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4 魔法使いグレゴワールからも事情を聞いてみる

 家の外から何やら気合を入れた大きな掛け声がして目が覚めた。

 ルシールも同様のようだ。

 ソフィはまだ、ぐっすり眠ってるようだから、このまま寝せておこう。

 このやかましい中で熟睡してるんだから、きっと大物になるな。


 外を見てみると、グレゴワールがめいっぱい元気に鍛錬してやがる。

「朝っぱらから近所迷惑だ」

 昨夜は死にそうな雰囲気でぐったりしてたのに、一晩で元気になりすぎだろう。

「いやぁすまぬな。

 日課をしないとどうも調子が出なくてな」


 この筋肉バカはまったく変わらないな、通常運転過ぎる。

 二十年前もこうだった。魔王を倒すための旅の間も毎日こうして鍛錬してたな。

 どうして魔法使いに毎日の肉体の鍛錬が必要なのか聞いたら、「趣味だ」と一言で返された記憶がある。

 趣味ならしかたない。


「特別に朝食を恵んでやる。

 だから、さっさと事情を話せ」

「あいかわらず、言葉がきついな。

 もう少しいたわりの言葉があってもよかろう。

「おまえにはこの程度で十分だ。

 朝食いらないなら、俺達だけで食べるぞ」

「いや待て、食べるから。すぐに行くから」


 グレゴワールと遊んでいる間にルシールが朝食の準備をしてくれた。

「ソフィはどうした?」

「まだ寝てる。疲れてるだろうから目が覚めるまで寝せておいたよ」

「珍しく優しいな」

「俺は女性や子供には昔から優しいぞ」

「確かにそうだったな。それ以外には容赦がなかったが。

 おぉ、ルシール。あいかわらず美しいな」

「ありがとう、グレゴワール。

 元気になったみたいで嬉しいわ」

「おい、グレゴワール。

 ルシールに色目を使うようなら、殺すぞ」


 ちょっと食卓が殺伐としてしまったようだ。

 だが反省はしてない。


 朝食を終えたので、事情聴取に移ろうか。

「さぁ、グレゴワール。

 洗いざらい吐いてもらおうか」

「おい、尋問かよ」

「拷問にしてもいいぞ」

「お前なら本気でやりかねんな。

 もともとすべて話すつもりでここに来たんだから、すべて聞いてくれ」

「おー、キリキリ話せ」


 場所を食堂からリビングに移動して事情を聞くことにした。

 ルシールはお茶を入れた後、俺の横に座った。


「東の国境にあるパラスネア砦にいたんだ」

「ちょっと待て。何故、王宮魔術師のお前があんなところにいたんだ?」

「あのあたりの土地は魔力が濃いせいか、秘薬や素材の採取にもってこいなんだ。

 貴重な素材を出す魔獣も数多く存在するしな。

 砦には俺専用の研究室も用意してあるし、便利だからちょくちょく行ってる」

「好き勝手してやがるな」

「王宮魔術師と言っても、季節ごとに王宮の魔法具に魔力を籠めるくらいしか普段は仕事ないからな。

 今は王族に魔術を習うような子弟もいないからヒマなんだ。

 もう何年かすると、また王太子の娘に魔術を教えないといけないから、忙しくなるが」


「グレゴワールの日常には興味が無いから、続きを話せ」

「扱いがひどいよな。

 砦付近の魔の森で素材採取をしてたところ、フラフラとソフィが現れたので保護したんだ」

「ふむふむ」

「ソフィはすべての記憶をなくしていたようだ。名前も覚えてなかった」

「ソフィってのは?」

「俺がつけた。名前がないままだといろいろ面倒だからな」

「グレゴワールが名付け親だと? 可哀想に」

「気に入らなかったら、お前がつけなおせ」

「いや、可愛いからいいだろう。

 グレゴワールが名前をつけたことだけ隠しておいたほうがいいな。

 トラウマになるかもしれん」


「……続けるぞ」

「そうしてくれ」


「それだけだったらどこか近くの街にでも預けて終わるんだが、ソフィが手にしていたあの剣は……」

「あぁ間違いない。俺が使っていた聖剣フレイヤだ」

「やはりそうだよな。あれだけ特徴のある剣だ。

 俺も間違えようがない」

「あの剣を持ってるいるとなると、ジェラルドにまかせたほうがいいだろうと判断してここに連れてきたわけだ」


「そうか、それで?」

「いや、それだけだが」

「ちょっと待てよ。東の砦が魔族に襲われたと聞いたぞ」

「そうらしいな、俺も聞いた」

「お前がいたパラスネア砦のことじゃないのか?」

「そのようだな。あいにく俺はソフィを連れて旅の途中だったから詳しくは知らないが」

「俺がその噂を聞いてからもう数日経つんだが、もうずいぶん前のことではないのか?」

「いやぁ、途中で道に迷ってな。

 ここまで来るのに一ヶ月かかってしまった」


 そういえば、こういうやつだった。

 昔からグレゴワールは極度の方向音痴で、旅の途中でもよく一人だけ迷子になっていたものだ。


「もしかして、あの傷も魔族とかまったく関係ないのか?」

「迷った途中でいろいろ魔獣との戦いになってな。

 ドラゴンの群れと遭遇したときには危なかったぞ」

「お前が一方的に迷子になって、ソフィも危険な目に合わせてただけじゃねぇか」

「まぁそうなるな」


 頭が痛い……

 グレゴワールに情報を聞いてみても、ソフィが記憶喪失だったってことくらいしか、情報が増えていないじゃないか。

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