鳥vs鳥
「ボス! 起きてください」
「んぁ?」
目が覚めると俺の周りに、ホストかこいつら!? といいたい感じのやつらがたくさんいた。
「……えっと誰ですか?」
「ギルバートですよ!」
「……誰さん?」
覚えがねえぞ。
全然覚えがねえぞ。
記憶が抜け落ちてる間に知り合ったやつらか?
いやいや、それはない。
こんなにさわやかな感じだけど隠しきれていない怖い雰囲気のある、お兄さんたちの知り合いなんて俺にはいない。
いないはずだ!
「マジで覚えてないんすか?」
「知らねえよ?」
なんかほかにもモヒカン野郎までいるし。
まさかバイク乗り回すあいつらじゃなかろうな?
肩パッドみたいなのもつけてるし。
てかこの世界にガソリンやらバイクやらあるのか?
あたたたたた! とかシャオ! とかホアタァ! とか言う人来てくれません?
「城壁壊したじゃないっすか」
「…………」
えーとちょっと待ってね。
思い出す。思い出す。
Now Loading.
アキト読み込み中。
あ。
「あー、あのときのYAKUZAな人か!」
「そうですよ。やっと思い出してくれましたか、ボス」
「そのボスっていうのやめない?」
「ではグランドマスターと」
「やっぱボスでいい」
なんだろうね。
俺は逃げきれていなかったのか。
しかもあれから結構経ってるぞ。
なのになんで見つけられた?
「ボス、これからは我々、傭兵団切り裂きジャックがお供しますぜ」
「…………」
んん? 切り裂きジャックだと?
連続猟奇殺人犯の……いやいや、違うよね。
違う…だろ?
そして俺の名字は霧崎。
関係ないよね?
ちなみにジャックは某国で言う名無しの権兵衛ですよ。
「…まず名前変えね?」
「ボスのお望みのままに」
……名前。
もうヒャッハーズとかでいいんじゃね?
そんでもって某拳法の使い手に粉砕されてしまえ。
と、思ったら。
「ギイヤァァァァァァーー!」
「どうした!?」
突然叫び声が聞こえた。
声がしたほうを見ると。
「燃えるような色の髪……? フェネ!?」
まずいですよ。
これは非常にまずいですのよ!!
「ボス!! 止めてくださぎゃああああ」
言い終わる前に目の前のギルバートが火達磨になった。
そして悠然と歩いて来るのは白いワンピースを着た(注・下はなにもつけてない)悪魔だ。
「あ、あの、フェネサン、チョットオチツコウ?」
俺の恐怖ゲージがレッドゾーンに突入してるよ。
このままだと精神体でどっかいっちゃうよ!?
「死ね!」
赤い燐光をまとった拳が突き出される。
非常にスローモーションで見える。
これは回避不可能だな。
ああ、俺ってこんなわけの分からないことで人生終えるんだ……。
そっと目を閉じた。
ズドガァァァン!!
凄まじい音が響く。
体が押される感覚がする。
終わったな。俺終わった。
パラパラと音がする。
舞い上がった土とか小石が落ちてるんだろうか?
それにしても何も感じない。
ひどすぎて感覚神経が死んだか?
「ぐぬぬ……」
なぜフェネの苦悶の声が聞こえる?
目を開けると俺の体には土ぼこりがついている以外はなんら異常はない。
そして俺の前にパタパタと停止飛行しているハーピー。
なにが起こった?
フェネのほうに視線を…っと、尻餅ついた体制で両足の間のぴったりとじたKのないIがみえそうだったのですぐに戻す。
「いったい何が……」
「ボス、そのハルピュイアの子供ですよ」
「へ?」
「その子が反射したんです」
「マジ?」
フェネの一撃はすごく重たいんだぞ。
それを反射だって?
冗談きついぜ。
この小さい体でどうやってやるってんだ。
「…………」
無言でフェネの顔を見つめると、真っ赤になって立ち上がり、再び仕掛けてきた。
「なんなのよ、あんた!」
赤い燐光をまとった拳が突き出される。
それに対し、ハーピーは小さな翼を打ち付ける。
それだけで。
「うわぁっ!」
フェネのほうが吹き飛ぶ。
どうなってんだよ。
スキルか?
そう思って解析してみるがスキルはおろか魔法すらない。
と、そこで気づいた。
真っ白な翼にキラリと光るものがついていた。
「なんだこれ?」
ハーピーを掌に載せて翼を触る。
すると指に銀色の粉がついた。
「粉?」
『ミスリルの粉末』……スコールが手を加えたミスリル鉱の粉末。これは触れた魔法を完全反射する。なお数時間で効力は失われる。PS.ささやかな贈り物よ、メティより。
なんじゃそりゃ……。
てかスコールって誰よ?
