黒幕
長いです(笑)
今回で終わらそうと思ったのですが、長すぎて分割しました…
ー12月21日、王宮ー
凪沙が王宮に到着し、一応状況とこれからすることを説明した。
「俺と凪沙で一気に攻め込む。相手は5人+アイスラーだから、一人一人やってちゃ、こっちがやられるからな。」
「一気にってことは今回も使うんだね、アレ」
「あぁ。作戦は今日の18時〜。暗くなりかけて、相手の判断がちょっとでも鈍ったときに攻めたいからな。それまでに、俺たちはこの魔法を完成させねーと。」
と、晴が魔法大辞典なるものを目の前に置いた。
ペラペラとページをめくり、ストップする。
「UNISONの最高難度のこの魔法で一気にやりたいんだけど、いけるか?」
辞典を凪沙に渡す。それに目を通して、
「…カンタンじゃない。けど、やるしかないし、きっとやれる!」
「よし、じゃあ早速今から練習だ。つっても、今魔力使い果たしたんじゃ、意味ねーから、ライトにな。」
とりあえず、最高難度のUNISONは練習できないため、それほど難しくない技をいろいろ練習することにした。
息がピッタリあう2人なので、カンタンなものであれば一発で成功する。
小一時間ほどしか練習しなかったが、流星群しかなかったバリエーションが10個ほどになった。
UNISONの難度は上からS A B C Dとあり、同じ難度の中でも多少難度が違う。
流星群はA。練習で成功した10個のうち、Bが2つ、Cが5つ、Dが3つ。凪沙たちがしようとしている最高難度の魔法はもちろん、S。そして、それをぶっつけ本番でしなければならないかもしれなかった。
リスクのほうが高い。しかし、なぜか凪沙も晴も失敗する気は全くしなかった。
それはお互いの信頼の深さを物語っているのだろう。
その後休憩して、準備やら何やらであっという間に17時。出発の時間がやってきた。
カツエは王宮の人たちがアイスラーたちの存在を知ってしまったため、不思議な動きをしないよう統率をとるために、王宮へ残る。
アキラが車を運転し、3人で乗り込むこととなった。
「アキラさんは、戦うんですか?」
凪沙がなんとなく聞いた。
「一応陽動とか、敵の注意を引き付ける程度のことしかできませんが、やれることはやらせていただきます。」
凪沙はホッと息をついた。2人より3人のほうが安心だし、安全だ。それは晴も一緒のようで、少し緊張のとれたような顔をしていた。
「でも、敵を倒すのはお2人です。頼みましたよ。」
凪沙と晴は顔を見合わせ、コクリと頷いた。
30分ほどで現地に着いた。
もう一度作戦の確認、魔法の確認をする。
敵は6人。そのうち、魔法を使えるのはアイスラーをいれて3人だった。
アキラにはそれ以外の3人を相手してもらうことにし、魔法を使える3人を凪沙と晴で攻めるというのが大まかな流れ。
「それじゃ、今から潜り込みます。」
アキラが地下への侵入経路へと案内する。
侵入経路はアイスラーたちがいると思われる場所から500メートルほど離れたところにあった。
というか、ほぼ街のはずれだ。
「さ、ここから入ります。」
指のさすほうを見る。
が、そこには地面しかない。
「⁇地面…ですか?」
「そういう風にカムフラージュしてある、というのが正しいですがね。」
アキラがその場で地面をトントンと、足で2回叩いた。
少しすると、地面の一部が崩れ、中から階段が。
「ここは私たちが作った秘密の入り口です。他には誰も知りません。」
「…え?じゃあアイスラーたちはどうやって中に入ったんですか…?」
「おそらく、敵の中に1人、テレポーテーションの使い手か、爆発系の魔法、あるいは空間交換の魔法を使える者がいるはずです。」
爆発系魔法は地面を爆破してこじ開け、後から天井を修復する方法。
空間交換は今自分たちがいる場所と、目的の場所を交換して、中に入る。
「どちらにしろ、相当な力を持った相手だということは確かです。」
3人は階段を下り、アイスラーたちの元へ向かう。
「…凪沙。」
晴がいつもより少し低い声で話しかけた。
「なに?」
「個人的に長期戦は嬉しくない。一気にカタをつけたいんだけどさ、頭一発めで例のアレ、やらねーか?」
例のアレとはUNISONのSランクの大技のことだ。
「え、頭一発めで?」
凪沙はちょっと戸惑っている。
「あぁ。俺が思うに、一発めが大チャンスだと思うんだ。それ逃したら、後にチャンスがある確率は多分ほとんどない。」
それを聞いたアキラが頷いた。
「確かに。ただでさえ数で負けてる上に、2人はいくら強いからとは言っても、まだ中学生。勢いと力のある一発めで勝負っていうのは正しい判断だと思うよ。」
「それに、もし、仮に失敗したとしても、そんだけの力があるってのを相手に見せつけるだけでも意味はある。」
2人の話を聞いた凪沙が段々と納得していったようで、
「…わかった。やろう!」
「そーこなくっちゃな!」
少し歩くと、やがて1枚のドアが目の前に現れた。
「これを開けたら、おそらくいます。」
ドアの少し前でヒソヒソと話す。
「凪沙、緊張とかしてないか?」
