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遥か異界で  作者: 伏桜 アルト
第4章 敵対者の離岸 
72/94

 閑話 お姉ちゃん

 テントの隙間から差し込む日の光がまぶた越しに俺の目を突き刺す。

 おかしいな、この場所じゃ晴れることなんかないはずなのに。

 睡眠から覚醒へと意識が移行シフトする中、腰のあたりにいつもとは違う重みがあった。

 この重さはフィーアじゃない。

 ……と、なれば。

 フェネ(デス)orシャル(エロ)のどちらかだ。

 デスはもちろんのことお断り。

 こんなところで死ねる俺じゃない。

 エロのほうは色々とまずいからお断り。

 なんせこいつはよそ様のハーレムの人員であり、俺が手を出そうものならばレイズにそれなりに酷いことをしているのもあって話し合い抜きで殺される可能性がある。

 いや、割とマジで。本気だったとしたら、俺じゃ相手が務まらないほどに反則級チートな美女揃いだから。

 それにプラスしての神殺しと言われるほどの白い悪魔。

 

 ――ズボンのファスナーが降ろされる音が鳴る。

 エロの方だった。


「ちゅっ」


 うん、こんな時でもちゃんと反応する自分の相棒はなんて憎らしいんだ。

 そして体を動かそうとすると動かなかった。


「…………………………………………………………はい?」


 右を見れば、腕に括り付けられた紐が杭で打ち留められている。

 左を見れば、腕に括り付けられた紐が杭で打ち留められている。

 下半身右側を見れば、右足に括り付けられた紐が杭で打ち留められている。

 下半身左側を見れば、左足に括り付けられた紐が杭で打ち留められている。

 少し視線をずらせば、腹にかけられた紐が杭で打ち留められている。

 俺はガリヴァーか!!

 気合で紐を引きちぎって、起き上る。


「おめーらなにしてんだよ」


 デスエロだった。

 日の光と思っていたものはデスのほうが作りだした火炎弾。

 エロのほうは俺のモノを露出させる一歩手前だったので尻尾を引きちぎる思いで引っ張る。


「ぎにゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」


 ああ、朝から騒がしいなあ。

 ん? お前が原因だろって? そこは気にしない、気にしない。


 ---


 もろもろあった後、報酬を三割増しで脅し取った俺たちは進路を南に取っている。

 北に行くにしても、アルハザードを超えるか、迂回して戦場を通り抜けるかだ。

 そして抜けたとしても魔族領。

 魔族……睡魔、淫魔、ふしだらなやつらの密度高い場所だ。

 俺は大丈夫にしろ、インキュバスに襲われでもしたら問答無用で連れのやつらがとんでもないことになるからな。

 エロをされるという意味ではなく、逆に灰にしたりぃー、跡形もなく消したりぃー、水弾で吹き飛ばしたりぃーという方向で。

 そんなわけで無駄なことをしたくないから南だ。

 南には港町があるとのこと。

 アキトの居場所をレイズに聞こうと思っていたが、いつの間にやらいなくなっていた。

 一応俺が”召喚”しているんだが……。

 被召喚物は召喚者の許可か、あらかじめ決められた約款を満たさない限りは帰れないはずであり、離れられないんだが。

 まあいい。

 魔物とのエンカウントが一切ないというのは楽でいい、素晴らしい!

