10 魔力の使い方
できるだけ小さいうちから魔法を鍛えることで魔力は大きくなる。
これは俺とルシールの一致した意見だ。たしかグレゴワールもそんなことを言っていた。
それならば、ソフィにも早くから魔法の練習はさせておいたほうがいいだろう。
フレイヤを使えるんだから、ソフィが魔力を持っていることは最初からわかってることだ。
「今日は魔力の使い方の勉強をするぞ」
「はーい」
あいかわらず、いい返事だ。
「では、魔法は危険だから表でやろう」
俺達三人は揃って家の前に出た。
「とりあえず、ジェラルドの使い方から教えてみる?」
魔法に関しては、ルシールのほうが専門ってのは当然なんだけど、ソフィと俺とは似たような境遇だから、俺のやり方の方がもしかしたらいいかもってことのようだ。
「よしわかった」
俺の魔力の使い方は完全に我流だ。なんかあれこれやってるうちに使えるようになったんだ。
「まずは、自分の魔力を意識するんだ。
ひたいの中央あたりに集中するとわかりやすいと思う。
魔力が意識できたら、その魔力を手の方に移動させて、気合を込めて目標に向かって投げつける!」
俺は手にした魔力の塊を池の真ん中に投げつけた。
大きな水しぶきが上がった。
「後はこれにいろいろと属性とかそういうものを乗せていくと、ちゃんとした魔法になる感じかな?」
俺が説明を終えると、ソフィはポカーンとした顔をしているし、なんかルシールは頭を抱えてる。
なんか変だったか?
「ずっとそういうふうに魔法使ってたのね」
ルシールがなんか呆れた感じでそうつぶやく。
どうやらお気に召さなかったようだ。
「ソフィは今のでわかった?」
ルシールが念のためって感じで、ソフィに尋ねてみてる。
「よくわからなかったの……ごめんなさい」
ソフィがすまなそうにしてる。
「いいえ、今のでわかって魔法が使えるようになっちゃったら、わたしの常識がおかしいことになっちゃうから、それでいいんです」
なんか酷い言われようだ。
「あんな使い方で、あれだけの威力が出ちゃうんだから怖いわね。
ジェラルドがちゃんとした魔力操作覚えたらずいぶんすごくなりそうだわ」
そういうものなのか。
「それじゃ、わたしのやりかたでやってみましょうか。
最初は座ってたほうがやりやすいと思うから、そのまま腰掛けてみて」
俺もソフィも言われたとおりに草の上に腰掛ける。
「ジェラルドの最初に言ってたところは間違ってないわ。
ひたいの中央あたりが魔力を意識しやすいはずよ。
そして両手を開いて、真ん中にげんこつが一つはいるくらい開けて手を向かい合わせるの」
ルシールがお手本を示してくれてるので、俺もそのとおりにやってみる。
ソフィも神妙な顔で真似してる。
「それじゃ、次いでひたいの中央と両手の三角形を意識して魔力を感じるようにできるかな?
そして魔力を感じたら、両手に間に魔力をまーるい感じで集めるようにしてみて」
俺もソフィも言われたとおりにやってみてる。
「二人ともいい感じよ。ちゃんと魔力が集まってるわ。
じゃ今度はそのまま、手をそっと広げていってみて。魔力のかたまりが大きくなっていくのがわかるかな?」
うんうん、大きくなっていってる。
「ジェラルドはいい感じね。
ソフィもあせらなくていいわ、少しずつ少しずつ。うん、そうそう、ソフィの魔力のかたまりも大きくなってきた。
じゃ、今度はその魔力のかたまりを維持したまま、両手の間隔を近づけていってみようかな。
魔力が小さくならないように、ギュッギュッと押していく感じ」
俺はギュッと押していってみた。
「ジェラルドは焦りすぎ、もっとゆっくり確実にね。
ソフィは上手よ、そのまま集中して。
よし、じゃいったんそこまで。魔力のかたまりを解放しちゃおう」
俺はふぅっと大きく息を吐いた。
なんか緊張して息を止めてたよ。
ソフィも同じ感じで息を吐いてる、やっぱり息止めちゃうよな。
「今の感じで魔力の操作を練習するといいと思うわよ。
魔力の操作が上手くなるといろいろ魔法も使いやすくなるからね。
毎日、ちょっとずつ練習すること。
ジェラルドも練習するといいと思うわよ。ソフィといっしょにがんばってね」
「「はーい」」
「実際の魔法はただの技術になるから、しばらくは退屈かもしれないけど、魔力操作を練習してね。
これができるのとできないのでは、将来ぜんぜん違ってくるから。
魔法が上手く使えるようになるだけでなく、魔法の威力も、魔力の大きさも、すべてこの魔力操作にかかってるんですからね。
でも焦っちゃダメよ。特にソフィはまだ魔力が小さいんだから、疲れたなって少しでも思ったらもうやめること。
ソフィは一人でやってるとすぐにムリしちゃいそうだから、わたしかジェラルドがいないところでは練習するのも禁止ね」
ソフィと二人で魔力の訓練を日課にすることにした。
それにしてもソフィはあっという間に魔力操作を身に着けたみたいだな。
ルシールの教え方が上手かったのか、ソフィの素質が高かったのか。
きっと両方なんだろうな。




