初戦
さて、二つ目の国へ行きます!
いよいよ本格的な戦いが始まりますよ!
朝ご飯、緑明が涼村と中結の顔を見て、
「なんでそんな清々しい顔してんだ⁇」
と、聞かれ返事に困ったことはさておき…。
「今日、俺たちは1度ココを出て、次の国へ行こうと思うんだ。」
大事な話があると言われ、ご飯を食べ終えても全員自分の席についていた。
「何かアテがあるんですか⁇」
中結が そりゃ、あるから言ってるんだろう と思いながらも聞いた。
「実は、次行く国には少し前まで朝月の上層部の1人として働いていた人物がいるんだ。彼に話を聞きに行こうと思ってな。」
みんながウンウンと頷く。
「だから、すぐにでも出発したい。2人とも最低限の用意。多分2,3日滞在するだろうから、そのつもりで今から準備してきて。」
2人が返事をして、2階へ上がった。
ー駅にてー
裕子が最寄り駅まで送ってくれた。
「あんまり無茶し過ぎないでね。無事帰ってくるの待ってる。」
3人で車が去って行くのを見送ったあと、切符を買って電車に乗り込んだ。
「電車で行けるなんて、近い国なんですか⁇」
涼村が荷物を棚の上に乗せている緑明に聞く。
「まー近いとは言っても半日かかるけどね。」
「じゃああまり近いとも言えませんねー。向こうに着いたらどうやって、その人の家まで行くんですか⁇」
「一応連絡はとってあるから迎えに来てくれるらしーんだけど、1時間ほど待つことになるみたいだ。」
この話を聞いていた中結は緑明の行動の早さと顔の広さに驚いた。
不思議に思い聞いてみる。
「先生ってホントにただの学校の先生なんですか?」
「⁇なんで?」
「そんな上層部にいた人と連絡とれるって、ただの学校の先生には出来ないマネですし、裕子さんの家だってフツーじゃありえない書物もたくさんありましたし…。」
「…中結くん相変わらずカンが鋭いね。確かに俺はただの学校の先生ってワケでもない。かと言ってそんなめちゃくちゃ特殊なワケでもないけどね。多分、向こうに着いたらいろいろわかると思うよ⁇」
緑明のパッとしない返事に少し苛立ちを感じなかったでもないが、とりあえずそれ以上今は聞かないことにした。
ー第2国ー
駅に着くとすでに午後6時を回っていた。午前9時ごろの電車に乗ったので、9時間電車に乗っていたことになる。
「あー、疲れた…」
伸びをしながら涼村は周りの景色を見渡した。
「ケッコー都会ですね。」
「この街はこの近辺諸国の中でも1,2を争う大都市だからね。朝月に比べると少し劣るけど、かなり発達してるよー。」
緑明が説明しながらスマホを操作し連絡をとろうとしていた。
「涼村疲れてない⁇電車ん中でもケッコー頑張ってたし。」
「うん、大丈夫!途中しっかり寝たし!」
「これから何起こるかわかんないんだから、あんまし余計なトコで、力使うなよー。」
「大丈夫だよー!その辺ちゃんと考慮してるから!」
電車の中でも簡単な魔法の訓練をしていた。
涼村はこの数時間の間でかなり上手く使えるようになったが、途中疲れたのか眠ってしまったため、中結が心配していた。
「なら、いーんだけど…。」
「2人とも、連絡とれたよ。」
緑明が少し離れた所から2人の所へ向かって来た。
「あと30分ほどで、来てくれるらしい。それまでは、この辺でブラブラしてよーか。」
駅前は大勢の人で賑わっていた。
「俺ちょっと行きたいトコあるんだけど、着いて来てくれないか⁇」
前を歩く緑明が振り返って聞いた。
「全然いーですよ。」
「俺たちなんもすることないんで。」
「なら、よかった。ちょうど2人にも見せたかったんだ。」
見せたかった
という言葉が何を言いたいのかよくわからなかったが、店に着くなりそれがわかった。
「…MIDORI-AKE…⁇」
涼村が店の前の看板を見て続いて緑明本人を見た。
「ココは俺の父が作った店だ。今はおふくろが継いでる。」
緑明は店のドアに手をかけ、引いた。
「いらっしゃい…って京介かい。久しぶりだねー。」
中に入ると見た目70くらいのお婆さんが。