 俺という自称死神、ほぼ無敵のフェネとフィーア、近寄れば枯れるまでバキュームのシャルとアル、そしてここ最近中距離射撃ができるようになったエアリー。

 どうやら魔物たちも近づかないほうがいいと分かってくれているようだ。


「あのー、これからどこに行くんですか?」


 エアリーがおずおずと聞いてくる。


「とりあえず炎の国(ムスペルヘイム)に行ってみようかと思う」


 炎の国とは言っても、実際にそこらじゅうが灼熱地獄ってわけじゃないらしい。

 報酬を受け取るときについでに聞いたことだが、亜熱帯……簡単にいうならジャングルらしい。

 なんでも、遥か昔にレイズが一騒動起こして地形も気候も何も変えてしまったとかなんとか。

 正直言ってあれほどの猛者を押さえつけられるやつがいるというだけでも驚きだ。


「ムスペルヘイムかぁ……」


 フィーアが何かを思い出したように言う。


「なにかあるのか?」

「確かあそこには……スコールが言ってたんだけど、ヴィネとセーレがいるはず」

「誰だそいつら?」

「えっと……幼竜と猫かな?」

「はっ?」

「ほら、フェネだって鳥に姿を変えられるじゃん。それと同じで姿を変えられるってこと」

「そういうことか」


 人の姿から別のものへと姿を変える。

 それは魔法があるからと言って当たり前にできることじゃない。

 きちんと変換しないともとにもどれないどころか、その途中で変なものに変わってそのままお亡くなりに。ということがあるらしい。

 そういうことを聞いたことがあるうえで、俺のパーティメンバーたちについてだが。

 フェネ、もちろんのことニワト……鳥に姿を変えることができる。

 シャルは翼のついた黒猫に化けることができる。蝙蝠になることもできるらしいがそっちは知らない。

 フィーアは……なんというか、霊体というかアストラル体というかエーテル体というか、なんかよくわからないものになれる。壁抜けなんか普通にできるもんで、よく驚かされた。

 エアリーについては、ちょいと小耳にはさんだ話だが、身体の一部をハーピーの時の状態に変えられると。

 ……というわけでどこが大変な魔法なんだ? と俺は思う。


「なあフィーア」

「なーに?」


 まるで兄妹のような……いや、恋人まんまの状態で手をつないでいるフィーアに訊ねる。

 素朴な疑問。素朴ながら俺のいた世界では違法なこと。


「重婚って…………あり?」

『………………………………』


 全員が一斉に顔を背けた。

 唯一フィーアだけが俺を見つめている。

 握る手が若干あったかくなる。

 頬が赤らむ。


「あ、あり……だと思うよ。国によって違うけど、この世界はだいたいの国がそれを認めてるから」


 もじもじしながら顔を赤く染めながら答えてくれた。


「そっか」


 今思うと我ながら節操がないと思う。

 いままでの異世界転移でいろんな女の子と関係を持った。

 一部はアレな事情でアレなことでアレなことがアレで関係を持ったから言えないけど。

 もしその全員がいま目の前に現れて「私たちの中から一人だけ選んでね♪」なんていわれると選べない俺がいる。

 とある人に、最期に娘を頼むなんて言われて、託された。その子は戦場で生きてきた女の子だった。

 転移先の世界でちょっと気まぐれでやってしまったらなぜか好かれてしまった獣人の女の子たちもいる。

 わけあって助けたつもりでもなかったのに、それで惚れられたのか、なんか迫ってきた女の子もいた。

 他にもいろいろいた。

 その中から誰かを選べと言われたところで、誰もが大事な仲間であり友。

 誰か一人を選び取って関係を壊したくないやつがれがいる。

 ならばと全員を選びたい自分バカがいる。

 それはその時はいいだろう。

 だが考えれば、俺はいろいろあって自分でもわかるほどの危険人物。

 その後の稼ぎはどうする?

 安定した暮らしができるか?

 全員を平等に愛せるか?

