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17話 浄化

pvが増え、ブクマが増え、感想が増え、私は嬉しくて嬉しくて死にそうです。

急に話は変わりますが、もしかしたら、近いうちに2〜4話を修正するかもしれません。

結構、大幅に修正するかもしれないのでご理解のほどよろしくお願いします。

修正いたしました(2019/03/03)



「エレイン、どういうつもりだ?」



 白狼は青緑色の髪をしたエレインさんに問う。

 エレインさんとこの白狼は知り合いなのだろうか。まぁ、お互いに名前を知っているくらいなのだから、関係ない事は無いだろう。


「ソルド様、この方達はヴィヴィアン様のお知り合いです。もしかしたら、この湖を元に戻せるかもしれません」


「何、ヴィヴィアン様の……? それは本当か?」


 エレインさんがこちらを振り返る。これは、僕にもう一回ヴィヴィアンさんを呼べという事か?

 エレインさんはずっとこちらに無言で微笑みかけている。

 多分、出せってことだな。


「あぁ、僕達がヴィヴィアンさんと知り合いなのは本当だ」


 僕はそう答えつつ、再び魔導書を開く。

 すみません、ヴィヴィアンさん。もう一回お願いします!


《ええ、別に構わないわ。ご主人に頼られるのは従者の喜びよ》


 そう言ってくれるとありがたい。

 魔導書から光が溢れ、深い青色の髪をしたヴィヴィアンさんが登場する。

 ロミアは完全に彼女に怯えているらしく、僕の体の陰に隠れていた。


「あなたとも久しぶりね、ソルド。元気だったかしら?」


 ヴィヴィアンさんが白狼……すなわち、ソルドに声をかける。

 すると、ソルドは彼女の目の前までやってきて、その頭を垂れた。

 エレインさんもそうだが、みんな様付けで呼んでいるな……。もしや、ヴィヴィアンさんって偉い人なのか?


《推測ですが、ランスロットの守護妖精だからかと思われます。役割を持つ妖精とそうでない妖精とでは差がありますので》


 そうなのか。個人的には、ランスロットの守護妖精でなくとも様付けで呼ばれていたような気がするけど……。

 

 

「これはどうしたの?」


 ヴィヴィアンさんはその冷めきった目で湖を見る。

 これは確実に氷の魔女である。決して湖の乙女なんて風には呼ぶ事ができない。


「申し訳ありません。全て、我の不徳の致すところです」


 ソルドは平伏している。完全に犬でいう伏せの状態だ。

 ランスロットといい、この白狼といいヴィヴィアンさんの周りには犬しかいないのか?

 

「そうねぇ、あなたのせいね……」


 おおっと、唐突な精神攻撃。これはびっくりだ。ソルドもそんなはっきり言われると思っていなかったのだろう、尻尾が地面についてしまっている。結構、落ち込んでいるようだ。


「も、申し訳ありません……」


「謝罪はもういいわ。それより、ここをどうにかしましょう」


 いやー、冷たい。冷たすぎてロミアが震え始めている。それに、物凄く悲しそうなソルドの顔を見ていると、居た堪れない気持ちになってきた。

 そろそろ、どうにかしないと僕の心が持ちそうに無い。

 そう思っていたら、話が僕に振られた。


「ねぇ、ご主人。ご主人ならこの湖を元に戻せないかしら?」


 青髪をふわりと舞わせて、彼女は僕に聞く。

 できる、と即答したいところだが……どうなんでしょう?


《簡単です。湖の水を濁らせている物質を消すだけですから》


 なるほど、簡単だな……とはいかない。これだけ広い湖だぞ? そんな簡単じゃ無いだろう?


《主人様、『知識は世界を開く鍵』を信用してください》


 エイルあそこまで確信的に言うとは珍しいな。

 …………なら、信用するよ。

 ヴィヴィアンさん達に正対し、口を開く。



「僕に任せてくれ。この湖の輝きをを取り戻してみせよう」







 格好良く宣言したけれど、僕自身が出来ることは少ない。これから湖を綺麗にするのは僕ではなく、『知識は世界を開く』の権能だ。


 僕は恐る恐る湖の水に手を触れると、赤い波紋が広がる。僕以外はその様子をじっと見つめていた。

 目を閉じて手の感覚に意識を集中させる。

 水は冷たく、冷淡で、冷ややかだった。

 よし、じゃあ頼むぞエイル。


《情報管理により赤く染まった原因を削除します》


 エイルの声が響く。

 僕の頭の中では、単純な作業が行われていた。

 湖の水を全て情報子に変換し、水と血とに分ける。そして血の方だけを削除する。


 これで良いのか……?


