小話 杖と銀貨
続きをを書いてて、ノアがロミアの杖について言及していなかったのでちょっとした小話を書きました。
12時台に15話を投稿します。ぜひ、お読みください!
集会所での出来事の後、僕はロミアに杖で殴られた事を思い出した。
「なぁロミア、その杖どうしたんだ?」
少しの間を置いて、ロミアは答える。
「自分で買いました」
「自分でってお前、お金持って無いんじゃなかったのか?」
「それがですね、スクロールという魔法が記録された巻物を買い取ってもらったんです」
スクロール?
エイルさん、説明よろしく。
《スクロールは今、ロミア様が言った通り魔法の記された巻物の事です。下位魔法のスクロールは量産されていますが、上位魔法のスクロールは高値で取引されます》
なるほど……。
「ロミア、その杖はいくらだった?」
「銀貨二十八枚です」
「スクロールとやらはいくらで買い取ってもらえたんだ?」
「銀貨三十五枚です」
「そうか……」
僕は考える。宿屋は三日間で銀貨三枚、ローブは僕のと合わせて銀貨八枚だったから、一人分は銀貨四枚でいいだろう。つまり合計で銀貨七枚。
「それなら、僕に借りてた分のお金を返せるな!」
僕は満面の笑みをロミアに向ける。
対してロミアは顔を僕から背けている。
「どうした……?」
「そ、その銀貨を入れていた袋を紛失しました……」
バツの悪そうな顔でそう告げるロミア。
なんだろう、怒るか慰めるかする場面だが、何故か面白い。
「ま、まぁ気にしなくていいよ。……ふふ、いや、本当に。また稼げばいいさ」
「許してもらえた事は嬉しいですけど、どうして笑ってるんです?」
「いや、なんか、面白くて……ふはっ」
「ちょっと! 私は銀貨七枚を失ってるんですよ、慰めるとか無いんですか!」
「いやー、災難だったな」
「棒読みですけど!?」
ロミアは僕に抗議する。
「それじゃあ、クエストに向けて買い物してくるから外で待っててくれ」
「どうして外?」
小首を傾げてそう尋ねるロミア。
不意に可愛いのは心臓に良くない。
「い、いや、ここで好奇の視線に晒されたいならいいけど……」
「……ふむ、そうですね。耐えられそうにありません。外で待ちます!」
「ああ、そんなに時間はかからないと思う」
「了解!」
こうして僕はクエストに向けて、準備を開始した。