 否だろう。

 そもそも俺の最終目的を持ってくれば、レイズ以外と関わるのは全力で避けなければならないはずなのに。


「悩んでる?」

「……こんなときに悩むことじゃないんだけどな」

「クロードはさ、スコールとは違うよね?」

「なにが?」

「みんなの幸せを考えるけど、それで自分が消えてもいいなんて思わないよね? 大事な一人がいない世界なんて望まないよね?」

「…………」


 そうだ……とは言えないかもしれない。

 最終目標は死ぬことも考えた上で立ち向かおうと思っているから。


「それは――――むがっ!?」


 突如顔面にめり込んだ何か。

 そのまま後ろに倒れ、後頭部強打。


「ぃっでぇぇぇぇっ!!」


 俺を狙った攻撃ならば事前に察知できたはず。

 それがないという事は不慮の事故か。


「ぁぁぁぁぁ……」


 鼻が焼けるような痛みと共に血を噴き出した。

 折れているかもしれない。

 後でフィーアに治してもらおう。

 とりあえずやるべきは――


「ひゃっ」


 などと思っていたら聞いたことのある声、顔の上と横にある柔らかい感触。

 馬乗り状態。

 エロ系のハプニングで俺は何回ケガをするんだか。

 押しのけて起き上る。その際に胸にうっかりは気にしないでほしい。


「ごめん!」


 そして最初に目に入るのは合わせられた手。

 確かに俺は被害者ではあるが、それ相応の事をしてしまったが故に俺が攻められてもおかしくはないはずだ。


「…………」


 何と言ったらいいか。


「えっと……久しぶり」


 以外に言いようがない。

 名前は知らないが、助けてもらったことはある。


「うん、久しぶり」


 フィーアそっくりの見た目、色は赤。

 中学生くらいの体型で膝までまくり上げたズボンと赤色のティーシャツ、それを押し上げるふくらみはない。


「いやー、ほんとにごめん。転移系は得意じゃなくってさー」

「…………」

「それにしても……」


 俺の後ろに控える女の子たちを見る。そして俺に視線が来る。つないだ手に視線が落ちる。腕をなぞって赤く染まった顔に視線が移る。


「あんた……あたしの妹になにしやがった!」


 明確な敵意を持って放たれた拳。

 受け止めてはいけないと本能が叫び、首をひねって避ける。


 ズ、ガッァァァァアアア――


 斜め後ろの地形が消し飛んでしまった。

 レイズ並みに恐ろしいやつだ。

 しかしまあ、正直に言ってさらに怒らせるとしようか。

 やることはやったんだ。

 一晩の男女の目合。


「まあ……はい、やりました、ナニを」

「へぇー」


 昏い声で、そして呼応するように赤く殺意のように煌めき始めた魔力を纏いながら……。


「待て待て待て待て待て待てっ! 合意の上だ! あいつも公認!」

「…………」


 胡散くさそうな目で俺を見る。

 そしてフィーアのほうを向く。


「フィーア、これほんと?」

「う、うん、そうだから。お姉ちゃんもそれやめよう?」


 フィーアがなだめるように言うと殺意が嘘のように消え去った。

 久しぶりに死の危機を直感した俺であった。


 ---


「あたしの名前はレイ。幽霊のレイであり、レイズのレイであり、なにもないという意味でのレイ」


 命の恩人に命を奪われそうになった後、野営の準備だけしてテントの中、三人きり。


「俺はクロード、あーっと……軽く十年ぶりくらいか?」

「あたしとしては数か月ぶりなんだけどね」

「やっぱりか。俺は一時期コールドスリープ状態で封じられたからな、時間の感覚がずれてるかとも思ったが……」

「そういうわけじゃない。レイズから聞いてないかな? 世界の時間は一本の線、人はそれをただの流れとして受け止めているように見えるけど、実際はただそれを『今』として認識しているだけ。何が起こったのかはバラバラに体験していてもそれが繋がっているように見えれば『今』を一直線に進んでいるように見えてしまうわけで」

「ちょっと待った、長い説明はいらん。要点だけ頼む」


 するとフィーアが俺をちょんちょんとつついてきた。

 説明を変わるらしい。


「どこから観測するか、それだけで体感は変わる。わたしたちは例外だけど、複数の”世界じかん”を見たが故の錯覚……が、いい表現かな?」

「そうだね、あたしらみたいな本来なら存在しないもの以外は……というか、観測できる存在は自身の思考と記憶(おもいこみ)に縛られているの。それがあるから本当の時間の流れなんて追うことはできない」

「……だったら、俺が例えば一〇〇年を経験してもお前らからじゃ違うってのか?」

「「そうだね」」


 二人が同時に答える。

 姿は色が違うだけで瓜二つ。

 声まで同じだと妙なハモりだ。


「だったら……」

「そう、思ってる通りで間違いはないよ」

「今、俺がこうしている間にも記憶の中のことは実際に起こっていると?」

「うん」


 …………。

 レイズに聞かされた、この世界が仮想だという話が思い出される。

 だったら俺はなんだ?

 シミュレートされているだけの、自我があると”思い込んで”いるNPCだとでもいうのか?