 僕は目を開ける。湖の色は赤色ではなくなっていた。しかしそれが綺麗かと問われれば、否定せざるを得なかった。

 青色は青色なのだが、その青は濁っていたのだ。


《湖の赤色と濁りは別問題のようです…………申し訳ありません》


 謝罪はもういい、なんて冷たい事は言わない。

 むしろ、良くやってくれた。あれだな、エレインさんが最初に言っていた穢れというのが問題なのだろう。

 僕は魔法においては人並みくらいだから、後は魔法使いに任せよう。


 

「ロミア、最後の仕上げだ。湖に浄化の魔法をかけてくれ」



 様子を見守っていたロミアに頼む。

 彼女なら、それっぽい魔法を覚えていると思われた。


「あ、私ですか?」


「これだけ広範囲の魔法をかけられるのはお前しかいないだろう」


「そ、それほどでも……ありますけど」


 謙遜かと思わせての不遜な態度とるロミア。なかなかやりおる。

 まぁ、実際に魔法に関しては凄いのだけれど。


「それでは、私の魔法をとくとご覧あれ!」


 完全に調子に乗っているであろうロミアが詠唱を唱える。


「聖なる光、高貴なる純潔、穢れなき潔白。この世の全てに語りかけよ!【浄化の導き(レイニガン)】!」


 ロミアは元気よく杖を掲げた。

 杖の先にある宝石が光りだす。

 とても魔法使いっぽい。杖を持ってるだけで結構、変わるもんだな。


 彼女が魔法を放つと、湖に光が降り注ぐ。

 その眩い光で僕は目を細めた。

 だんだんと光が落ち着きを取り戻す。

 


 次第に光が収まり、ゆっくりと目を開けると、そこは別世界のようだった。

 湖の水はエメラルド色に光り輝いている。

 そして、周りの枯れ果てた草木たちもその生命力が回復していた。

 空気は澄み渡り、生命の活気が溢れている。

 カシネ湖が本来の美しさを取り戻したのだ。


 

「おぉ、なんと言うことだ……! 我らの楽園が元どおりに……!」



 ソルドが感銘の声を上げる。尻尾を激しく振っているため、よほど嬉しいのだろう。エレインさんも喜んでいるようで良かった。


「ご主人、感謝するわ。本当にありがとう」


 ヴィヴィアンさんが僕に礼を述べた。その顔には暖かな笑みがあった。この人、こんなに優しそうな表情ができるのか、という感じだ。

 そして彼女は満足そうに魔導書へと戻っていった。


 これで、話だけは聞いてもらえそうだ。

 僕はエレインさんとソルドの元に歩み寄り、ここにやって来た理由を今一度、説明した。

 

「ふむ、そうでしたか……。我の早とちりにて、お二方に襲いかかったことをお許しください」


「いや、大丈夫ですよ。湖をあんな事にしたのが人間なら、そういう対応をしても責められません」


「なんと、寛大な……」


 というように、ソルドは平伏しっぱなしなので放っておこう。

 代わりに、僕はその隣にいるエレインさんにカシネ湖について教えてほしいと頼んだ。

 すると、彼女は快く了承してくれた。


「一応、来客をもてなすためのお部屋がありますので、よければそちらでお話ししましょう」



 部屋……?

 こんな森のど真ん中に建物があるのか?

 そう思いながら連れてこられたのは、洞窟への入口だった。

 

「どうぞ、中へお入りください」


 エレインさんに促され、僕達は洞窟へと足を踏み入れた。




 そこで待っていたのは、僕達の想像をはるかに超える物たちだった。


浄化はドイツ語でレイニガンと言うそうです。

どっかの「伊達にあの世は見てねぇぜ」って言う人が使いそうですね。(わかる人にはわかる)

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