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てんてこ舞いが止まらない  作者: 金子ふみよ
第三章
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誤解は瓦解する

 教務室に連れて行かれ、状況説明をした。所在地を確認して、極力入りたくないと思っていた部屋に早速連れて来られてしまったわけだ。実際タチバナさんがずっと猫を胸に抱えていたので、それが物的証拠になった。彼女によれば、窓の外から猫の声が聞こえ、窓の外の幅の狭い桟に猫を発見。拾い上げようと身を乗り出して、掴めたと思ったら、風景がジェットコースターのように加速したので驚いたとのことだった。ということをたどたどしく語ってくれたおかげで俺は冤罪と証明されたはずだが、小野教諭はそれで満足せず、御小言をいただくことになった。

 ――俺、あんたが二日酔いでくたばってる時、頑張った気がするんだけどなあ

 なんて思っても言えるはずはなかった。小言の時間が延長させるのは、それが無料であっても避けたいことだからな。

 てか、猫はどっから入って来たんだ? 小言が終わって、小野教諭に訊いてみた。もちろん丁寧な口調に変換させておいたが。

「知らないわよ。そんなこと」

 ごもっともで。

「おお、ここか」

 ジャージに白衣という相変わらずの格好で理事長が教務室に登場。

「学校に猫がいたんだって?」

 早耳だな。しかし、そこは理事長か。セキュリティの強化とか考えるんだろうか。……なんていう良心に期待したのは俺の早計であったようだ。

「まったく、どこ行ってたんだよ」

 理事長はタチバナさんから猫を拾うと、そんなことをのたまわりやがった。しかもなとも撫で声で。

「待て、てことは……」

「花壇の手入れしていたら、見つけてよ。腹減ってそうだったから、理事長室連れて行ってミルクやってたんだ。その後、仕事していたら姿が見えなくなってさ、探してたんだよ」

 結局身内の不始末で、俺に被害が及ぼされたわけね。

「ま、そういうことで単衣ちゃん、じゃなかった、小野先生、こいつを許してやってくれたまえ。じゃ」

 疾風は猫を抱えて行った。

「まったく……じゃ、あんたたち戻っていいわよ。ほら、飯の時間だし」

 こういう口調じゃなければ、きれいどころの小野教諭は非常に残念であった。

 教務室を出て、タチバナさんは申し訳なさそうに何度も頭を下げたが、

「そこまでする必要はないことだよ。周りが誤解してるだけなんだから」

 そう言って俺はその場をあとにした。


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