 それまで沈黙を保っていた会長。さて、こいつはこの問題をどう解決するだろうか?

「今年度は生徒会を中心に、各部の部長が沿革協力するという形態ではいかがでしょうか?」

「おい、待てよ。三善。今の仕事の量わかってんだろ。これ以上は抱えられねェぞ」

「予算はここ一、二週で落ち着くわ、それに規約は四月中には終わる。となれば、ゴールデンウィークに入る前から体育祭に向けての仕事に移れるわ。それに生徒会が行えば求心力の強化にもなるし、他の生徒は部活や委員会に集中できる。部活は早くて下旬には地区大会もあるし。その大会後に協力と言えば、大会からの意識変換もスムーズにいくはずよ」

「そうか? 生徒会が良いように思われねえか、どうぞご勝手に進めてくださいみたいなさ」

「それが悪いこと?」

「悪かアねえけど……」

「和沙さんと梢さんの意見は?」

 教務室に入ってトーテムポールのように突っ立っている二人にも当然意見は聞かねばならんわな。

「ワ、私は……玲那さんのお考えに異論はないで……ゴザル」

「私もそれでいいわよ」

 などと言うものだから、

「茅上、部活の方は? 昨日も一昨日も行ってないだろ?」

「今日から本格的だから。それはカイチョーにも言ってあるの。それにカイチョーの言う通りで、大会が終われば体育会系は協力してくれると思うよ」

 言われてみれば、確かに一般生徒から体育祭の実行委員を選ぶよりも、各部の部長、特に運動部がいてくれた方が、準備や当日何かあった時にも動いてもらえるという公算を立ててもおかしくはないのか。

 俺まで三善の案に乗りかかっていると、三善の提案を聞いて顎に手を当てて思案気味だった小野教諭が、

「それで行きましょう」

 とまとめた。

「そうするにしても手続きはどうするんです?」

「大丈夫。予算を盾にすれば部活は反論できないて」

 怖ェなあ。てことで、決定。立て続けに大仕事になりそうだ。

 ところで

「なんで、小野先生の所に来なきゃならなかったんですか? 理事長が用事があるなら直接、俺たちに言えばいいのに」

「理事長がそうヒョコヒョコとうろついていられないでしょ。それにね、私、生徒会の顧問なのよ」

 初耳なそれは、世の中には知らないことがあるというのを、俺に痛感させた。


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