 シミュレーション仮説とやらじゃあ、中の存在はそれを知ることはできないというし。


「でもね、あんたはもう流れから外れちゃってる」

「はっ?」

「いつまでも繰り返される世界のNPCなんかじゃないってこと。これから世界がリスタートされるたびに記憶を受け継いで、力を持ったまま始まる」

「なんだよそれ」

「そもそもねぇ、今回のループは西暦が終わったあの大戦でいろいろと奪われちゃったからねぇ」

「……わかるように言ってくれないか?」

「本当のことを聞きたかったら、世界二五六に戻ってからね」

「あ、おい……」


 言うなり四つん這いになってテントから出て行ってしまった。

 残されたのは俺とフィーア。


「ねえクロード」

「うん?」

「えっとさ……クロードって……年上でもおーけー?」

「……さっきの話でうすうす感づいたけど」

「わたしたちはもう数えることをやめるほど長いときを存在しているの。だから……その」


 ふむ、つまり見た目は合法ロ……だけど、中身はアレということか。

 よくある属性だ。

 うん、長い付き合いだし(と言ってもフィーアからすれば一瞬のようなものだろうが)俺としてはバッチ来い!


「いやだったら……」

「嫌なわけない! つか今更そういうこと言うなよ」


 つい癖で頭をぽんぽんと撫でてしまう。

 いつぞやはこれで大変な目にあったもんだ。

 ……撫でた瞬間に、ガルルッガブっ!

 とかで手がモザイクいるかな? ってことになったしな。

 でもフィーアは違う。


「もう! さっきの話はどこに行ったの。わたしを子供扱いしないでよ」

「でも長い時間生きてるにしては……精神的に子供な気がする――――んむっ」


 いきなり押し倒される。

 男の俺からすれば大した力でもないが、されるがままで。


「これはわからせるひつようがあるね」


 なんとも妖艶な笑みを浮かべて俺の上に乗ってくる。

 うん、やっぱり可愛いな。

 シャルなら全力でナインだけど、フィーアなら時が許せばいつだってヤーだ。

 場所と場合は関係なんてない。

 …………いや、あるな。

 思い出せばこんなことがあった。


「失礼ですが……フリーランスのクロードさんですね?」

「元フリーランスだが、何か用?」

「あなたの行動に関して、さきほど通報がありまして、少し署の方でお話を聞かせていただきたいのですが」

「……俺なんかしましたっけ? この前のはちゃんと斡旋所通した仕事だったけど」

「いえいえ、そちらのことではなく……」

「ああ、こっちね。今度の容疑はなんだよ、幼女暴行? それとも連れまわし? 誘拐?」

「貴様っ!」

「いや、あれはあっちが」

「言い逃れは許さんぞ、お前みたいな二十少し過ぎた歳であんな娘がいるわけがないんだっ! 裸で抱き合っていたとの目撃証言もあって――――」


 てな感じでこっちに飛ばされる前に見た目合法ロ……に迫られて、まあそういうことで。

 当局の人にちょいとお世話になりかけたことがある……。

 だがここは俺のテントのなかでありプライベートスペース。

 場所はクリア、場合も合意でクリア。時は求められたとき、そして俺が求めたいとき!

 つまり今!

 ぎゅっと抱きしめて裾から手を入れる。

 すべすべでやや体温が低めの背中を、小さくてかわいいお尻を撫でる。

 体勢としては、フィーアが俺の隣にいる状態。


「んっ……」


 早速――――がさっ。


「えっ……」


 音がした方向……というか音がするのは入口しかない。

 そしてそこにエアリー。


「あ、えと、ごめんさない!」


 顔を真っ赤にして走り去っていく音が聞こえた。

 …………。


「また今度にするか」

「……うん」


 軽い口づけを交わして乱れた衣服を整えていると、俺の危機察知クリティカルアラートが脳内で警報を鳴らした。

 それはもうテレビの音量Maxでさらに増幅アンプに繋げたような音だった。


「――――っ!?」


 気づいた時には空の上。

 曇天の空を突き抜けてバカみたいに茜色に晴れ渡った天空が見渡せるほどの高度。

 それでもどんどん上昇していく。

 概算ではこのままいけば(あるかどうかは知らないが)大気圏まであと数十秒と言ったところか。

 ……と、ここで冷静でいていいのか? 答えはノインだ。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 一体何が起きた!?

