一学期終業式の体育館その後
校歌斉唱をして、終業式は終わり、解散となる。クラス毎に体育館から出て行くが、生徒会役員たちは、ステージ上のマイクやら何やらの片づけをする。
手が空いたかと思っていると、
「貢君、他に何かあるのカヨ?」
控えめに残業の有無を尋ねてきたのは、高校男子平均身長より高い俺と大差のない身の丈の会計の橘和沙であり
「いや、もう終わりみたいだ」
と答えた矢先に
「みっちー、これ重い」
と用具室前で、なんでそんなもんがこんな所に出てるんだよと思うものの、バスケットボールが一杯の籠を、書記の茅上梢が小さい体をいかんなく生かしつつ、必死に用具室に入れようとしていた。この用具室には、トラウマがあるのだが、それは後でお話しすることにしよう。そのフラッシュバックを振り払うようにして、
「茅上が片付ければ終わりだから、先に戻っていいぞ」
「え、でもモ」
「大丈夫、大丈夫。あれくらい男手一つあれば終わるから」
「そう。じゃあ」
と言って音もなく歩き始めた。用具室の方へ。
「梢さん、私が手伝います」
「いや、和沙、みっちーが手伝ってくれるから大丈夫だよ」
ガシャンガシャンとボール籠を引き合い押し合いしていれば、バビョーンと籠の中のボールが散乱するのは必至であり、余計な仕事が増えたのだった。
しょんぼりしながら会計と書記がボール拾いに回り、随分と軽くなった籠を用具室に入れた。
「おい、終わったか?」
お二人さんとも両手いっぱいにボールを抱えて来た。残業終了。
「じゃ、戻るか」
気が付けば、三善を除く生徒メンバーの三人しか体育館にはおらず、三つの足音が鳴り響いていたのだが、さらに気が付けば状況的には両手に花っていうのか、これは。なんか姉と妹に挟まれた長男みたいだけどな、身長だけで言うと。
「あ、先生のとこに行かないとゥ」
すっかりうっかりしていたのをひょっこり思い出し、橘がいつも通りの変な文末を残して駆けて行き、
「ラッキー」
なんてつぶやいた茅上は、次の瞬間
「なんで、こんな日まで日直があるのかな、みっちー先行くね」
業務を思い出したらしく、橘の後を追っていくかのように、カラオケルームでもないの
反響がいつまでもし続けるくらいにでかい声を残して、駆けて行った。
これからホームルームがある。教室へ向かう。廊下には俺一人しかいない。
「まあ、なんとも賑やかなもんだ」
こんな高校生活なぞちっとも想像してなかった。入学の日から、この慌ただしい俺の生活が始まっていたのだ。




