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遥か異界で  作者: 伏桜 アルト
第1章 激動と波乱
10/94

被害者

 俺、霧崎アキトは現在迷子になっている。

 いい年こいて迷子って笑えるだろ。

 途中まではキニアスの後ろをついて行ってたんだけど、

 敵が多くなってきた辺りから追いつけなくなってそのままはぐれました。はい。

 敵が多くなってきたということから分かる通り、

 俺の周りに味方が1人もいないんですよねぇ。

 それはつまり敵に包囲されているということであり、

 ミイラ取りがミイラになってる状況。

 救援に来たのに逆に救援を求めたい状況なんだよな。


「くそがぁぁぁぁぁーーーーー」


 俺は氷の壁を作って敵の魔法を防ぎながら、火の魔法で爆発を起こして敵を吹き飛ばしている。

 もう殆ど自棄だよ。

 パッと見200人くらいが全方向からいろんな魔法とばしてくるんだよ。

 どこの弾幕ゲーだよムリゲーだよこんなの。


 バゴンッ!

 後方で爆発が起こり近づいてきた敵の足が飛ぶ。

 設置型の魔法で地雷のようなものが発動した結果だ。

 苦しみに悶える敵が目に入るがそれを意識する暇はない。


 なんかいい魔法がないか!?

 このままじゃじり貧じゃねぇか。

 なんかないか、なんかないか。

 ……あ、いいものがあるじゃないか。

 訓練のときにやったあれが。複合魔法が。

 火属性Lv.4を2つと水属性Lv.3を合わせて……。

 Lv.48、名づけるとするならブリザードボム。

 火属性の爆発と水属性の凍結の特性を合わせたもの。

 確か「敵に包囲された場合はこれよ」とかって言われたやつだ。


「うおらぁぁぁーーーー」


 思い切り地面を叩く。

 爆発的に水と冷気が広がって場を凍らせていく。

 そして後悔した。


「oh……これはやりすぎかぁ……」


 俺を中心に氷の迷宮的な感じで凍結していた。

 出口も入口もない。

 出られない。

 やっちまったなあ。

 しかも寒い。


「……自分の魔法で凍死するとか嫌だぞ」


 これだけの氷だ。

 火の魔法で溶かすにしても下手すれば、亀裂が入って崩れて生き埋めになる。

 それに冷凍庫の中のようにとても寒い。

 どうしようか?


「無理にでも溶かしてみるか?」


 そう思って俺の手に火を出した瞬間、魔導書が光った。

 そして頭上に変な気配を感じて見上げると真っ黒な穴が開いていた。


「な、なな、なんだよ……これは」


 まるでマイクロブラックホール。

 俺が見たことのあるので言えば堕天使のゲート。

 何か出てくるのか?

 そう思った瞬間、何かが落ちてきた。


「は?」


 避ける間もなく俺にクリティカルヒット。

 あれ?なんかとても柔らかいけど残念な何かが手にあたってるんですが。


---


「…………」

「すんませんした!!」


 落ちてきたのは白い少女。

 服はボロボロ。

 さっき触っていたのは少女の胸。

 そして土下座している俺。

 無言の圧力がなんかすげー怖い。


「お前もか」

「はい? どうい………!!」


 訳のわからないことを言われ顔だけ上げてみると、

 下からは青いミニスカートの中の領域が丸見え。

 しかも穿いてない。


「なんで穿いてな……あだぁ!!」


 後頭部にブーツのスパイクが突き刺さった。

 やっぱこういうことって聞いちゃだめだな。


「変質者はここで灰も残さず燃やそうか」


 そう言って白い少女の手に太陽が生まれた。

 太陽としか言いようがないほど輝いている。

 熱い! 放射熱がめっちゃあちぃ!!


「すみませんでしたぁ!! もう余計なことは言いません!!」

「ならばよし。次何かやったら時空の狭間に落とすから」

「了解です!!」


 なんだよ次元の狭間って!?

 誰かさんみたくデジョンで飛ばされるのは御免だぜ。

 いやでも、もしそれでいろんな世界に行けるなら……。


「おいアキト」

「はい! ってなんで俺の名前知ってんの」

「解析スキルだ。お前も持ってるだろ」


 ああ、なるほどね。

 俺も解析してみようか。


 【xxx】

 種族:xxx

 職業:xxx

  

 【xxx】

 

 【xxx】


 【xxx】


 破壊力:xxx

 速度:xxx

 射程:xxx

 持続力:xxx

 精密動作:xxx

 魔力総量:xxx

 成長性:xxx


 …………。

 なーんもわかんね。

 ニワトリの時にはあった偽装すらねえよ!


「今解析したな?」

「したけどなんもわかんねえよ」

「偽装ってスキルは知ってるか?」

「ああ、知ってる」

「一旦解除するからもう1回やってみろ」


 解除ねえ。

 さてさてどんなステータスなのやら。


 【レイズ・アルクノア・レイシス】

 種族:不明

 職業:大天使の僕

  

 【スキル】

 偽装Lv.1000

 解析Lv.1000

 概念魔術

 神話魔術


 【召喚獣】

 神龍


 【魔法】

 火属性Lv.1000

 水属性Lv.1000

 地属性Lv.1000

 風属性Lv.1000

 精属性Lv.1000

 生属性Lv.1000

 光属性Lv.1000

 魔属性Lv.1000

 時属性Lv.1000

 空属性Lv.1000


 破壊力:???

 速度:???

 射程:???

 持続力:???

 精密動作:???

 魔力総量:???

