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遥か異界で  作者: 伏桜 アルト
第4章 敵対者の離岸 
43/94

01010011 = S

「霧崎! 侵入者は全員斬れ!」


 なんだこれ?

 体全体が鎧に覆われてる?

 それに……握ってるのは刀か?

 どこに向かって走ってるんだ?


「了解! 一応聞くけどほんとに学生とかじゃないだろうな?」


 体が勝手に動く。

 勝手に応答する。

 なんだよ。


「イチイチ気にしてたら俺たちがやられるぞ」

「へいへい」

「ま、いつもどおりのバーチャルリアリティのゲームだと思って派手に暴れろ。

 制限リミッターはぎりぎり死ぬか死なないかのラインで設定されてる」


 隣で喋っていた、全身甲冑? 姿のやつがライフルを構えながらバリケードの後ろに伏せる。

 なんだよこれ、俺はどこにいて何をしてるんだよ!?


『防衛部隊全機へ通達。侵入者は140人、所属は不明、汎用機で武装は斬機刀、無反動砲、破城槌。

 他近接戦用の小型武器が多数認められます』


 なんだよこれはぁ!?

 目は……動く。

 これって体全体が鎧に覆われてるんじゃなくて、体自体が鎧なのか?

 なんだ、幽霊騎士にでもなったってんじゃないだろうな。

 ……んなわけねえ。金属の体から直に伝わってくるこの感触。

 死んだとかじゃない、生きてる。


「ヒュー、多いな」

「多いってなぁ……ここって俺ら二人だけだろ? マジで死ぬって」

「そんなこと言うなよ。天才パイロットの霧崎アキト君よ」


 パイロット? 

 この体は実はロボットで、神経を直接繋いでるとかいうのか?


「いいか、とりあえずだ。お前の”恋人”を守りたいんなら、意地でもやつらを通すな」

「はぁ……なんで俺のパソコンまで狙われてんだよ。チクショー!」


 体が勝手に上を向く。

 空はなかった。

 遥か上に鋼鉄の天井が見え、その下を戦闘機が飛び回って、昏い空を曳光弾が切り裂く。

 ここって戦場か?

 なんだよ、どっかのロボットアニメの世界にでも入ったってのか?


『通達、エネミー境界入り(ボーダーイン)交戦エンゲージまで予測、20秒』


 ……本物の戦場でいきなり戦えってのかよ。


「さて、ポジションはいつもどおりいこう。俺が撹乱ギーク、お前は破壊ヴァンダル

「オーケー」


 脚に何かが引っ付いたような感覚がした。


「駆動輪よし、斬機刀よし、システムクリア、いける」


 視界が動いていろいろと確認してゆく。

 駆動輪って……まんまK○Fのラ○ドスピナーじゃねえか!

 しかも斬機刀は刀身が黒いって……なに、脆いって評判じゃん?


「機体名RC-Fenrir、イチゴとアキト、戦闘開始」


 瞬間、俺の遥か前方、鋼鉄の門が弾け飛んだ。

 そこから入ってくるのは鈍色の機体。

 塗装なんて一切されてなくて、片手にC4みたいな何かを持っていた。


「どうなってもしらねえぞ、と」


 脚が地面をする。

 走るのではなく滑走。

 そりゃそうだ、ラ○ドスピナーなんてつけてるんだから。

 何の飾りっ気もない機体。

 まるででかい金属のマネキンを作りましたとでもいうかのようなやつに接近する。


「おっしゃあ! 一番乗りぃぐああっ!」


 いきなり叫んだやつの肩口から斬機刀を叩き込んで、そのまま斜めに押し通す。

 金属の硬質な装甲を容易く食い破る。

 途中ぶちぶちと何かを引き裂く感覚が手から伝わってきて、機体が崩れ落ちると胸部あたりから赤い液体が漏れていた。


「お、おおおおお、おいおい……あんたいきなり一般人を斬っていいのかよ!?」


 破孔の向こう側から別のやつらが言ってくる。

 その問いにイチゴが答える。


「私はPMSC白き乙女所属の者だ。貴君らは我々に対し宣戦布告のない攻撃を開始した。

 これによりすべての保護規則は適用されないものとすると同時、

 貴君らにはテロリスト認定が下されている。

 今しがた貴君らの仲間を斬ったのは我が隊の臨時戦闘員だ。

 テロリストを斬ったところでなんら問題はないのだよ」

「んなむちゃくちゃな!」


 言ったそばからイチゴが徹甲弾を撃ち込んで追い払う。

 なんだなんだ、俺はいつPMCに入った?

