余興がつきもの
「さて、次はこれだ!」
ド派手なジャケットに着替えた理事長――とは言ってもジャージの上に羽織っているだけなのだが――は、これまたド派手なジャケットを着て、ハットをかぶり、目元はマスクで隠したマジシャンをステージに上げた。
カードやロープのどっかで見たことあるマジックだったが、こういう時には意外に盛り上がるもので、皆に見やすいように、パズル大会で登場したスクリーンに映しだされていたのも相まって、拍手喝采だった。
「では、お時間が近づいて参りましたので、最後のマジックです。これには少々お手伝いをしていただきたいので、お一人壇上に上がっていたただきましょう。皆さんの胸元にお付けのお花をご覧ください。その中心に数字が書かれていると思います。これから私がここに登場しましたマシンのボタンを押して、スクリーンに出ました番号の方は、ステージまで!」
マジシャンの一言で一同胸元を見る。よく見れば、マジシャンの言う通り、数字が小さく書かれていた。
「レッツスタート!」
お菓子箱くらいの大きさの立方体についたボタンが押され、スクリーンに数字がアットランダムで続々と現れては消え、現れては消え。
「では、ポチっとな」
もう一度ボタンが押されると、高速のパラパラ展開だった数字がゆっくりと点滅していく。その動きが止まるとスクリーンにはでかでかと数字の「4」が点滅していた。何か意味深な数字じゃね?
「出ました! 四番の方こちらへ!」
会場は「誰だ? お前か?」的なざわつきにあふれてくる。
「いらっしゃいませんか?」
マジシャンは会場を見渡すように身体を乗り出している。
そこへ一人の少女がゆっくりとステージの方へ歩いて行った。
「あの……」
か細い声で、右手をわずかに挙げた、いかにも物静かな大人しそうな女子だった。腕章をつけていたからクラス代表の一人。女子にしてはかなりな身長、俺とほぼ同じくらいなのではないか。バスケとかバレーとかをしていそうなのは、そのショートカットな髪もそう印象付けるのに不十分ではない。
「お待ちしておりました。ではこちらへ」
マジシャンの手招きで登壇。
「お名前は?」
マジシャンに促されて、その女子は名乗った。
「え、あ、あの、私は……」
大人しい子が人前に出されたら、ああなるわなの典型的な応答だった。
「た、タチバナカズサで……アル」
でアル? なんだか名乗っているのに無機的な発音に聞こえた上に、文末が緊張この上なしって感じだ。
――上手くいくのかね、このマジック
俺は予言者でもなければ、超能力者でもないが、俺の直観はかなりな危機管理能力を備えているらしいことが、このマジックで証明されてしまった。