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てんてこ舞いが止まらない  作者: 金子ふみよ
第二章
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余興がつきもの

「さて、次はこれだ!」

 ド派手なジャケットに着替えた理事長――とは言ってもジャージの上に羽織っているだけなのだが――は、これまたド派手なジャケットを着て、ハットをかぶり、目元はマスクで隠したマジシャンをステージに上げた。

 カードやロープのどっかで見たことあるマジックだったが、こういう時には意外に盛り上がるもので、皆に見やすいように、パズル大会で登場したスクリーンに映しだされていたのも相まって、拍手喝采だった。

「では、お時間が近づいて参りましたので、最後のマジックです。これには少々お手伝いをしていただきたいので、お一人壇上に上がっていたただきましょう。皆さんの胸元にお付けのお花をご覧ください。その中心に数字が書かれていると思います。これから私がここに登場しましたマシンのボタンを押して、スクリーンに出ました番号の方は、ステージまで!」

 マジシャンの一言で一同胸元を見る。よく見れば、マジシャンの言う通り、数字が小さく書かれていた。

「レッツスタート!」

 お菓子箱くらいの大きさの立方体についたボタンが押され、スクリーンに数字がアットランダムで続々と現れては消え、現れては消え。

「では、ポチっとな」

 もう一度ボタンが押されると、高速のパラパラ展開だった数字がゆっくりと点滅していく。その動きが止まるとスクリーンにはでかでかと数字の「4」が点滅していた。何か意味深な数字じゃね?

「出ました! 四番の方こちらへ!」

 会場は「誰だ? お前か?」的なざわつきにあふれてくる。

「いらっしゃいませんか?」

 マジシャンは会場を見渡すように身体を乗り出している。

 そこへ一人の少女がゆっくりとステージの方へ歩いて行った。

「あの……」

 か細い声で、右手をわずかに挙げた、いかにも物静かな大人しそうな女子だった。腕章をつけていたからクラス代表の一人。女子にしてはかなりな身長、俺とほぼ同じくらいなのではないか。バスケとかバレーとかをしていそうなのは、そのショートカットな髪もそう印象付けるのに不十分ではない。

「お待ちしておりました。ではこちらへ」

 マジシャンの手招きで登壇。

「お名前は?」

 マジシャンに促されて、その女子は名乗った。

「え、あ、あの、私は……」

 大人しい子が人前に出されたら、ああなるわなの典型的な応答だった。

「た、タチバナカズサで……アル」

 でアル? なんだか名乗っているのに無機的な発音に聞こえた上に、文末が緊張この上なしって感じだ。

 ――上手くいくのかね、このマジック

 俺は予言者でもなければ、超能力者でもないが、俺の直観はかなりな危機管理能力を備えているらしいことが、このマジックで証明されてしまった。


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