表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遥か異界で  作者: 伏桜 アルト
第1章 激動と波乱
5/94

戦闘訓練

「もしもーし、起きてますかー?」


 誰かが話しかけてきた。


「寝てるかー」


 誰だろう、この声聞いたことがあるぞ。


「顔に落書きでもしようかなー、油性ペンで」


 なんか今、不穏な単語が聞こえたぞ。

 ガサゴソ、ガサゴソ。


「あった、さてと、書きますか」


 おい待て。

 よし、いつまでもブルーな気持ちじゃいかんな。

 顔に落書きなんて嫌だ。

 そう思うと俺の意識は一瞬で覚醒した。


「させるかぁぁーー!!」


 ガツンッ!!!


 相手は落書きしようと顔を近づけてきていた。

 俺はいきなり頭を上げた。

 結果的に、当然のごとく頭突きすることになった訳で。

 いやー、こういう不意の一撃って痛いよねー。

 タンスの角で小指を打ったりとかさ。

 まあ、そういうのは置いといて。

 マジで痛い……。


 しばらくして。


「やるわね、あなた。天使に怪我させることがどういうことかわかってるの?」


 目の前にいるのは頭をごっつんこした堕天使だ。


「すみませんでした。まさかあたるとは思いませんでした」

「……まあ、いいわ。これであなたが帰れないことが分かった訳だけど」


 なに? 帰れないだと。


「ちょっと待ってください。帰れないってどういうことですか」

「さっきね、ゲートが開いたけど、何も通過しないまま閉じたのよ。

 それでもしかしたらって思って調べたらあなただった、ということよ」


 ゲート? なにそれ。どういうこと?


「もう少し詳しくお願いします」

「えーっとね、あなたはここに入ってくる方法が普通じゃなかったから、

 登録情報にいろいろ不備があるの。

 それが原因で出ていくときにエラーが発生して、

 帰れないということなの」

「…………マジで帰れないんですか」

「そうね。私のゲートもあなたは通れなかったでしょ

 だからここから出る方法はないのよ」


 この堕天使のゲート?

 ああ、あの真っ黒な穴みたいなやつか。

 確かに俺は弾かれたな。

 ……つまり帰れないということは、


「もうネトゲできない!! 俺の努力の結晶があぁぁーー!!

 二次元の嫁があぁぁぁーー!! 同人誌が…ぐふぉあ!?」

「うるさい」


 なんか杖みたいなので思い切り殴られた。


「帰れないということが、どういうことかわかってるの」

「…………」

「ここで生きていくということなのよ」

「……そうですね」

「生き延びる自信はあるの?」

「ある訳ないじゃないですか。ニワトリにも負けたんですよ。

 他の(プレイヤー)と出くわしたら人生終わりですよ!!」


 ……?

 笑ってる?

 なんでこの堕天使笑ってんだ。

 ああそうか、ニワトリに負けたことがそんなに面白いか。


「何笑ってるんですか」

「あはははは、いやだって、鶏に負けるって、あなた、弱すぎ」

「そりゃそうでしょうよ、ずっと引き籠もりやってたんですから」

「うんうん、それでどんな鶏だったの」

「えっと……尻尾の先が赤いだけの普通の鶏でしたよ」

「…………」


 なんで黙るの!?

 俺なんかやばいこと言った?

 もしかしてあの鶏がペットだったとか?


「あなたねえ……」


 何そのひどく落胆したような顔は。


「それ多分不死鳥(フェニックス)の雛よ」

「…………」


 なんか顔からだらだら汗が流れてる。

 やばいねそれは、俺やばいことやったんじゃね。

 フェニックスっていったらそこらのゲームでもかなり重要なポジションだよね。

 最終なファンタジーじゃ死人を生き返らせるほどのやつですもんね。

 俺そんなもん食おうとしたの。

 そらやばいよ。

 うん。

 てかなんでフェニックスがこんなところに?

 ここってアスガルドって名前だったよね?

 北欧神話とかいうやつの舞台だったよね?

 フェニックスってどっか別のとこの伝説のものだよね?

 いや、それいったらバハムートも……。

 ん?

 堕天使が考え込んでいる。

 なにを考えているのだろうか。

 もしかしてフェニックスを襲ったのがそんなに問題なのだろうか。

 うん、問題でしょうね。


「とりあえず、あなたには”スキル”を与えるわ。

 これ以上へんなものに手を出されると後始末が面倒なのよね」


 フェニックスのことは今は無視してもらえるんでしょうかね?

 それにしてもスキルねぇ。


「はい、ちょっと動かないでね」


 なんかこのパターンは……。


「いっだぁーーーーー!!」


 痛いよ!!

 しかもなんかが俺の体に入ってくる感覚が!!

 なんかこうドロッとしたものが入ってくる感覚が!!


「あがががががっ!! あ、頭が割れっ!!」

「もう…ちょっとだ、か、ら動くんじゃないわよ」


 その後、永遠にも感じられる10秒を味わった俺なのだった。


「ステータスを見てみなさい」


 そんなことを言われ、いわれるがままにステータスを見た。


 【霧崎アキト】

 種族:人間

 職業:無職

  

 【スキル】

 解析Lv.9

 魔力吸収Lv.9

 魔法妨害Lv.9


 【召喚獣】

 バハムート(魚型)


 【魔法】

 火属性Lv.1

 水属性Lv.3

 生属性Lv.9


 破壊力:C

 速度:F

 射程:E

 持続力:魔力次第

 精密動作:精神力次第

 魔力総量:A

 成長性:多分ある


 F-凡人並み<E<D<C-近代兵器並み<B<A<S-神格級<???


