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小話 白と黒

申し訳ありません。明日はちゃんと正規の次話を投稿したいと思います!


 宿屋の一室。

 1匹の黒猫と1匹の白狼がいた。

 彼らはそれぞれの主人の帰りを忠実に待っている。

 試験の良い結果を祈りながら。


「おい、フェンリル。貴様は人化できるか?」


 ベルがソルドへ唐突に話しかける。

 自身に話しかけられるなど微塵も予想していなかったソルドは全身に緊張が走った。


「人化……ですか。我はやった事が無いのでわかりませんが……」


 対応の仕方がわからず、とりあえず下手に出たソルド。

 これは間違いでは無かった。けれども、正解でも無かった。

 下手に出たソルドに対し、ベルが気を良くして調子に乗ってしまうからだ。


「そうか。なら、私がお手本を見せてやるからな。試してみると良い」


 頼んでも無いのに人化のお手本を見せるベル。

 

(ベル様は直感に基づいて生きてらっしゃるのだろうか……)


 ソルドは心の中でそう思った。

 その通りである。

 ベルに思慮深さなど無く、直感と感覚と憶測で生きているのだ。

 そこに悪魔としての狡猾さは感じられず、あるのは猫の無邪気さと好奇心だけである。


「それっ!」


 短い掛け声とともに人化を行うベル。

 黒い煙がベルを包み込む。

 そして、煙の中から現れたのは猫耳の生えた少女であった。


「どうだ? この荘厳で威厳の溢れる姿に見惚れてしまうだろう?」


 ベルは自慢げな顔でそう言った。


「は、はい。とても威厳のあるお姿です……」


 ソルドは必死に言葉を取り繕った。

 それは仕方ない事だった。

 ソルドの目からすれば、そこにいたのは何とも可愛らしい猫耳の少女だったのだから。

 

「さぁ、ソルドもやってみろ」


 ベルは促す。

 ソルドは困る。

 ベルのお手本には、何の説明も無い。

 彼女は直感的に生きているため、見せれば分かると思っているのだ。


「そ、それではやってみます…………。そりゃ!」


 ソルドは人化を試みた。

 生まれて初めて行う人化。

 

(失敗すれば、ベル様の失望されてしまう……!)


 変に使命感の強いソルドだったからか、神の気まぐれか、一発で人化を成功させた。

 光がソルドを包み込む。

 そして光の中から現れたのは犬耳、正確には狼耳を生やした美少年であった。

 彼の綺麗な白髪は光が反射して輝いている。


「おお、一回で成功させるとは。やるな!」


「お褒め頂き光栄です!」


 人化に成功したのはソルドの素質のおかげなのだが、お互いにそんな事は気にしていなようだった。


《『純白ト漆黒』を解放しました》


 ベルとソルドの頭の中に無機質な声が響いた。

 これは以前ノアがエイルに一時的に能力の権限を譲渡した時に聞こえた声と同じである。


「変なスキルを獲得したようだな……」


「どんなスキルなんでしょうか?」


「知らん」


 ベルはそう言ってソルドに正対した。

 身長的にベルはソルドを見上げることになる。


「まぁ、そんな事よりお前は今日から私の弟子だ」


 直感的に感覚的にベルは言って、ソルドの肩を押した。

 すると、直立状態の脆さは赤ん坊と同じくらいのソルドは耐えられずに後ろへ倒れた。

 しかしながら、ソルドが床に打ち付けられる事は無く、ベッドの柔らかさを背中で感じるだけであった。

 


 ガチャリ



 丁度、ソルドが倒れた瞬間に部屋のドアが開いた。

 宿屋の従業員が清掃をするために入ろうとしていた。

 

「あ…………」


 部屋の中の光景を見て、従業員は静かに扉を閉めて去っていった。

 従業員が何を見たかというと、ソルドをベッドに押し倒すベルの姿だった。



 部屋に重い沈黙が流れる。

 

「あ、あの……」


「何も言うな」


「はい」


 そこでベルは一呼吸を置き、ソルドを押し倒したままの状態で告げた。


 おい、この事は他言無用だ。私達は人家の研究をしていたら運良く『純白ト漆黒』を手に入れただけ……いいな?」


 至近距離でベルに凄まれ、否。悪魔に凄まれたソルドは、ただ頷くことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

『純白ト漆黒』……厨二病患者の私がウキウキで考えたスキル。詳細は後日。

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