 成長性:ほぼ無し


「へ?」

 表示されたステータスを見て気の抜けた声が出た。

 レベル……1000?

 俺と桁が3つ違いますね。

 え、1000?

 1000っておい。

 そこらのRPGでも限界はレベル100だろ?

 限界突破して天元突破しちゃったんでしょうか?

 だったら成長性が「ほぼ無し」ってのは納得がいく。

 それから見たところ全部の属性が揃ってるってどゆこと!?

 キニアスは使えても3つまでって言ってたよね?

 どゆことこれは。

 もしかして神様ですかこの人?

 だったら神龍を召喚できるのも納得いくよ。

 それにしてもレベル1000……。

 3つ合わせたらレベル10億の魔法……世界が壊れるんじゃね?


「すごいっすねー」

「そうでもない、あのずぼら天使のほうがまだ上だ」

「ずぼら天使?」

「お前にその本渡した堕天使のことだ」


 へえ、ずぼら、ずぼらねえ。

 確かにそうだな。

 やるべきことをやってない天使だもんな。

 ん? でもなんでこの人俺が堕天使に魔導書もらったこと知ってんの。

 

「アキト、この氷はお前が?」


 俺はそうだと頷いた。

 そしてレイズはなんの躊躇いもなく氷をぶん殴った。

 硝子の砕けるような音がしてすべての氷が砕け散った。

 冷気と氷の粒はすぐに霧散した。

 そしてすぐに敵が現れた。

 銀色の光が煌めきながら、空間を切り裂き、歪な穴から次々と暗い色の服を着た人間が這い出てくる。

 あっという間に俺たちは包囲された。


「おいレイズ、どうすんだ」

「どうするだと? 不思議なことを聞くねえ。

 あんな雑魚に負ける理由がないのに」


 ああ、確かにそうですね。

 あんたレベル1000だもんねぇ!!


「さて――」


 レイズが何か言おうとした途端に様々な属性アトリビュートの魔法が放たれた。

 俺は巻き込まれては敵わないので咄嗟にその場に伏せて顔を覆った。

 そして凄まじい爆音が鳴り響き、風圧で体を揺さぶられた。

 でもそれだけだった。

 恐る恐る目を開けてみれば地平線の果てまで抉れた大地。

 原型をとどめている場所が全くない。

 見渡せば夥しい数の人が倒れている。

 俺たち以外に立っている人が全くいない。


「以上終了。馬鹿どもは全滅しましたー。

 ……なんてな、ちょっとやりすぎた」

「いまの…………魔法は」

「火属性レベル10、爆裂を地中に数千発使っただけだ」


 言葉がでねえよ。

 絨毯爆撃でも少しは地面の形が残るだろ……。


「区別なく吹っ飛ばしたのか」

「味方は2人ほど巻き込んだが問題はない」

「問題あるだろ!」


 見つけられるわけないが俺は周囲を見渡した。

 すると50mほど離れたところにズボッと斧が突き出た。


「なんだ?」


 次は斧のすぐ横から人の手が突き出た。


「ゾンビ?」

「んな訳ないだろ」


 地面から這い出てきたのは竜人族の女の子だった。

 しかも上半身裸で。

 多分さっきの爆発で吹き飛ばされたのだろう。

 そして地面からハルベルトを引き抜いて、


「ざっけんなーーー!!」


 思い切り投げてきた。

 重量およそ3㎏の槍が狙う先はレイズの頭。

 レイズはそれを一歩横にずれて躱す。


「危ないなー」

「お前のほうが危ねーだろーーがーーー!!

 味方を爆発に巻き込むなーーーー!!」


 ごもっともです。

 この人怖いです。


「そんなこと言うなって」


 レイズは悪気なく言いながら真後ろに振り返った。

 そこには雲を突き抜ける光の剣が伸びていた。


「な、なんだよあれ」

「魔法だ。確か……レーヴァテインだったかな?」


長大な剣は振り下ろされた。

それにレイズはアッパーを叩き込む。

それだけで光の剣は砕け散った。

そこへ。


「ほんと、規格外だなお前は」


唐突に間近から声が掛けられた。

臙脂色の軍服を着た金髪の青年だ。

手に持っているのは赤い柄に青い刀身のエナジーソード。


「ウィリス、久しぶりに会った仲間にいきなり攻撃ってのはどうかと思うぞ」

「何言ってんだ、お前が先に手を出したろ。爆撃に生き埋めというコンボで。

 それで、そっちの弱そうなのは?」


いきなり振られちゃ困るが、とりあえず名前言っとけばいいか。


「霧崎アキトだ」

「へえ」


そして金髪の青年、ウィリスの視線が俺の魔導書に重なった途端、表情に憐れみが加わった。

なんだ?俺なんか変な事でもしたか?


「お前も被害者か……」

「レイズも言ってたけど被害者って何?」

「黒い天使に嘘の情報渡されたろ? あれに騙されたりなんだりしたら被害者だ」

「……」


なーんも言えね。

騙されてた事は分かってたけど、改めて言われるとへこむ。

へこんでいると竜人族の少女も俺たちのほうに近づいてきた。

男が2人いるのに前を隠さずに来ている。

見た感じCか……。


「……燃やそうか?」

「いえ結構です」


なんでこうすぐに燃やす方向に話が行くの?

ってかなんで俺はダメでウィリスはいいんだよ。


竜人族の少女がハルベルトを拾いに行った。

後ろからちらっと見る。

そして少女が消えた。


「え?」


バゴッ!

そして俺の意識も消えた。

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