20 決戦
「ルシール、いよいよだな」
「えぇ、ジェラルド。でも大丈夫なの? 本当にソフィを相手に戦えるの?」
「こうなっては仕方ないだろう。俺達二人の手ですべて決着をつけるしかない。それがソフィを育てた俺たちの責任だ。
そして、ソフィもそれを望んでいるに違いない」
「行きましょう」
まさか、この大迷宮へもう一度来ることになるとはな。
それも、大魔王と化したソフィと戦うために来るなんて。人生とは皮肉なものだ。
大迷宮の最奥、玉座の間にソフィは一人佇んでいた。三十年前の魔王と同じように。
「待っていたわ」
ソフィは静かに立ち上がった。
「お願いがあるの、お母さん。
お父さんと一対一で戦わせて。お父さんを超えたいの、剣士として」
「いいだろう、ソフィ。
そう簡単に俺を超えられると思うなよ」
「二人とも好きにするといいわ。ジェラルドが倒れたらわたしが相手になるから」
「ありがとう」
ソフィは聖剣フレイヤを抜いて俺の前に立ちはだかった。
俺も無銘の魔法剣を構え、一瞬でソフィとの距離を詰め、剣の間合いに飛び込んだ。
すかさず、ソフィは上段から斬りつけてくる。
「甘い」
ソフィの剣筋は素早く、そして力強い。その二点についてはすでに俺を超えているかもしれない。
だが、素直すぎるんだ。初めて戦う相手にはそのスピードとパワーで押し切れるだろうが、ソフィの剣筋はもう何十度、いや何百度だって見ている。
どのように剣筋が流れるかとかもう目をつぶっていたっってわかる。
俺はソフィの剣を跳ね上げて、そのまま体当たりを食らわした。
俺がそのままソフィに下段から剣を振るおうとした瞬間。
「お父さんの馬鹿! 大嫌い!」
ソフィの声に俺は怯んだ。
「お父さん、甘いんだから」
一瞬で体勢を立て直したソフィの連続した剣戟がそのスピードで俺を圧倒する。
そしてソフィの必殺の突きが俺の心臓を貫こうとした瞬間、俺の胸に仕込んで置いた魔道具が発動した。
魔道具の圧倒的な光が炸裂する。当然俺はそれを予想して目を閉じていたが、俺の動きを一瞬も見逃さないように凝視していたソフィはひとたまりもないだろう。
俺はソフィを押さえ込み、ソフィの手から聖剣フレイヤをもぎ取った。
「お父さんずるい……」
「策略も剣術のうちだって教えたはずだがな」
「うー……」
「さぁ、悪い子はおしおきだな」
俺はソフィのパンツをめくると、おしりを思いっきりはたいた。
「お父さん、ごめんなさい。もうしません。
お父さん……」
「お父さん、起きてよ。お外で遊ぼうよ」
あれ? ソファでうつうつとしてたかな?
ソフィが大魔王か。
まぁ、ありえない話でないのが困ったものだが。
それならそれで別にいいじゃないか。
本当に大魔王になってても、俺がおしりぺんぺんしに行ってやる。
完
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