表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遥か異界で  作者: 伏桜 アルト
第2章 冒険
32/94

道中記

 あれから数日。

 歩きっぱなしだ。

 そして初日からレイズが俺のほうをちらちら見てくる。

 まるで変態を見るような目で。

 もしかしてリュックに入ってるものがばれてるのか?

 十分にあり得るな。

 だってあのとき、レイズの普段着を運んだときだってすぐに分かっていたんだもの。


「……これ?」


 背中に背負っているリュックを指さしてみた。

 そしたらレイズが頷いた。


「そうだ、なんでオレが捨てたものが全部そこにあるんだろうと思ってな」

「いや、なんか湖で釣れた」

「…………」

「マジですよ?」

「……おかしいな、確か捨てた場所は水龍の住処だったはずなんだが」

「それクロードが仕留めたぞ」

「ああそうか。クロードならありだな、前に海竜倒してるし」


 クロード君よぉ。

 あんた強すぎですよ。

 ……それにしても。


「…………」


 これは心が折れた人間の感じだな。

 なんとなく分かる。

 知っているような気がする。

 クロードはずっと無気力なままだ。

 なにか言えば「あぁ…」と返事はするし、食事のときも出せば食べる。

 でもそれだけだ。

 自分から何かしようという気配が微塵も感じられない。

 なんかこう、死相? って言ったらいいのかな?

 そんな感じのオーラが纏わりついてるんだよ。


「なあレイズ、なにがあったんだ?」

「ん? ……ああクロードのことか」


 そこでレイズは気まずい顔になった。

 なんかこれは聞かないほうがいいな。


「まあ、なんだ、昔な、オレとヴァレフォルってやつとで貴族の館に盗み入ったんだ。そんとき、それが偶然クロードのとこでな……」


 それだけで、後は何も言わなかった。


 その日の夜。

 また今夜も野営の準備が進められる。

 レイズが打ち上げた光弾がサーチライトのようにあたりを照らす中、未だに焦げ跡の残るイケメンたちがどこからか薪を集め、食べられる植物や魔物を狩ってきて着々と用意が整う。

 明るい間は見渡せる範囲に木なんて一本もなかったのにどこから薪を調達しているんだろうか?

 これは一番の疑問だ。

 魔物は分かる。どこにでもいるからな。

 とりあえず俺が話しかけれそうなギルバートを探した。


「おーい、ギルバート」

「なんでやしょうか?」


 呼ぶとすぐに来た。

 犬かこいつは。


「この薪はどこで集めてきたんだ?」

「どこって……これも魔物ですよ」

「え?」

「だから魔物です。トレントっていう木の魔物で、倒した後に魔法で乾燥してるんですよ」


 ああ、なるほど。

 俺が一方的な蹂躙を受けたあの木の化け物か。

 ……よく倒せるな。


「ギルさん、ちょっと手伝ってくれ」

「おう。それじゃボス、俺は用があるんで」


 ギルバートは仲間に呼ばれて走って行った。

 その先には黒い縞模様の白い虎みたいなのが……いや、あれって食っていいのか?

