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遥か異界で  作者: 伏桜 アルト
第1章 激動と波乱
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アワード

 歩き続け早くも4時間。

 正直、引き籠もりな俺にとっては部屋の中を移動するのですら億劫おっくう

 4時間も歩き続けりゃ足が痛くなるさ。

 しかも裸足で!

 さっきまで草が生えてて少しは歩きやすかったけど、

 いまはもう土と石ばっかりの地面ですからね。


 ぐぎゅるるるるる~。

 うむ、それにしても腹が減った。

 本来なら昼にカレーを食うはずだったのだ。

 なのに!

 なにあの爆発的なもの!?

 御蔭で俺は昼飯抜きでこんな世界に飛ばされてんですよ!!


 何か食えそうなものは……。

 辺りを見回しても特に何も……いたよ、ニワトリのようなものが。

 尾っぽが赤いけどニワトリはニワトリ。

 捕まえて食おう!


 大丈夫さ、ここは現実だ……多分。

 誰かの伝説みたいに攻撃したら、

 どこからか大量のニワトリが来て襲われるってことはないだろう。

 ないはずだと思いたい!

 いやだよあれ、どこへ逃げても、

 どれだけ逃げてもしつこく追いかけてくるのって。


 さて、善は急げだ。あいつ(ニワトリ)にとっては悪だろうがな。

 助走をつけ、飛び掛かる。


「俺のメェェェシィィィィーーーーーー」


 スッ……ドサァァァ。

 ニワトリって結構俊敏なんですね。

 顔がえらいことになりましたよ。


「こんのぉぉぉぉおおおおーーーー!!」


 今度は猛獣のような構えから一気に飛びかかる。

 サッ! ……ドシャァァァッ。

 なんだ?

 今このニワトリがサイドステップしたように見えたぞ。

 はははは。

 そんなわけあるまい。

 ニワトリだぞ。


「コケーーーーー」


 グサッ!

 うん、これは間違いない。

 今、ニワトリが俺の顔に跳び蹴りをしてきた。


「ンギャァァァァァーーーーー」


 やめてぇぇぇ! そのまま嘴で突かないで!!

 俺が悪かった、もう君は襲わない!!

 俺の負けだ。

 そんな思いが通じたのかニワトリは突くのをやめてくれた。

 

 そして、


「コッケコッコーーーーーーーー!!!」


 勝者の雄たけびのように一鳴きした。

 むかつくな、ニワトリのくせに。

 グサッ!

 爪がさらにめり込んできた。

 分かりました、俺の負けです。

 完敗です。


 そうして今日も平和にニワトリは歩いて行くのであった。


 後に残された俺の頭の中には声が響いた。


『アワード、鶏に負けた人間を獲得しました』


「いらねぇぇぇー!! そんな称号アワードいらねぇよ!!」


 いや、もういいよ。

 どうせ、こういう称号的なものって外れないんでしょ。

 引き籠もりの方がもっとひどいだろうし、マシかな。


『アワード、自他共に認める引き籠もりを獲得しました』


 ……なんだろうね、虚しいね。


---


 俺、現在某FPSでみた第五匍匐前進を真似ています。

 ぐるるるるる~。

 腹の虫が獣の如き唸り声を上げている。

 だが、今は吠えないでくれ。

 それどころじゃないんだ。

 50mくらい後ろに明らかにやばい連中がいるんだよ。

 見た感じまんま山賊な格好だったんだよ。

 13人いて、うち2人は蹲っていたけど。

 片方は男の大事なところを抑えて……いや、あそこが潰れていたと思う。

 なにがあったかは知らんがご愁傷様です。

 もう片方は見るからに顔が真っ青だった。

 後ろ手に縛られて、鞭で叩かれた様な跡があった。

 ついさっきまで拷問されていたような感じだった。

 こっちもご愁傷様です。


 いやいや、やつらの事を考えてる場合じゃない。

 ゆっくりとこっちに向かって来てる。

 今から起き上がったら一発でアウトー。

 見つかったら逃げ切る自信がない。

 起き上がらなくても見つかるけど少しは時間稼ぎができる。


 さて、どうしようか。

 スケさんの剣があるけど1人じゃ勝てる訳ない。

 ちらりと後ろを見る。

 山賊がこっちに来てるよ!!

 おえぇ……、さっきのスプラッタを思い出した……。

 いっそまた潰して吐くか?

 死ぬよりましだろう。

 うん、そうしよう。

 俺は山賊たちの上あたりに右手を向けた。


「バハムート、潰してしまいなさい」


 山賊たちの頭上に巨大な魔方陣が出現した。

 それと同時に、鐘が鳴った。

 ゴーンゴーン、ゴーンゴーン。


競技開始(ゲームスタート)


 ゲーム?そういやそんなことが魔導書に書いてあったな。


「うわっ!?」


 そして、気付けば俺の前に半透明の青いパネルがあった。

 パネルにはこんなことが書いてあった。


『あなたは当選しました以下の条件を満たして下さい。 他のプレイヤーを3人倒す』

 

 はい?

 ドスン!! ベチャ……。

 気を取られている間に後ろの山賊たちにバハムートが落下した。


『条件の達成を確認。競技達成(ゲームクリア)


 はいいいいいい!?

 え?

 なに?

 これでもういいの?

 タイミング良すぎじゃね!!

 起き上がって小躍りしたよ。

 やったよ!

 これで帰れるよ!


 そして、後ろを見てしまった。

 おげぇぇぇぇ……。

 吐くものがないときは胃酸がそのまま出るらしい。

 喉が焼けるように痛いです。


 少しして落ち着いたので彼らに手を合わせておく。

 怨念とか信じないけど、怖いじゃん。

 それにしてもなぁ……これぞ血の海だな。


『アワード、殺戮者を獲得しました。

 アワード、血に飢えた獣を獲得しました

 アワード、マルチキルx10を獲得しました』


 そういう称号はいらないんですが。

 俺はまだ猟奇殺人なんて……ああ、いまやったか。

 いやでも、誰かさんみたいにプレス機に投げ込んでないだけ……。

 ………同じですねぇ、バハムートでプレスしちゃったねぇ。

 結構、後ろめたいことを思っていると、

 また半透明の青いパネルが出てきた。


『「復活」or「ここに残る」』


 どちらを選ぶか。

 考えるまでもない。

 「復活」に決まってんだろ!

 俺は「復活」を選んだ。

 そして…………。

 

 …………………。


 はい?

 なんで?

 何も起きないの?

 え? え?

 ゲームクリアで戻れるんじゃないの!?


「はぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!?」


 ちょっと1人にさせて……ああ、誰もいないんだった。

 体育座りになって、膝に顔を埋めて、目を閉じた。

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