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てんてこ舞いが止まらない  作者: 金子ふみよ
第三章
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部活動案

 三善さんの統治能力は驚嘆に値するものだった。中学の時の委員会や生徒会や先輩の進め方がグダグダだったせいもあるかもしれないが。

「まずはまずは部活動の案を作りましょう。明日の朝のホームルームで告知してもらうようにして、紹介用のプリントの用意と校内掲示ポスターの作成をします。部活設立や申請手続きなどの規定案も考えておきましょう。委員会はその後に回します」

 つまりは、放課後一杯を使ってこれと思われる素案を作っておくということか。いきなりに激務だな。

「いや、明日って理事長や代表者会の承認はどうすんだよ」

「貢は、部活動の候補を上げる。橘さんと茅上さんは明日朝のホームルームで配布する紹介用のプリントと申請用紙を作って。私は手続きの方法を考えます」

 手際がいいったらありゃしない。俺の疑念は無視されたがな。てか、何げにいきなり呼び捨てだしな。

 幸いにも各机にはパソコンが置かれていたので、俺はまず思いつくまま部活の名前を羅列させ、その後、ネットで他の高校にはどんなもんがあるか検索して、項目に追加しておいた。

 作業中、

「差し入れ~」

 とか言いながら理事長が登場し、

「お前らが決めなきゃ何も始まらんからな」

 と念押しされ、規約の締め切りが四月二八日だと言って消えて行った。まったくこの忙しい時に。

 ホワイトボードにメジャーなものに絞った部活を列挙。バスケットボール、バレーボール、野球、陸上競技、ソフトボール、テニス、卓球、バドミントン、剣道、柔道、美術、文芸、吹奏楽。

 それらを橘さんと茅上さんがプリント原稿にまとめていく。手の空いた俺は三善さんから、作成したプリントや書類のファイリングなんかも仰せつかった。

 ようやく終わってみれば、もう三〇分で下校完了時間だった。

「どうできた?」

 ずっと机で俺たちに口出しもせず黙々と何か作業をしていた我らが会長。

「お前は何してたんだよ」

 思わず突っかかるように言っちまった。部下が汗水たらして働いてんだ、長が何にもしなくていいわけないだろ。

「連絡を待っていたのよ」

「あ?」

 三善さんが手招きで自分の席に来るように促す。三人が机上のパソコン画面を見る。

「OKです」

「問題ありません」

「それでいいと思います」

 何か許諾をする文言が並んでいる。

「なんだよ、これ」

「クラス代表の方々に承認をいただきました」

「あ?」

「さっき私たちの素案を作ったでしょ。だから、クラス代表の方々にメールを送って賛否を問うたのよ」

 で、来たのが承認ということか。俺と同じクラス代表大江灯子の名も見える。間違いはなさそうだ。いつの間にメルアドを交換してたんだろうな。

「でも、理事長に見せてないだろ」

「いえ、承認はもらっているわ」

 そういや理事長が差し入れに来たとき、何か話していたな。

「あの人が来たときはまだ素案なんてできていなかったろ」

「ええ、任せると言われたのだけど、一応と思って。だから……」

 三善は別のメールをクリックする。「バッチグー」という返信があった。なんて古いリアクションだ。

「後は全員分印刷してクラス毎に分ければ完全終了。けれど、それは明日でもいいでしょう。私がやっておくわ」

 さすが会長。〆は立派なことを言う。

 せっかくだからということで、理事長の差し入れをいただくことにした。橘がお茶を淹れ、その差し入れシュークリームを食べると、放送が鳴った。

「下校時間まで後五分です。校内に残っている生徒は準備を整え、帰宅してください」

 名前を失念しましたが、何とかと言う先生が言っている子の放送も、放送委員会みたいなのを作ってその生徒たちがするようになるんだろうな。

「それじゃ、今日はここまでということにしましょう」

 新年度早々の業務終了だった。


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