 人をこれだけの速度で打ち上げれば、どこまで飛ぶだろう? とかの前に空気抵抗でバラバラになるわ!

 そんでもってそうなっていないところを見るに、レイの仕業だろうな。

 フェネはここまでの力はないし、他はやる理由が見当たらない。


「…………とりあえず降りよう」


 俺にかかる荷重を反転させて減少させ、自由落下フリーフォール

 ごろごろと重たい音が響く雲を抜ければすぐに地上が見える。

 鈍色の荒地で輝く赤色の星。

 光を捻じ曲げてその場所を目の前に映し出せば、レイを後ろからなんとか押さえつけているフィーアがいた。


「あー、嫌だよ、またエロ系のことでハプニングとか」


 その後のことは割愛させてもらおう。

 ただ俺も大人げない対応をしたことは言っておこうか。

 クレーターを二つほど造ったと。


 ---


 一連のごたごたの後、レイはフェネとアルを連れ、シャルにセクハラを受けながら暗闇の中消えていった。ときどき嬌声が響いてくるあたり、かなり桜色の展開が繰り広げられているのだろう。


「す、すごかったですね……」

「…………」


 さすがにやりすぎた。

 いくらなんでもアレに便乗してフェネが仕掛けて来るとは思わなかった。

 片や一撃で世界を終わらせられるレーヴァテインを連発可能な見た目合法ロ……。

 片や撲(殴?)殺不死鳥幼女。

 マウントポジションとられたときはノーパン柔肌の感触なんか感じる間もないほどに命の危機を感じたね。

 なんせ俺が久しぶりに本気出して、距離に影響される重力操作で無理やり遥か空の彼方から隕石呼び寄せたほどだから。


「クロードさん、私もあのどっかーんをやってみたいです!」

「なんでそっち方向にいっちゃうかな」


 普通はあんなものを見たら怖がるだろう。

 だよなフィーア、と視線を向ければ誤解しやがった。


「水でああいうのをやろうと思うなら……秒速九キロくらいで水弾撃ったらいいかな?」

「まじめに考えるな! そして単位はメートルじゃなくてキロ!?」


 考えてみよう。

 地球を基準に考えなくてもこの世界も同じだろうからそのまま進める。

 公転速度ってだいたい秒速約三〇キロメートルです。

 それの約三分の一。

 そんな速度でぶつけたら国一つ滅ぶのではないでしょうか?

 ならば、


「エアリー」

「はい!」


 わくわくした顔だがしっかりと言っておかないと。


「絶対にやるんじゃないぞ」


 急にしょんぼり……という顔に早変わり。

 さすがにあれは危険すぎる。

 クレーターを作るほどの威力は、一歩間違えれば自分が死ぬ。


「こんな感じかな?」


 などと思っていたらフィーアが手を前に出して水弾を作り上げていた。


「やめっ――――」


 西の方角にチカッと白く瞬く光が見えた。

 遥か彼方、誰もいない(と思いたい)荒野に閃光が走る。

 地平線の向こう側が見えない。

 ああ、星は丸かったんだ………………………………………………………………。


「あ、まずい」

「おいおーい、まさか人に当たりましたとか」

「うん、あたった」


 ……………どこかの誰かさん、あなたは復讐する権利を手に入れました。


「で、どんなやつに当たったんだ?」

「ちょうど転移してきたベインに直撃?」


 ……いくらなんでも死んだな。

 忘れない、ベイン。運がない事故で死んでしまった犠牲はここに刻もう。


「大丈夫。生きてる生きてる」


 目を閉じて意識を集中するフィーアがいう事だ。

 真実だろう。

 解析やら索敵やらの情報認識の面ではスパコン並みの処理能力を発揮するからな。


「って待てよ! あれ食らって生きてるってどういう化け物だよ!」

「いやほら、ベインってあんなだけど、一応レイズとまともにやりあえるんだよ」

「へ、へぇー…………」

 

 今日改めてベインの恐ろしさを知った。

 単なる自爆野郎じゃなかったわけか。

 俺が初めて戦ったときに殺されなくてよかった……。


次回更新は5月17日の予定です。


豆知識・ヤー Ja 肯定 

    ナイン Nein 否定

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