薔薇の別荘
これは昔々、まだ自由な恋愛が認められていなかった時代のお話。
わたくしは今日も、薔薇の咲く別荘へ行く。
小さな小さな別荘の古びた扉を開くと、一番最初に目の入るのは黄ばんだ壁。
わたくしは彼の元へと向かう。
薄暗い廊下の向こう、小さな部屋で、彼は静かに眠っていた。窓から、真っ赤に咲き誇る薔薇が見える部屋だった。
わたくしは彼の逞しい手を取った。
明日いなくなる貴方へ、どうしても伝えたかった。
「ああ、わたくしは貴方が憎いわ」
チリン、とベルが小さく鳴る。
わたくしは小さく微笑み、貴方からの贈り物にキスをした。香ばしいアーモンドの香りが鼻から吹き抜ける。
「…でも、同じくらい貴方が愛おしい。狂おしいぐらい、愛してる」
一筋の涙が頬を伝う。
わたくしはじっと貴方を見つめた。
………わたくしと、貴方の唇が出会う。
ーー君は、とても愚かだ。だけれど、僕はそんな君が愛おしい。
そんな彼の声が聞こえた気がして、わたくしは幸せにそっと目を閉じた。
次の朝、彼を迎えにきた人々は、彼の手を握って眠る美しい女性を見つけた。その女性の手元にあるものを見て、彼らは静かに、2人を薔薇の別荘から連れ出していった………。
この小説の意味がわかった方はいらっしゃったでしょうか…?
「薔薇の別荘」「贈り物」…このふたつ言葉には二重の意味がかけられています。
よろしかったら、どうぞ暇つぶしにでも調べてみてください。ヒントはイギリスとドイツです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。