そして最後の一文。
メティってあの堕天使か……。
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「ではボス、これからおねがいしゃーす」
「「おねがいしゃーす!!」」
なあ、俺は思うんだ。
異世界に転移したら俺強えぇぇ!
そんでもって美少女ハーレムこそが定番じゃないのかって。
なのにさ。
なんなのこれは?
焦げたイケメンが揃ってるんだけど。
俺にそっちのケはないんだけど。
BL系断じて嫌なんだけど。
それに美少女と言ってもさあ……。
悪魔、フェネ。美幼女だね。怖い、NG。
頭上のハーピー。対象外。いい加減名前付けなきゃ。
堕天使、メティ。どこかで出会えるかもしれない美少女くらいにはいい。性格でNG。
竜人族、クレナイさんだっけ? 性格でNG。
同じくリナさん。これは手出ししちゃいけない感じがする。NG。
レベル1000、もといレイズ。これはなんか地雷な気がする。NG。
アルルーナことアル。寄生されるのは御免だね。可愛いけど。
と、いうかんじでいろいろと難あり。
というか、どうやってもお付き合いする方向に持っていけない。
俺のハーレムルートへのフラグはどこにも落ちてないのだ。
ないものは立てられない。
立てられなければルートインできない。
「ボス、これからどうしやす?」
組員Aの声で意識が呼び戻される。
「とりあえず俺の仲間を待つ」
「仲間ですか? もしかしてあの黒いのですかい?」
黒いの。
指さされたほうを見るとクロードが二人抱えて戻ってきていた。
なぜにベインとレイズを抱えてるの?
そしてなんだこの感覚。
レイズを見ると心臓が締め付けられるような……。
「よう、なんだ? こいつら?」
「…………」
なんていったらいいんだろうか?
「あっしらはボスの部下です」
と、思ってたら勝手にギルバートが答えてくれた。
まあ間違っちゃいないな。
「へぇ、部下、部下ねえ。だったらこの二人を運べ。荷物持ちの部下は荷物持ちだ」
「クロードさんや、そりゃどういうことだい」
俺はいつ荷物持ちに転職したんだ?
「ん? だって荷物背負ってるだろ」
「理由それだけ?」
「そうだが」
「…………」
「…………」
無言の圧力がなんかなぁ…。
「わかったよもう。ギルバート、その二人運んでくれ」
「了解っすよ」
ギルバートが抱えようとした瞬間、レイズが飛び起きた。
「うぉっ!」
「………どこだここは? そしてなんだテメェらは?」
レイズがぐるっと辺りを見回す。
そして俺と目が会うとなんとも気まずそうな表情になった。
なんというか……泣く一歩手前的な?
俺なんかしたか?
もしかして記憶が抜け落ちてる間になんかやらかしたか!?
「あの、レイズさん? 俺なんかまずいことしました?」
「……いや、悪いのはオレだな。その様子だと、なんつーか、あー、記憶が、……なくなってるな?」
「ああ、なくなってるよ」
「覚えてない相手にいうのもなんだが。無理やり押さえつけて……強引にやりすぎた、すまん」
そう言ってレイズは頭を下げた。
よく分からん。
なにがあったんだよ?
まあ、とりあえず。
「俺に謝ることはないだろ? だって俺なんも覚えてないんだから」
「そ、そうだな。なんか悪かったな、いきなり変な空気にして」
ばっと立ち上がって空を仰ぐ。
その表情はさっきまでとなんか違ってた。
勝手に自己解決したんだろうか?
だったら、それはそれでいいけど。
クロードがすごい剣幕でレイズに詰め寄った。
「さーて、レイズ。さっさと俺を送り返してもらおうか!」
「送り返す? お前もレイアに転移させれたのか?」
「二回目以降はな! 直接はヴァレフォルだぞ!
あの屑のせいで俺の人生狂いっぱなしだ!! さっきも殺り損ねるしさあ!!」
「……はぁ、そうですか。それはよーーーく分かる。残念ながら送り返せない、以上」
「……………one more time」
「送り返せない」
「………once more」
「お・く・り・か・え・せ・な・い」
「…マジで?」
「マジだ」
クロードはその場に崩れ落ちた。
「おい、クロード」
「……………………………」
返事がない、ただの屍のようだ。
まるでリングの端で真っ白になった男のようだ。
「そっとしておいてやれ、クロードはお前みたいにここで生きようって考えじゃないからな」
「なるほど」
俺たちはレイズの提案によって、一度ミズガルドまで帰ることにした。
それにしてもだ、ギルバートの地図を見せてもらったけどメチャクチャ距離があるぞ……。