「久しぶり。あのさ、急になんだけど、朝月の話知ってるか⁇」
「大規模な建物の倒壊が起きて、外部からの侵入を許さない真っ暗な街になったって話くらいなら…。アンタの家族は…⁇」
「…向こうだよ…」
「…そーかい…。で、そちらの学生さんは⁇」
「俺がキセキ的に朝月で見つけた2人。」
緑明がこちらをチラッと見た。
「こんにちは。はじめまして。涼村凪沙です。」
「涼村。こんにちはじゃなく、こんばんは、じゃないか⁇えっと、中結晴です。」
「いらっしゃい。私は京介の母親のカツエ。元々は朝月に住んでたんだけど、死んだ旦那について来て今はココで暮らしてる。」
「あのー、この店は何をされてるんですか⁇」
涼村は店をぐるっと見回した。本がズラッと並んでいるが、タダの本ではなさそうだ。
「ココはね、私の夫が趣味で開いたお店でね。夫は研究家。しかも魔法のね。いろんな書物を集めたりしたよ。裕子の家には行ったかい⁇」
「え、はい。」
「じゃ、話は早いね。あそこの地下の書物は夫が集めたもの。大事なものはアソコにしまって、売れるものはココで売ってる。まー古本屋だね。」
カツエは本棚の中から一冊本を取り出した。
「京介が自らココを訪れるのは珍しい。状況からして、何か朝月の手がかりを探してるんじゃないかい?」
流石は母親。子どもの考えはお見通しだ。
「どこまで、調べた?」
「調べたってーか、ほぼ憶測だけど、2ヶ月以内になんとかしないとヤバいってことぐらいしか…。」
「…。ま、合格だね。」
この一言に3人ともハテナをうかべた。
「旦那が死ぬ前に、もし今の朝月のような事態が起こって京介がなんらかの形で少しでも情報を掴んでいたら、コレを渡すよう言われてたんだ。」
と、緑明に手渡したのは水色の薄い本。というか、冊子。
「この本ただフツーに読むだけじゃなんの役にもたたないらしい。結局あの人も解明できなかったからね。旦那は今回の朝月の事態を予想していた。コレを託すから、どうか朝月を救って欲しい。」
最後はお願いになっていた。
「…ありがとう…!」
「たまには…顔、見せなよ。孫にも会いたいしね。」
「…わかった。事件が解決したら連れてくるよ。」
「うん。楽しみにしてるよ。この後どーするんだい⁇」
「とりあえず宇佐美に会いに行く。」
「なるほどね。確かに1番頼りになるけど、ココからどーやって行くんだい⁇」
「もーすぐ迎えが来る。」
「はぁー!あんたもエラくなったねー(笑)国の王様を呼び出すなんて!」
「うるせ!(笑)…。じゃそろそろ行くよ。」
緑明がそう言って店を出た。涼村と中結も後ろに続く。
「涼村さん、中結くん。」
カツエが呼び止めた。
「京介、無理するとこあるから、子どもの2人に頼むのは心苦しいんだけど、頼んだよ。2人も充分気をつけてね。」
2人は顔を見合わせた。カツエの方に向き直る。
『はい!』
ー再び駅前ー
駅までもどるとあと5分で6時30分というところだった。
「もうすぐだな。」
「先生…」
中結が少し緑明を睨む。
「お前恐いな(笑)どーした?」
「これから会う人ってホントにこの国の王様なんですか⁇」
緑明がふと笑う。
「そーだよ(笑)」
「やっぱ先生只者じゃないですよね⁇」
「それは行ってからのお楽しみだ。」
中結から目をそらした。その時だ。
「火事だ!火事がおきてるぞー!」
何人かが叫んでいる。騒ぎの方に目を向けると、煙がもくもくと上がっていた。
「⁉︎先生!アソコって!」
「…おふくろ…!」
ーMIDORI-AKEー
さっきまでいた店が急に火の海になっていた。中結は辺りにいた人に状況を聞く。
「ほんの3分ほど前までは何もなかったんだ。フツーにお客が入って行って。ちょっとしたら爆発があって…。間も無く火の海に…。」
状況説明を聞いて、周りを見ると、緑明がいなかった。
「⁉︎先生⁉︎…。もしかして…!」
おそらく緑明は火事の店の中へ入って行ったのだ。
「…これじゃ、先生まで危ない!涼村!」
「わかってる!今用意してる!」
緑明がいないとわかった時点で涼村は魔法の用意をしていた。