 ついさっき白い光に飲み込まれたばっかりだろ!?


『通達、敵性の正体が判明、桜都学園今季卒業生です。

 軍部、警察、ともに許可は下りました。機体依存兵器の使用を許可、皆殺しにしてください』


 学生? なんで学生なんかがPMCを攻撃してるんだ?

 それも卒業したてのやつら、自由になって即刻人生棒に振る気か?


「アキト! 第三世代と第二世代の違いを見せてやれ!」


 第三世代? また第三世代だ。スコールもそんなことを言ってたし、なんのことを示しているんだ?


「学生相手にまずいだろ!?

「そういうお前も絶賛ヒキニート中の一応学生だろ?」

「だからなんだよ!」

「同じような身分ならやってもいいかと」

「ふざけるな! 離脱処理・開始」

「おい!」


 視界が0と1の羅列に変わっていく。

 ほんとになんだよこれは?


 ---


「あ、がああああああぁぁぁぁ!!」


 目が覚めた途端にものすごい頭痛に襲われる。

 まるで頭の中が書き換えられるように、どろどろとした何かが動き回るような……。


 ほどなくして頭痛は収まった。

 収まったが……。


「ああくそっ、余計なことまで思い出させやがって!」


 すっぽり抜けていた記憶が一気に浮かび上がってきた。

 それだけならまだいい。

 自分で()()はずの記憶まで全部だ!


 ああくそっ、異世界行くも何も俺のいた世界には魔法だってあったじゃないかよ。

 竜人族だの悪魔だの魔物だの龍だの普通にいたじゃないか。

 レイズもレイズだ!

 名前だけは知ってたじゃないか、色んな掲示板サイトの国際指名手配犯のリストに載ってただろ。

 それにクロードもだ。 強盗、殺人、放火、爆発物使用、航空機墜落、人質殺害、いろんな罪状で指名手配されてたじゃねえか。


 それに第三世代。

 ああ忌々しい第三世代! 

 そりゃ頭の中にナノチップ入れて直接電気信号のやり取りを可能にしてコンピューターと同じようなことをできるようになった。

 電脳処置、だからなんだ、結局なっただけで、はいお終い。


 …………ああもう一個思い出してきた。

 俺は作られた失敗作だった。

 ああそうだよ、生まれる前から遺伝子操作だのなんだのして理想の子供を作りましょうってバカバカしい売り文句で作られた人間のことだよ。

 容姿端麗、頭脳明細、何をやらせても難なくこなす、性格は非常に良い、そんなことが出来るか!

 ああ、そうじゃねえか、引き籠もりになった原因もそんな奴らの集まりの中で一番劣ってて馬鹿にされて耐えられなくなったのがもとだろーが。


 ああ、思い出さずにずっとあの世界で……あの世界? 

