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遥か異界で  作者: 伏桜 アルト
第1章 激動と波乱
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世界の理

「まず、この世界についてだけどね。

 君のいた世界とは、ちょこっと位相のずれたところにあるの。

 本当ならここって、生と死の狭間にいる人が来るべき場所なのよね。

 ……今はもう違うけど」


 なんですか? それ?

 俺、まだ死んでませんよ。死にかけても……。

 死にかけてんのか、一応あれ爆発ぽかったし。

 いやいや、でもばりばり生きてますよ。


「まー、簡単に言うとここはアスガルドってとこで、

 今は昔と違って死にかけの連中どうしの復活を賭けた戦争やってるんだよね」


 戦争? FPSみたくドカドカ銃撃戦でもやってんの?

 しかしなんだろうなこの口調は。嘘っぽいんだが。


「あ、因みに戦争っていうのは魔法撃ち合って、

 召喚獣どんどん呼び出して、派手にドカーンっていうやつだから」


 なんか予想と違ったぁー!

 なんだろう、某ゲームみたいに負けたらそれ切り、

 人生終わり、消滅的なことになりそうな……。


「戦争で勝ったら生き返れるけど、

 負けたら完全に消滅するからね。

 まあ、君の場合はさっきのこともあるから

 帰れるかどうかはわからないけどね」


 この天使、いや堕天使はかなりいい加減だな。

 俺の人生がかかってるってのによ。

 てか、魔法? 召喚獣?

 俺、そんなもん使えませんよ。


「あのー、俺魔法とか使えませんよ」

「もう、仕方ないなー。

 今回だけ特別に魔法と召喚獣を一つずつ与えます。

 本当なら他の競技者(プレイヤー)を倒して奪うんだからね。

 特別ですよ、と、く、べ、つ」


 なんだろう、かなり変な天使だな。こいつ。


「で、どんなのがあるんです?」

「そうね、この中から選びなさい」


 堕天使がそう言うと、俺の目の前に4つ珠が現れた。

 赤い珠、青い珠、黄色い珠、茶色い珠。

 なんだろうね、某ゲームに出てきたマテ○ア的な感じだな。

 穴に填めたら魔法が使えますよ的な。


「これ、なんすか?」

「魔法よー、好きなものを選びなさい。

 私はどれがどんな魔法かは教えないから」


 どれがどんな魔法なんだよ。

 そこ重要ですよ。

 もういいさ、色のイメージで選んでやる。


「じゃあ、赤いやつで」


 赤と言えば炎、炎で敵を焼き払うって、

 なんかテンション上がりそうだからな。


「はい、次は召喚獣ね」


 今度は3つ珠が現れた。

 紫色の珠、赤色の珠、黒い珠。


「さあ、好きなの選んで」


 どれ選ぼうか、どれもなんか危ない気配がしてるんですが。

 紫のはグレープ味の飴玉(毒入り)ですって色してるし、

 赤いのはパチパチ音鳴らしながら燃えてるし。

 黒いのは……俺の本能が触れちゃいけないって信号出してます。

 さて、どれを選ぶかは決まった。

 黒は無し、赤は火傷しそうだから無し、よって紫。 

 さっき赤いの選んだだろって?

 これはこれ、あれはあれ。


「これで」

「本当にいいの?」

「なにか問題でも?」

「いいえ、君がそれがいいと言うならいいの」


 なんだろう、不安になってきた。

 選択を間違えたか?


「それじゃ、私はこれから用事があるから」


 堕天使はそんなこと言ってふわりと宙に浮いた。

 ちょっと待てよ!


「もう少し詳しく、この世界について教えてくださいよ」

「えー、面倒くさいー」


 こいつホントに天使か?

 いや、堕天使だった。

 でも殆ど何も知らないまま放り出されても、

 今日中に死ぬ自信はある。

 生きるためなら頭くらい何度でも下げてやる。

 プライド? そんなもんねえよ。


「お願いします。教えてください」

「……仕方ないか、監視を怠った”こっち”にも過失はある訳だし」


 なんだろうね、この堕天使は。

 自分のミスで誰が死のうが気にしないのかね?

 いや、堕天使だからか。


「でもまあ、面倒だからなぁ……

 そうだ、これ、読んでおきなさい。

 この世界のことは一通り書いてあるし、

 君が何かすれば勝手に記録してくれる魔導書(グリモワール)だから」


「はあ、どうも」


 広辞苑並みの厚さがあるよ、これ。

 全部読むのに何十時間かかることやら……。

 魔導書から視線を戻すと、もうそこに堕天使はいなかった。

 ひらひらと黒い羽根が舞い降りて、地面に落ちる前に消えた。

 

 魔導書とかいうやつを適当に読んで分かったことは以下の通り。

 ・この世界には魔物と呼ばれるものが存在する

 ・魔物はいくら倒そうとも一定時間ごとに復活する

 ・この世界に”登録”された者は”競技者(プレイヤー)”と呼ばれる

 ・他のプレイヤーを倒すと、相手の持っている魔法と召喚獣を得ることができる

 ・魔法は敵プレイヤーから同系統の物を入手するか、戦闘で使うことにより強化される

 ・24時間に一度、抽選が行われ”競技(ゲーム)”が始まる

 ・抽選で選ばれたプレイヤーは条件を達成すると、

  それ以外は選ばれたプレイヤーを倒すと”競技達成(ゲームクリア)”になる

 ・ゲームクリアするとここに残るか、復活又は転生を選べる

 ・敗北した者は、もと居た”世界”の記憶から完全に抹消され、その“存在”ごと消滅してしまう


 うーん、やり直しの効かないMMORPG的なもんかな?

 難しいことはわからん。

 要はゲームが始まったら敵プレイヤー”倒して”、復活すりゃいいんだろ?

 だったら楽勝じゃねえかよ。

 引き籠もり歴=ゲーム歴の、MMOで横殴り常習犯な俺にとっちゃ、

 プレイヤーAとBが戦う→弱る→狩る。

 この流れでよくね。ずるいって? 勝てば正義です。

 よしよし、そうと決まれば……。


「よお、兄ちゃん。新入り(ニュービー)か?」


 気付けば俺の周りには、山賊風味のならず者が5人もいた。

 あっれぇ……狩るつもりが早速狩られそうだなぁ……。

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