 うむ、いろいろ突っ込みたいところはあるけど今は無視しよう。


「なんですか、これは」

「ちょっとしたサービスよ。とりあえず説明するから」


 説明を要約するとこんな感じだ。


解析……対象の情報を取得する。

魔力吸収……周囲の魔力を吸収する。レベルによって範囲が広がる。

魔法妨害……同レベル以下の魔法を無効化できる。

生属性魔法……生命力を操作する魔法。いわゆる回復魔法。


「と、いうわけでこれから変なものに手を出すときは、

 か・な・ら・ず解析すること」

「はい、わかりました」


 説明のあとにお説教を受けて解放された。


「それと魔法ってどうやって使うんですか?」

「使う属性を思い浮かべてどういう形にするかイメージするのよ」

「具体的にどうやって?」

「こうやって」


 堕天使が右手を前に出したその瞬間、

 火の玉が現れ、凄まじい速度で飛んでいき、

 遥か遠くにクレーターが出来た。

 ……よくわかりませんねぇ。

 あれと同じのをイメージすればいいんですかね?


 手の先に火の玉……。

 ボッ! という音とともに俺の手に火の玉が現れた。

 おお! 出来た。

 次は飛んでいって爆発……。

 ヒューって飛んで行って50mくらい先に大穴ができました。

 魔法すげー。

 これなら山賊なんていちころですね。

 やればできるじゃん俺。


「やればできるじゃない。それじゃ他のもやってみましょうか」


 このあと1時間にも及ぶ訓練が……。

 うん、1発目で成功させるんじゃなかった。


 訓練で分かったことは、

 魔法は3つまで合成できて、

 威力は合成した魔法のレベルを掛け合わせたものになる。

 そしてレベルが高いほど負荷が大きくなる。

 また、同時に使用することもできるが、これも同様に負荷が大きなる。

 さっき調子に乗って生属性Lv.9を3つ合わせたらすごいんじゃね?

 と思ってLv.729の魔法を使ったら一瞬で意識が飛んだ。

 ちゃんと魔法が使えるようになるまでこれは封印だ。

 戦闘中に使って不発でした、意識なくなりましたなんて洒落にならんからな。


「ぜぇ……ぜぇ……つ、次で、最後ですよね?」

「ええ」


 周囲を見渡せばカオスだ。

 カオスとしか言いようがない。

 凍っているところ、マグマが噴き出すところ、

 地面がなくなっているところ、エトセトラエトセトラ。

 怖いね魔法って。


「それじゃあ、行くわよ」


 そう言って堕天使は杖を振り上げた。

 そして杖に先端にラ○トセーバーのセーバー部分が出現した。


「は……?何するんで――」


 一気に振り下ろされる。

 まずっ!

 死ぬよこれ!?

 そしてそれは何の抵抗もなく俺の体の一部を、片腕を切り離した。


「がぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー」

「さあ、自分で治癒しなさい。実戦じゃもっと酷い怪我をするのよ。

 これくらいで慌てたらホントに死ぬわよ」


 さっきまでと目が全然違っていた。

 マジで殺すような目だった。

 気配も違っていた。

 本能的に勝てない、怖いと思った。

 訓練じゃなかったらこのままトドメを刺される。


「ああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー」

「早く治癒しなさい! 血を失って死ぬわよ」

「こんなところで……死ねるかぁぁぁーーー!」


 生属性魔法Lv.100を発動する。

 イメージは切り落とされた腕がくっつく。

 すると離れていた腕が近づいてきてあっという間に癒着した。

 はぁ……はぁ……傷は塞げるが失った血液までは戻せないようだ。

 貧血のときと同じ感じがする。


「い、今のは……マジで、殺す気、だったでしょう」

「ええ、本当の殺し合いになれば恐怖で動けなくなるかもしれない。

 だから今のうちに慣れておいてほしいの」

「は、ははは。そうですか」


 腰が抜けてすとんと地面に座った。

 ちびらなかっただけまだいい。


「さて、それじゃちょっと動かないでね」


 またこのパティーン。

 もう痛いのは大丈夫さ。

 腕を落とされるよりはマシだ――


「いってぇーーーーーー!!」


 やっぱ無理。

 痛いもんは痛い。

 あれ? なんだ?

 何かが体の中に溢れるような感じだな。


「はい、これでよし。出血した分補充したから」


 なんだろうねぇ。

 初めてこいつ天使だ! って思えたよ。


「それじゃ、頑張りなさいね」


 そう言って堕天使は飛び立った。


「ちょっと待って下さい。どっか飯が食える場所はないですか」

「うーん……そうねえ、イザヴェルに行きなさい。

 そこにセインツっていう勢力がいるから私と戦ったって言いなさい。

 信じてもらえないようならこの羽根を見せなさい」


 黒い羽根を俺に渡して、堕天使は昏い空に溶けるように消えていった。


 イザヴェル?

 地図になんか乗ってたな。

 地図のページを開いて確認する。

 イザヴェルまでは……1㎞くらいか。

 休憩してからまた歩くか。


 ……。


 そういや、スキルってどんなんだろ?

 試しに使ってみるか。

 俺は解析Lv.5を魔導書に使ってみた。


『メティの本』……悪意80%、遊び心10%そして真実10%で書かれている


 どういうことですかね?

 次は解析Lv.7を使ってみた。


『元大天使メティサーナが記した本』……地図とステータス以外信用するべからず


 ……は?

 俺は最後にもう一度使ってみた。


『警告、この本は地図とステータス以外は殆ど偽の情報が記されています』


 ………。

 あの堕天使はなんてものを渡してくれたんだ!!

 つまりこの本に書いてあった、

 世界アスガルドルールは嘘が殆どだということですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