表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遥か異界で  作者: 伏桜 アルト
第1章 激動と波乱
20/94

終局

 結局ダメだった。

 『放つ()()は待ってやる』

 つまりは放った瞬間にあいつも攻撃するということだ。

 俺が呼び出したバハムートは空中で爆散して黒い世界に赤色をまき散らして消えた。


 こうなりゃあれをやるしかあるまい。

 一か八かのあれを……。


「……なるほど、オレが召喚できない理由はこれか。

 さあ、本気の戦いを始めようか」


 ふわりとレイズの白い長髪が揺れ、俺のほうへ向かってくる。

 魔法が効かないのはさっき見ている。

 召喚もダメだ。

 ならばほんとにあれしか手段がないだろう。

 強い相手と戦って、しかも相手が女ならばテンプレ通りのあの手段しか。


「おら! どうした! 避けねえと死ぬぞ!!」


 まだだ、ぎりぎりまで引きつけろ。

 引きつけたら……。


「切り裂け!」


 軽く飛び上がってブレードを振り下ろしてくる。

 そこを狙って前転。

 レイズが空振り着地したところを後ろから――。


 脇の下から腕を回して貧相で残念な胸を鷲掴み!!!!!!


「                                  」

「                                  」







 時が止まった。











 ように感じられた。











「で?」

「普通は『きゃー』とか『えっちー』とか言うんじゃないの?」

「………だろうな、だがオレにそういう期待はするな」

「ちなみに下のほう触った場合は?」

「………」


 というわけで、すっと指を伸ばし割れ目がある部分へ――


「うぉわぁああ!?」


 気づけば遥か上空に投げあげられていた。

 まっじいぃぃぃぃぃぃ!!

 落ちたら死ぬ!!

 ってか下からブレード突き上げてるから刺さる!!

 そしてなぜにこんなにスローモーション?

 あ、そうか。これがあれか。

 危険なときにゆっくり見えるってやつか!?


 いやいやいやいやそんなことは今はどうでもいい。

 なんかねぇか、なんかないか、なんとかできないか!?


 あったよ! さっきベインが通話してきたやつ!!

 視界に表示されているツールバーから電話のアイコンを選ぶ。


「Help Meeeeeeeeeeee!!」

『そんなところにいやがったか』


 瞬間、ゴバッ!! っと凄まじい音がしてレイズの姿が吹き飛んだ。

 そして俺は? え? ちょっと?

 もしかしてこのまま自由落下?


「うっっっそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」



---



 ゴツンと、とても固い何かが頭を叩く。

 その痛みで飛び起きる。


「は!!」


 手が動く、足が動く、怪我はない。


「生きてる! 俺生きてる! 生きてるぞーー!!」

「いやはや、ぎりぎりだったぞ。そして無茶しすぎだバカ」


 もう一回ゴツンと硬いもので叩かれた。

 よく見ればそれは金槌だった。

 しかもなぜか柄が短いアンバランスなやつだ。


「しっかし、このアホ(レイズ)座標アドレスのない空間を上書きするとは……」


 顔を向けるとちょうどレイズが起き上がるところだった。

 しかも頭から血をだらだらと流しながら。


「いっつぅ……ベイン、なんでミョルニルもってやがる」

「そんなことはどうでもいい」


 ベインがミョルニルを打ち鳴らす。


「お前のせいで計画が狂っただろ」

「別にいいだろ、各個撃破すりゃぁよ」

「よく、……ない!!」


 思い切り地面にミョルニルを撃ち付ける。

 それと同時に空間全体に白いヒビが走り、砕け散った。

 周りには先ほどと変わらない路地の光景が広がっている。


 ミョルニルをレイズの脳天に打ち付けながらベインは言う。


「俺はこのままセントラの機神どもを破壊しに行く。

 本来ならセントラの機神、ブルグントの現神、

 ラバナディアが呼び出した神……対比的に古神と呼んでるやつを

 ぶつけて勝手に消えてもらう予定だったんだがな。

 誰かさんのせいで不必要な手間をかけること――」

「もういい、もういい。愚痴は後で聞くし埋め合わせもなんかしてやる」


 とてつもなく不機嫌そうな顔をしつつも、打ち付けるのをやめた。


「それと、最後に一ついいか?」

「なんだ?」


 レイズがベインの肩に腕を回して内緒話を始めた。

 俺には内容があまり聞こえない。

 なに話してんだ?