 どの世界? 長い夢? 記憶が薄れる、霧がかかったみたいに思い出せなくなる。

 夢か……結局俺は何を期待してたんだよ。

 死にそうになるばっかりだったけど、あんな風に誰も彼も俺を一応は受け入れてくれる。

 俺を必要としてくれるやつらがいる。

 みんなでわいわいやって……。


 ほんと、何を求めてたんだか……俺は。

 なにを、期待して生きてたんだか。

 結局、人として見た時点でダメな俺は、あんな生き方できるわけはなかったんだよ。


 ---


「やあ、落ち着いたかな?」


 ふと気づくと青い髪の女の子がいた。

 でも服装は以前会った時とは大分違っている。

 ボロボロの青いティーシャツに、同じくボロボロでもう丈が殆どなくなっているズボン。

 かなり汚れている着衣の破れた隙間から下着がちらちら見え隠れしている。


「えっと……」

「やっぱりそこらへんの記憶は残ってないか。初めまして、レイアだよ」

「レイア?」

「おや? そこは残ってるか。私はレイア、レイア・キサラギ、覚えはある?」

「……なんとなく」

「ふーん」


 レイアがゆっくりと歩いていく。

 それに従ってさっきまで意識を向けていなかったまわりのことが目に入ってくる。


 どこまでも透き通る、晴れた空。

 ひらひらと舞うピンク色の花びら。

 暖かな日差しと頬を撫でる優しい風。 

 そして降りしきる、バケツをひっくり返したような静かな雨。


「君ってさ、なんで自分で死ねなかったの?」

「死ねなかった?」

「そう、君は何度か自殺しようとしたよね? でもなんで死ねなかったの?」

「……怖かったんだろうさ。死にたいって心で思っても、心の深い所が拒否して」

「そうかぁ、だったらさ、誰かのために生きようとは思わない?」

「なんでそんなこと……。このダメな俺にそんな大層なことができると思うか?」

「さっきまでの君ならできてたよ」


 レイアが歩を進める。

 それに従う様に、何もなかった場所に建物や人が現れ始める。

 俺も立ち上がってレイアについていく。

 雨は降っている。でも濡れない。

 雨がすべてを通り抜けて、まるで立体映像ホログラムでも見ているかのような感じだ。


「思い出して。君の記憶はまだ消えてない。奥底で無理やり眠らされているだけ」


 白い犬が歩いてくる。大きな犬だ。二メートルくらいはあるんじゃないだろうか?


「思い出して。第三世代は最も強い繋がりを持っているの」


 レイアがその犬の背中に寝そべる。


「そろそろ気づいて。偽りのこの世界に」


 何かが頭の中で拒否反応を起こした。

 記憶にかかる霧が薄くなる。

 俺は誰かの心配をしてなかったか?

 青い髪……妹みたいな…………エアリー?