 と、思っていたら組員Aと組員Bが後ろ足を持ち上げてギルバートがささっと皮を剥いで解体を始めた。

 ほかにもいろいろ運ばれてくる。

 なかなかグロいな。

 見ないようにしよう。

 と、別の方向を向いたら怪我した連中がレイズの前に並んでいた。

 回復魔法をかけてもらっているようだ。

 爪でバッサリやれたような感じだからあの虎? を仕留めるときに負ったものだろうな。

 俺だけ何もしないってのは悪い。

 ということで俺も回復の手伝いに行った。


---


 そして晩飯。

 虎みたいなやつの焼き肉。牛みたいな魔物の焼き肉。鳥のたたき。何かの焼き肉。

 肉オンパレード。野菜はスープみたいなのに少しだけ。

 栄養バランス悪いぞこれは。


 そしてハッキリ言わせてもらおう。


「シェフ出てこいや!」


 あ、先に隣に座ってるレイズが言っちゃった。

 まあいいや。

 改めて、ハッキリ言わせてもらおう。

 ……あまりうまくない。

 いやね、あの水龍に比べたらうまいよ。

 でもね、うまくない焼肉はえらくないの。

 ダメなの。

 獣くさい、硬い、筋張ってる、生臭い。

 こういうのは生姜とかで煮込むべきだろう。


「はいはい、なんですか」

「どういう調理してんだ」

「どうと言われても……普通に焼いただけだが」

「…………もういい、行っていいぞ」


 レイズがしっしっ、と手を振るとイケメンシェフは再び調理用の焚火へ戻っていった。


 しかしなぁ……。

 フェネとハーピーって一応”鳥”ですよね?

 あいつらが一番多く鳥のたたき食ってんのよ。

 ある意味同族でしょ?


「おいしい!」

「…………」


 フェネは骨付き肉両手に持って行儀悪く食ってるし。

 その横でうちのハーピーちゃんがもっちゃもっちゃ食ってるし。

 ……そういえばハーピーは生ものをよく食ってるな。


「なあレイズ。ハーピーってさ……何食ってんの!?」


 なんか白い粘土みたいなの食ってたぁぁ……。


「あ? リュックの中にあったやつだ」


 と、言われてリュックを見ると勝手に中身を出されていた。

 ああ、あの澱粉か。

 ……いやちょっと待て。

 あれは焼かずに食うとかなり口当たりが悪くて超絶にざらざらした触感のもんだぞ。

 よく普通に食えるな……。


「うまいか?」

「そうさな……月姫の料理に比べればマシだな」


 同時刻、別世界のどこかの国の端っこの領地で、ダークマターを生成していたもの静かな少女はくしゃみをした。


「つきひめ?」

「……生死不明だがな」


 またあの表情だ。

 これ以上は聞くまい。


「そういや、ハーピーってどういう分類になるんだ?」

「んー………亜人、デミヒューマンかな? 簡単な例でいえばレナみたいな有翼族だな」

「へぇ……」

「あ、それと一つ注意。羽の手入れはなるべくしてやれ」

「わかった」


 はぁ……。

 さてと、このえらくない焼肉を胃袋に収納してしまおうか。


「ついでにもう一つ。今焼かれようとしている肉は生で食える」


 レイズがそんなことをさらっと言い放った瞬間、きらんっと効果音が聞こえてきた。

 音の出どころはすぐに分かる。

 ハーピーだ。

 すでに高速飛行のスタンバイから離陸準備に入っている。


「やめなさい」


 頭を押さえて飛行を阻止。

 もしかしてレイズは分かってて言ってるのか?

 地味に笑ってるしさ。

 もう一回行ってやるよ、寄生虫とか変な菌とかいたらどうするんだ……。

 まあ、俺が治すんだけどね。


---


 就寝前。

 クロードの様子を見に行った。

 相変わらずだ。

 テントの隅っこのほうに座り込んで虚ろな目。

 ぶつぶつなにか呟いている。

 あんな感じじゃ自殺とかそういう方向に持っていく気力もないだろうな。

 しかしなにをぶつぶつと……。


「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス、ヴァレフォルゼッタイ、コロスコロスコロスコロスコロスコロス」


 ……。

 かなり末期ですな。

 …………やばくない?

 俺の手には負えないクロードを放っておいてベインのほうに行った。

 こいつもこいつでなかなかやばい。

 あの日から全然目を覚まさない。

 移動中、レイズに聞いてみたけど「助けた相手が実は本当の殺害目標だった。そして不意打ちでやられた」と言っていた。

 俺からするとベインは強いように思えるんだけど、それを不意打ちですか……。


「……っ」

「ベイン?」

「ぁぁ……くそ! やつは!?」


 いきなりベインが起きた。


「落ち着け!」

「…ああ。こんなとこにいるってことは負けたのか」

「なにがあったんだよ」

「言えない。お前は()()知るべきじゃない」

「なん――」


 ベインが額に指を突き付けてきた。

 それと同時に強烈な睡魔が襲った。


---


 翌日、俺は運ばれていたらしく、起きた時には石柱モニュメントが見える場所まで来ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