表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/72

43話 開幕

また、短くてごめんなさい!

今日の夜にもう一話投稿します!



 王との謁見から三日後。

 ついに舞踏会の日を迎えた。


 僕達がこの三日間何をしていたかというと、まず僕はこの王都のあらゆる場所を見て回った。

 やはり王都というだけあって、全てが高水準であった。

 服も食も建物も、異世界からやってきた者達の知識と、この世界の根底にある魔法の技術がうまく噛み合って、凄まじい発展を遂げていたのである。


 実際に僕達が服を買ったあの服屋は、異世界の人間が経営しているらしい。

 しかも、この王都にあるのは支店であり、本店は技能国ルサンザにあるとの事。


 次にロミア。

 彼女は魔法関連の施設へ足を運んでいたそうだ。

 様々な魔道具を開発している機関があって、そこで見学をさせてもらったと言っていた。


 そして、エイルはというと——


「私は武具店を回っていました」


 と、言っていた。

 彼女にもお金は渡していたのだが、特に何も買っていなかった。

 けれど、その代わりに一輪の花を大事そうに宿屋の部屋に飾っていた。

 僕がその花について問うと、


「この花の名前はストレリチア。花言葉は“全てを手に入れる”だそうです」


 と、嬉しそうな顔で教えてくれた。

 散歩の途中に寄った、ある花屋がくれたらしい。


 まぁ、こんな風に三者三様にこの三日間を思う存分楽しんだのであった。

 



 そして僕達は今、今度は王城ではなく王宮に来ていた。

 王城に王宮とは、どれだけの資産があるのだろうか。

 途方も無いだろうから、考えるのはやめておこう。


「ノア様、ロミア様、こちらです!」


 場所が違えど、人は同じ。

 いつものようにオルトラさんが、王宮の入り口で手を振っていた。


「毎度、ご苦労様です」


 僕は頭を下げる。


「いえいえ。これも私の仕事ですからね。……おや? そちらの麗人は?」


 そう尋ねる彼の視線は僕の背後に向いている。

 あぁ、そうか。オルトラさんはエイルを見るのは初めてか。


「エイルです。主人様の従者を務めております。よろしくお願いします」


 そう言ってエイルとオルトラさんは挨拶を交わしている。

 騎士と軍人。共通する何かがあるのだろう。

 二人はすぐに打ち解けていた。


「では、ご案内しますね」


 オルトラさんに連れられて、僕達は王宮の中へと入った。




 馬鹿みたいに広い会場は、内装にもお金がかかっているようだ。全体的に煌びやかで目が痛い。

 沢山の人々の中、僕は見慣れた顔を発見する。

 王が座るための椅子の付近に、フィグスさんがいた。どうやら誰かと話しているようだ。

 しかも、その相手は防衛戦の前夜に伝達魔法にて登場した、セリス・ウェンデッダさんであった。


 辺りを見回すと、ほとんどが貴族や役人だらけ。

 高そうなドレスや燕尾服にその身を包み、やって来た僕達を興味深そうな目で見ている。



「やっぱり、私にドレスは似合わないんでしょうか……?」


 そう言って首をかしげるロミア。

 これは、情報子変換で用意したものだ。

 いつものローブを情報子に変換して取り込み、それを再構築して別の衣服として物質化させる。

 出来そうだなとは考えていたけれど、本当に出来てしまった。恐るべし、『知識は世界を開く鍵ヴァイスハイト・シュリュッセル』。

 それによって今のロミアは、純白のドレス姿だ。


「大丈夫です。とても似合ってらっしゃいます」


 エイルが咄嗟にフォローを入れる。

 確かに。ロミアにそのドレスはよく似合っていた。

 まぁ、着ている人がそもそも良いので、どんな服を着ても可愛くなるのだろう。


 対して僕は……いや、僕とエイルは燕尾服を着ている。

 いや、何でエイルも!?

 と、思ったのだが彼女は「なるべく戦いやすい格好の方がいいです」と言って聞かなかったのだ。

 別に異論はないのだが、エイルの場合、その姿が決まりすぎている。

 男の僕より、男装をしている彼女の方が格好いいくらいだ。解せぬ。



「あれー? ノアさん?」



 僕が自身とエイルとの差に嘆いていると、背後から呑気な声が聞こえた。

 どこかで聞き覚えのあるその声。

 僕が振り返ると、そこにはある冒険者がいた。


「レイド! お前も来てたのか!」


「王様に呼ばれたんですよー。本当は行きたくなかったんですけど、ご飯が無償で食べれるって聞いて来ました」


 うん。何ともレイドらしい、欲望に忠実な理由だ。

 またどこかで会うとは思っていたが、こんなに早く会えるとは……。

 彼も防衛戦を共に戦った冒険者である。

 その名をレイド・クルラリオン。

 彼がいなければ、王国には甚大な被害が出ていただろう。

 それくらい活躍してくれたのだ。


 そこからはレイドを含めて、たわいもない話をしながら会の始まりを待った。



 そして——



「トレンス王と、ソフィア王女の入場である!!」



 突如、会場内に響き渡る音声。

 それは、国王と王女の入場を伝えるものであった。

 その場が静まり返り、皆が頭を下げる。


 そして悠々とやって来た二人の人物。

 厳格な雰囲気を纏った彼はユートラス王国現国王、トレンス・ユートラス。

 そしてその後ろを歩いているのが、王女 ソフィア・ユートラスだ。

 彼女の美しい顔には、少し憂いを帯びているようにも思えたが気のせいだろうか。


 席に着き、会場内を見渡すトレンス王。

 その時、少しばかり目が合った。

 一瞬だけ笑みを見せた後、すぐに毅然とした表情へと変わり、言葉を発する。


「皆の者、今日はよく集まってくれた。この舞踏会は王国防衛の達成を祝うためのものだ。存分に楽しんでくれ。

 それでは、これより舞踏会を始める!」


 トレンス王の威厳に満ちた声で、舞踏会は始まりが告げられた。








 舞踏会の始まりに、動き出した者達がいた。

 それは三人の怪盗と一人の女神。

 彼らの目的は同じ。

 この国の王女、ソフィア・ユートラス。


 三人はこの会場から彼女を盗み出そうとしており、一人は彼女をこの世から消し去ろうとしていた。



「準備はいいか? 」


「「準備完了! こっちはいつでも大丈夫だよ!」」


「「こちらも抜かりない」」


 [咲き誇る徒花(ストレリチア)]の三人はお互いに伝達魔法で連絡を取り合う。

 メルとリタは建物内におり、ギドンは王宮の外で待機している。


「じゃ、手筈通りに!」


 活動を始める三人。


 そして、一人の女神も行動に移る。


「さて……殺しましょう。静かに、けれど残酷に殺してあげましょう」


 大きめのナイフを両手に持ち、影から忍び寄るスカーレット・ドラウン。



 そして幕を開けるのだ。



 紅目の魔導師と全てを手に入れる怪盗、残虐な婚姻の女神の王女を巡る三つ巴の戦いが——。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