「君は理から外れた。もうなにも恐れることはない。何かをするために必要なものは、すべてその手にあるじゃない」


 犬が口を開いた。


「小僧、貴様の願いは何だ?」


 ---


「はっ!」


 気づけば見覚えのある建物の前にある、駐輪場に寝ていた。

 如月寮。

 PMSC白き乙女の如月隊のやつらが基本的に住んでいる寮。

 そして、

 どこまでも続く、淀んだ空。

 ひらひらと宙を舞う灰。

 僅かな雲の隙間から除く日差しと、頬を撫でる突き刺すようなピリピリした風。 

 そして降りしきる、バケツをひっくり返したような土砂降りの雨。


「ようやく起きたか、このアホが」


 背中に柔らかい感触を感じて振り向けば例の犬がいた。

 俺はそれに寝そべっていたんだ。


「ったくよぉ、幻術への干渉は中々難しいんだぞ」

「スコール……さっきのって、全部そうなのか?」

「途中までは。干渉しなければ沈むとこまで沈んで二度と浮いてくることはなかったろうな」


 俺は立ち上がって辺りを見渡した。

 完全に思い出した。

 もう忘れることはない景色。

 俺の記憶の中にあるとおりの風景。


「さて、本来であればあのまま殺すところだったんだが」


 スコールはそう前置きして後ろを向いた。

 甘く焦げ臭い、そんな臭いが流れてきている。

 俺もそっちを見ると寮の換気扇から真っ白な煙がもくもくと溢れていた。


「なぁっ! ちょっと待ってろよ」


 濡れることも構わずに寮の勝手口に走って行ってそのまま中に入った。


「焼きすぎだ!」

「ご、ごめん……魔法の調節って難しい……」

「なんで魔法を使う? 普通にオーブンがあるだろうが」

「いやー、なんていうかなれないというか……」

「このバカ」

「痛っ! 叩くことないじゃん!」

「魔法は直接使わんで応用して使えと言っとるだろうが」

「うー……苦手ですぅー……可燃性ガスを作るとか交流の電気を作るとかは苦手なんですぅー」

「んのぉ、減らず口を……」


 中で何やってんだ……。

 それにあの声は、レイアだよな。

 駆け出そうとしたところで犬に呼び止められた。


「小僧、ゼロに感謝することだな。ゼロが何も言わなければ今頃は我の胃袋の中だ」

「な、中々ホラーなこと言ってくれじゃねえかよ……で? ゼロって?」

「中に入れば分かろう」


 この犬は……ってそういや名前は……ハティって呼ばれてたような。


「行くぞ小僧。戸を開けよ」

「……その前足じゃ無理なのね」


 勝手口まで走って、急いで戸を開けて中に入る。

 そこではテーブルの上に真黒な何か……炭? いや、たぶんケーキ? があった。


「にゃぁー……」

「なんだ? はぶてると幼児退行でもするのか?」

「方言で言わないで」

「す・ね・るとそんな風になんのか?」

「…………」


 なんだこの痴話喧嘩のような兄弟喧嘩のような何かは……。

 ていうか、うん、さっきと同じボロボロの格好だけどレイアだ。


「お、来たか。これからはお前が決めろ。”どちらにつくか”はお前の自由だ」

「なんのことだ? もしかしてあのレイズ派とかなんとか言うやつのことか?」

「そうだ。レイズ側につくのであれば相応の説明はしよう。つかないのであれば今すぐに死ぬか消えろ」

「なんだよ、生きるか死ぬかの二択か?」

「ああ。ま、今すぐに決めなくてもいいが、あちら側に接触したらその時点で敵と見なす」


 そう言い残すとスコールとハティは雨の中、外に出ていった。

 残されたのはレイアと俺。


「うぅーーー……」

「えっと、そのケーキ? どうすんの?」

「消す!」


 言った途端にケーキにノイズのようなものが走って、輪郭が崩れて消え失せた。

 というかさ、普通に焦がしても炭になったりしないよな?


「さてと、邪魔者スコールがいなくなったところで話しておきたいことがあるの」

「……?」

「まず、私はレイアの模倣体クローンすべての上位個体。個体識別名はゼロ」

「………はい?」

「前に行ったよね、64(ファースト)C8(セカンド)。それはすべてレイズが召喚した人形。

 でもそれぞれが意識をもって、独立しつつも脳に埋め込まれたチップや魔法によって繋がっている。反逆されたらさあ大変、君ならどうする?」

「……、」

「逆らえない命令を下せるやつがいたほうがいいってことだよ。まあ、それでも一部は外部から操られて処分されたけど」

「処分って……人形でも」

「ストップ。そこから先はどっちにつくかで話すかどうか決める」


 またこれだよ。

 でもなぁ……”どっち”につくか。

 レイズ側はまあ分かるけど、戻った記憶が確かなら犯罪者の集まりって感じなんだよな。

 もう一つのほうがどんなのかも知りたい。でも接触したらレイズ側とは敵対か。


「あれ? なんか入ってきたかな?」


 ゼロがそんなことを言ったと同時、世界が揺れた。


「うわっ! じ、地震!?」

「違うよ、侵入者とスコールが戦ってる。見に行こう」


 一緒に外に出ると大きなクレーターが出来ていた。

 この如月寮以外の建物も余波で破壊されたのかすべてなくなっている。

 そしてクレーターの中心、俺に抱き付いてきたあの女性とスコールが戦っていた。

 スコールは次々に魔法で攻撃して女性は避けるので精一杯という状況だ。


「どーやって私の”世界”に入ってきたんだろ?」


 呟きながら棒のようなものを……違う、ライフルだ。

 それを構えて、射線をあの女性にかさねて……。


「ちょっと待てよ」


 ライフルを押し下げる。


「邪魔しないで。ここに私の許可なくいる時点で撃たれても文句は言えないの」


 再びライフルを持ち上げる。

 説得なんて無理かな。

 それにあの女の人はクロードにも話を聞いてもらえずにやられてばかりだった。

 なにを伝えに来たのか。

 なにか大事なことのような気がする。

 なにかレイズに繋がっているような気がする。

 気づけば駆け出していた。


「なーんで行くかなぁ……」


 後ろから何か聞こえたけど気にしない。

 今は前のことに集中しろ。


「なんだよ、今までの俺が嘘みたいじゃないかよ……」


 だんだんとスコールたちに近づいてくると会話が聞こえてきた。

 戦いながら話すってまた器用なことを。


「だーかーらー! 私は兄上のために」

「黙ってさっさと死んじまえ」

「少しは人の話を聞きなさいよ!」


 女性の頬を真っ赤な光線が掠め、スコールの足元が爆ぜる。

 攻撃ではなく、思い切り地面を蹴った反動だな。


「生憎、敵の言うことはなるべく聞かないようにしてるんでね」

「だから敵じゃないって言ってるでしょ!! もう膠着状態で永遠に戦い続けるのはゴメンよ!」

「だったらまずお前が消えろよ。そしたら少しは天秤が傾くだろ?」

 

 スコールが腕を振るうと、まるで見えない刃があるように空間ごとすべてが切り裂かれる。

 女性はそれを間一髪で回避し、反撃はしない。

 いや、できないのか? スコールは相手の魔法をなんとかして無力化して……?