 つーかあの状態はガラの悪い姐さんがヤンキーの兄ちゃんに絡んでるようにしか 見えないんだけど。


「―――――――てことをだな」

「だけどそれじゃ―――――だろ」

「そこを―――――――――」

「――――なら――――でどうだ?」

「いいだろう」


 レイズが腕を放し、ベインが俺のほうに来た。


「悪いな、恨むならヴァレフォルを恨んでくれ」


 はい? なんのこと?

 そう思った瞬間、地面に組み伏せられた。


「なにを――!!」


 レイズが光る剣を振り上げた。


「やめろ! 放せベイン!!」


 しっかり押さえつけられて、暴れても抜け出せない。

 魔法を使おうとすると形になる前に霧散する。


「やめろ……やめろ! やめてくれ!!」


 レイズの剣があの子に振り下ろされる。

 反射的に目を瞑ってしまった。

 くそっ!! 結局俺は何も守れやしないのかよ!!


 ガキィィンッ!!


 目を開けば振り下ろされた剣がレイズの右腕ごと吹き飛んでいた。

 えっ? なにが起こった?


 レイズは俺の後ろ側を見ている。ベインもだ。

 俺も無理やりに首をまわす。


「リナさん?」

「如月隊の教え、恩を仇で返すことなかれ。コイツ(アキト)には怪我を治してもらった。ソイツには――――――だからそれ相応の恩返しは、ね」


 肝心なところが聞こえなかった。

 そしてレイズを恐れずに、どこから持ってきたのか、ハルベルトを構えた。


「そうか」

「だから、これが――」

「黙れ」


 レイズが左腕を向ける。

 ぷつり、と糸が切れたかのようにリナが倒れ、

 そしてレイズは残った左腕で剣を振り下ろした。


「あ、…………ぁ……あああああああああああっっっ!!」


 視界が引き伸ばされるように歪んでいく。

 何が何だか見分けが付かなくなってゆく


「時間切れだ、ついでにそいつも放り込んでおけ」


 レイズの声が聞こえ、リナが俺の上に落とされた。

 時間、切れ?

 ベインが言っていた制限時間かよ。


 なんだよ…………………。


 なんだよ……………この……虚しさは。


 なんなんだよ!!


 白く引き伸ばされた視界がだんだんと暗くなる。

 何も見えなくなる。


『アワード、救われぬ者を獲得しました』


---


終わった後。

レイズは少し虚ろな表情で座り込み、ぶつぶつと呟いていた。


「おい、あほんだら」

「…………結局オレは」

「いい加減にしろ!」


ベインは思い切りレイズの頭に拳を落とした。

それでもレイズは壁を向いて座り込んだまま。


「お前さ、いつもそうやって自分で全部やってうじうじするなら俺にやらせろ。

 やる前になにか一言言えよ。全部背負い込むなよ。

 何のための仲間だよ。お前はなんのために――」

「うるさい! もう放っておいて……」

「放っておけるかよ……召喚した人形とはいえ殺すのはつらい。それくらいはわかるさ。だからさ……」

「うるさい! うるさい! ほんとに…放っておいてくれ……今は一人にしてくれよ………」


それきりレイズは耳を塞ぎ、頬に光るものが伝った。

はじめまして、伏桜アルトです。

ペンネームで自分のことを示すのは結構はずかしいですね。

とりあえず、ここまでを第一章します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