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Sins War  作者: 夜月見入
1/1

プロローグ

地獄。まさに今の景色はそう言い表すに最も相応しい。人が死んでいくのが止まらない。血と泥とが混ざり合い、いつか見た夕焼けの綺麗な丘は見る影もなかった。


戦争である。


人が人を殺し合い、殺したことになんの咎も問われること無く、殺せば殺すほど名誉となる、戦争である。


「さて・・・」


そんな地獄を、少し離れた一望が出来る高台で一人つぶやいた。身に着けているのは身体強化を促す機械と金属による強化骨格、そして肘にまで伸びている鉄の篭手。顔には傭兵などがよく用いる顔全体を隠す鉄製のマスク。これには左右非対称の意匠が施されている。左半分には黒と赤を基調として炎が描かれ、どこか骸骨をおもわせる反面、右半分は黄と赤で星やハートマークなど、およそ戦争には似つかわないような可愛らしい模様が散りばめられている。


「そろそろいいんじゃないのか?」


耳に着いたインカムを指で抑えながらそう言った。

『そうね、頃合、かしらね』


インカムからの応答を聞き、会話を続ける。


「残りの数は?」


『スタンヒル中央は約300といったところかしらね』


「そうか、なら5分で片付くかな」


1分で100人やれば3分でいけるな、などとまるでゲームをどうやって攻略してやろうかといったように簡単に口にする。


『どれだけかかってもいいから派手にやってちょうだいね。じゃないとこの作戦の意味がなくなるわ』

「ああ、わかってんよ」


返事をし、今一度地獄の戦場を見る。やはり地獄だ、何度見ても変わらない。


「そしたら始めるか」

『わかったわ・・・SevenSinsSystemの起動を許可します』


通信が終わると、強化骨格の背中から腰にかけての部分から尻尾のようなものが伸びていく。その数、九つ。


『起動完了を確認。それではクロガネ・レインロード、ご武運を』


「ご要望通り派手にやってやるよ、キキ・ヨシミア生徒会長・・・加速」

『axel』

綺麗な機械音声がそう告げると、もう高台には人の姿はなくなっていた。一陣の風を残し、まるで消えたかのように。


『クロガネ、魔法には気を付けて。そこでは最低でも第四階梯の魔法が確認されているわ。』


魔法。かつて神々のみがなしえたとされる奇跡の再現。クロガネが今戦おうとしている相手は意のままに魔法を操る魔法使いの国家、クライフ皇国だ。


「気を付けるかどうかは俺が決める」


キキの忠告を無視し、最速で戦場に到達する。直後に伸びた尻尾が一人の敵を貫く。


「新手か!応戦しろ!」


隊をまとめる隊長だろうか、指示を出しクロガネに隊のヘイトを集めている。それをすぐさまに見抜き、敵の攻撃を縫うようにすべてをよけ隊長のところへ向かう。


「貴様っ!」


「はーいお疲れさん」


クロガネの左手が隊長の腹を貫く。


「・・・」


断末魔をあげる暇もなく彼は絶命した。それをクロガネは興味なさげに無造作に地面に捨て、隊員たちに目を向ける。


「さて、始めようか」



約3分後、クロガネは丘の上で腰掛けていた。綺麗な夕焼けを見ながら耳についたインカムを1度指で叩き、同じSevenSins達と生徒会との専用回線を開く。


「SevenSins専用回線よりこちらコード:ヒュブリス、スタンヒル中央は制圧完了」


と報告をする。すると、


『こちらコード:ラグネイア、ボク達のほうももうすぐだよ、後は清掃委員の仕事かなー』


『こちらコード:オルゲー、こちらも今清掃委員に預けたところです』


同じSevenSinsの2人からも報告があった。


『生徒会会長キキ・ヨシミヤです。皆さん任務ご苦労様でした。1度学園への帰還をお願いします、敵の本拠地を叩くため、作戦会議を開きます』


「あー、俺はパスで勝手にやっててくれや」


『 えぇーヒュブリスこないのー?まぁいつも通りっちゃいつも通りだけどさー、いつも一緒に戦ってる仲間なんだしそろそろ正体を明かしてもいいんじゃない?特にボクは君の最愛の人でしょ?』


『 はぁー!?ヒュブリスはボクのなんだけど!勝手にとらないでよね』


「うるせぇよ俺は物じゃねぇんだわ、さっさと学園に帰れよ」


『 それではみなさん生徒会室で 』


ヒュブリスがクロガネだということを、キキを含めても数人しか知らない。命を賭して戦う仲間に正体を隠していることに罪悪感を抱きながらも、それでも今は隠しておかなければならない。

もっともこれはクロガネの意思だ。彼の悲願のため3年間、ずっと隠し続けている。


「さて、ちょいと休憩したらかましてやりますかね」


するとスタンヒルにノイズのような音が響く。


『 生徒会会長のキキ・ヨシミヤです。皆さんの活躍のおかげでスタンヒルは大方制圧出来ました』


生徒会からの校外放送だ。戦っている者達、主に現在奮戦中の清掃委員への鼓舞が目的だろう。


『学園に直接被害が出ていないのは全て、あなた達が戦ってくれているからです。心から誇りに思います』


彼女のカリスマ性があってこそ皆はひとつとなり、彼女について行く。生徒会長は、キキ以外にありえない。


『クライフのクソ共に地獄を見せてあげましょう』


・・・前言撤回、目的は鼓舞では無く威嚇だった。


初めて書きました。少しでも楽しんでくれれば幸いです。

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