 違う。あの時のを思い出せ。

 スコールの周りに光の球があって、あいつらは魔法が使えなくなった。

 だったら相手の魔法を奪いとるのがスコールのスキルか。


「もう! なんで信じてくれないの、私は兄上と敵対する気はないの!」

「知るか。少し前までは殺しに来てたくせに――ハティ! 食い付け!」

「承知」


 女性の影から鋭い牙の生えた咢が飛び出す。

 俺はそこに向かって水弾をぶち込んだ。


「えっ? きゃ!」


 ハティの凶悪な牙が突き刺さるよりも前に、水弾が女性を飛ばす。

 氷塊でハティを狙ってもよかったけど、そうするとなんか魔法を取られそうな気がしたんだ。


「なによ! か弱い女の子相手に男三人? 卑怯よ! 戦力過剰よ!」


 女性は一人でぎゃあぎゃあ騒いでいるが、スコールたちのヘイトは完全に俺に向いている。

 勝てるか? 俺一人で勝てるのか?

 後ろにはスナイパーまでいるんだぞ。


「なんだ、結局あっち側に就こうってのか」

「そうじゃない。ただ話を聞いてやるくらいしたらどうなんだ。

 あいつ、クロードにも同じようにやられてたんだぞ」


 俺が指差そうと、女性がいるであろう方向を向けばすでに姿はなかった。

 どこからか瓦礫を蹴る足音だけが響いていた。

 逃げたな。逃げないで欲しかったけど。


「……敵方に助力した。これでお前も敵だ」

「えっ? いや、ちょっと待てよ。俺はただ話を聞いてやっ」

「黙れよ」


 ぞくり、と、背筋に悪寒が走った。

 真後ろから冷たい金属が押し付けられている。


「残念だなぁ、もう少し騙されてくれるとよかったんだけど」

「だ、騙されるって?」

「なんでエアリーの髪の毛は青色? 

 なんで”私”が君にあの青い珠を渡した? 

 なんでそのスキルが消えた?」

「……エアリーに何しやがった」

「いい加減、気づきなよ。あれを渡す時に”私”はなんて言った?」


 なんて……? あの時、確か……。

「あの子の魔力結晶。言い換えれば、魂みたいなものかな」

 まさか……!


「魂って、まさか憑依したとか言うんじゃ!」

「そう、その通り。いい”眼”だよ、あの娘は。

 これで”外”の状況をより詳しく見ることができるもの」

「テメェ!」


 振り向きざまに思い切り拳を振るった。

 だがそれは空振りして、でも軌跡を赤く残した一撃だった。


「なに貴方……、いくら理から外れてるからって何で魔術を扱えるの」

「知るかよ! それよりエアリーにおかしな副作用とか起きないだろうな!」

「副作用? 起こらないほうがおかしいよ。

 他人の存在を無理やり押し込んだら普通の状態が続くわけないもの」


 拳がブルブルと震えた。

 周囲に、何かが見える。

 ゆらゆらとまとわりつく、陽炎のようなものが。

 火の粉が俺の回りを飛び始める。

 なんだい、こんなときにお決まりの覚醒とかいうやつか?


「魔術の代償は大きいよ。普通の魔法なら魂が削られるだけ。でも魔術は……」

「うるせ、え?」


 がくん、と体が崩れ落ちた。

 力が入らない。声が出せない。

 まるで麻酔を使われたような。


「今のうちに消せ」


 ゼロは静かに首を横に振った。


「少し、このままで。意外と面白いかもよ、こういう”新入り”は」

「……はぁ。お前がそういうならそれでいい」


 なのに音もなく、静かに銃口を向けてくる。


「それじゃあ、さようなら」


 細い指が動いて、トリガーは動いた。


「本当のことを知ったとき、君はどうするんだろうね?」


 そんな声を聴きながら、俺は急速に体の感覚が消えていくのを感じた。

 眼だけを動かしてみれば、指先から体に青いノイズが走って消え始めていた。


 なんだよ、結局消すんじゃないか……。 

はい、第4章始まりました。

初っ端からわかりづらくてすみません。

そこの部分は『二人のフォークロア』(※4月23日削除)の始まりのところにつながってます、はい。

あっちのほうでアキト君の本当の引き籠もり生活が明らかに! ……なるかも。


それと誤字脱字、おかしなところがあったら容赦なくご指摘くださいませ。

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