「アクア!スタイル、フリー!」
涼村が地面に手をつき、そこから大量の水が出現。そのまま火の海へ投入する。
「中結!」
「わかってる!Fairy!」
魔人を呼び出し、涼村のおかげで少し炎の威力の収まった部分から店の中へ入っていく。
ー店内ー
火事の出火場所であろうお店の所には誰もいなかった。その奥のカツエが住んでいる所へ入った。
2階建て構造になっていたが、1階には誰もおらず、2階へあがる。店の火も涼村のおかげでおさまってきていた。
中結は息を潜めて、静かに階段を登る。誰かの声が聞こえてくる。
「なんでこの店を狙った!」
「なんでかって⁇それは貴方がやっかいだからだよ。緑明さん。」
若い男の声だった。
「俺とこの店どー関係があるんだよ!」
「だって、この人貴方のお母さんでしょ?この店を火事にすれば緑明さんは絶対来る。その証拠に今ここにいるじゃないですか。」
「いーから、おふくろを離せ!」
「やですよ。緑明さんをおとなしく殺させてくれるならいーですけど、そーもいかないんでしょう⁇」
「あぁ。フツーならどちらかがどちらかをかばって死ぬ展開かもしらねーが、俺はそんなん大っ嫌いだ!おふくろも俺も無事に助ける!」
「へー。じゃ、もーいーです。殺します。」
若い男の声は急にまるで機械のような話し方に変わった。
「待て、そーはさせない!」
緑明が叫ぶと同時に激しい金属音がした。
「チ、こいつ。めんどーだな!お前から殺してやるぅぅぅ!!」
中結はもう限界と、発動していた魔法を解き放った。
「2式魔法陣!発射!」
この声に若い男が一瞬気を取られた。同時に強力な電撃がヒット!
「先生!カツエさん大丈夫で…⁉︎先生腕が!」
緑明の腕が完璧に折れ、血を流していた。
「…中結くん…。よく助けてくれた…。」
「先生!あんましゃべらないで!ほら、肩につかまってください!」
中結が意識を失っているカツエをおんぶし、緑明に肩を貸した。若い男は伸びきっている。火は涼村のおかげで完全に止まっていた。
ー翌日王宮にてー
あのあと、火事はおさまったが、若い男は逮捕され、刑務所へ送られた。しかし、何を聞いても答えてくれず、名前さえわからない状態だった。
涼村は駅前まで行くと、高級そうな車が止まっていて、それがきっと、宇佐美さんだろうと思い声をかけた。緑明の名前と、起こった事件の説明をすると、急いで店の前まで車を回してくれた。
そのまま王宮へ向かい、緑明とカツエの手当てをする。
幸いカツエはただ若い男に眠らされていただけで、どこにも異常はなく、緑明も腕こそ折れていたが、命には何の問題もなかった。
「…。ここ、⁇王宮…⁇」
「そーです。王宮ですよ。先生」
横から声がした。中結だ。
「…中結か…。俺どんくらい寝てた?」
「全然大丈夫です。まだ朝の10時ですよ。」
「そーか…。!おふくろ!おふくろは…」
「全く問題ないです。今は涼村と一緒におしゃべりしてますよ。しばらくはココでお世話になるそうです。」
「…そーか…よかった…。」
緑明は窓の外を見つめた。
「先生。一体どーやって腕折ったんですか?」
「え⁇いや、アイツがおふくろに切断系の魔法をかけようとしたから俺の腕を硬化させて、しのごうとしたんだけど、ヤツの力が大きすぎてな。腕の切断はなかった分だけマシだと思っとくよ…。」
中結が話を聞くとはーっとため息をついた。
「カツエさんの言ってたこと良く分かった気がします…。」
「え、何言ってたんだよ⁇」
「内緒です(笑)俺と涼村とカツエだけの秘密です(笑)」
中結が人差し指立て、鼻の前に持って来てシーッというポーズをとる。
「お前ら!俺をバカにしやがって!」
「やだなー!(笑)バカになんてしてませんよーw」
2人でギャーギャーこんなやりとりをしているとドアがノックされ開いた。
「まー、腕折れたのに元気やなー。」
関西弁のカッコいい人が部屋に入ってきた。
「なんだよ。宇佐美。」
いかがでしたか⁇
いよいよ次は前半戦の山場です!
文書量も今回より多くなるかもしれません。
また次も頑張ります!