「大丈夫!大分戦いとか慣れて来たし、でも油断は禁物!だね!」
「そんだけ冷静に物事考えれるなら大丈夫だな!」
「うん!」
一呼吸置く。
「それじゃ」
「行こ!」
ドアの前で魔法を唱える準備をする。
「いけますか?」
アキラがドアに手をかけ聞いた。
頷いて返す。
「それじゃあ」
ガチャリ!と、ためらいもせず開けた。
中は電気こそ点いているが、誰もいない。
「…?誰も…」
「いや、微弱だけど、魔力は感じる。俺の感知できる範囲だと2人。」
晴がコソッと伝える。
「…凪沙。耳貸して。」
凪沙は晴のほうへ耳を傾けた。
「…うん。…うんうん。…わかった」
晴から何かやり方を教わったようだ。
「じゃ、俺はこっち。その間にアキラさん。」
「わかってます。攻め込むんですよね?」
「大丈夫そうですね。」
そう言って晴は目を閉じた。凪沙も目を閉じる。
「…いくぜ。」
『UNISON!』
凪沙と晴が一気に魔力を放出。
『ボルカニック!』
ボルカニック。その場で強力な火山噴火のような爆発を引き起こす、UNISONのランクBの大技。
地面ごと吹き飛び、辺り一体真っ裸、空の元へと姿を現した。
敵の位置がきっちり把握できないと、いきなりSランクを使用しても意味がないと考え、晴はとっさに作戦を切り替えた。
その作戦変更は見事成功。
奇襲に、成功し、敵6人がまる見えだ。
すでに倒れた敵が2人。
残り4人のウチ、魔法が使えるのはアイスラーともう一人。
その2人と凪沙と晴の視線がバチっと合い、魔法での応戦が始まった。
同時にアキラは魔法を使えない2人めがけて攻め込み、焦った片方を撃退。
タイマン勝負となった。
魔法組は若干アイスラーたちが有利な状況だった。
やはり大人で、朝月に忍び込んでいただけあって、魔法の使い方がうまい。
能力は爆発系。戸浦と違って、火薬となるものから物質を生成し、爆破する魔法。
それを直接攻撃や目くらまし、逆に自分たちに勢いをつけるための爆破など、様々な使い方で攻撃してくる。
そこへ、アイスラーが普通に殴りや蹴りなどをしてくるので、回避するのが精一杯だ。
油断してアイスラーの記憶操作などにかかってしまうと、勝ち目はない。
アキラのほうはずっとアキラが優勢な形で進んでいる。
余力を残しているアキラに対し、全力の敵。もはや結果は見えていた。
それとは対称的に、凪沙たちはピンチを迎えていた。
どうにか凌いでいたが、ついに無防備になってしまった。
すかさずアイスラーが突っ込んでくる。
晴に殴りを一発。
「ゴホッ…」
なんとか二発目は避けたが、一発目はもろに当たってしまった。
「晴!」
そこへすかさず、爆発系魔法が晴を襲う。
煙で前は何も見えない。どうしようかと迷っているうちにアイスラーが今度は凪沙に向かって突っ込み、殴りを一発。
相手は大人の男、かたやこちらは中学女子。純粋な力勝負だと圧倒的な差があり、凪沙はなすすべなく、その場に倒れこんだ。
「…こっちからだな。」
アイスラーが凪沙を強引につかんで、無理やり目を開かせ、自分の目と合わせようとする。
「凪沙!」
その瞬間、煙の中から晴の叫び声と同時に、電流がアイスラーと凪沙の間を走り、2人は離された。
「凪沙、大丈夫か!」
晴が煙の中から姿を現し、凪沙の元へ向かう。
「ゴホッ、ゴホッ…。…大丈夫…ありがとう」
晴の肩を借りながら立ち上がる。
「凪沙。今こそアレ、使わねーとな。」
「…そうだね。もうちょっとだけ、回復するの待ってほしいんだけど…」
「…じゃ、俺とアキラさんで時間稼ぐから、ちょいここで待ってろ。」
「うん…ありがとう…!」
晴は攻撃を受けたとは思えないくらい普通に動いている。
しかし、顔には余裕はなく、かなりガマンしているのが凪沙にはわかった。
「…晴…」
アイスラーの相手はアキラが。爆発系魔法の使い手は晴が相手をしている。
それをじっと眺める凪沙。
(…あれ?)
凪沙が何か違和感を感じた。
(…なんだろ…うーん…)
気になったのは2人の動き。
攻撃の仕方は違うが、動き方が微妙にリンクしていた。
さらに、アイスラーが真っ直ぐ突っ込むときだけ、爆発系魔法の使い手のほうは動きが一瞬止まる。
(…もしかして…)
凪沙はそこから一つの結論を出した。
「…晴!休めた!ちょっとこっち来て!」
「え、いきなりは無理だよ!」
「…!晴、相手の攻撃も使い用だよ!」
などというナゾのアドバイスをした凪沙は戦場からかなり距離をとろうと、走り始めた。
「凪沙⁉︎」
晴は応戦しながら凪沙の言葉の意味を考える。
(使いよう?)
なんのことかわからないまま応戦していると、敵が爆発系の魔法を使ってきた。
避けようと後ろに跳んだが、爆風で、予想よりも後ろに着地した。
(…凪沙?)
凪沙の言ったことの意味がなんとなくわかりかけている。と言うより、出かかっている。
(…使いよう、凪沙は遠くに…。…爆風?)
少し考える。その間にも敵はこちらへ近づいている。
それを見て気づいた。
(⁉︎…なるほどな)
晴はその場で敵にたくさんの種類の基礎魔法をぶつける。
それを敵がよけてかわし、晴の3m前に現れたとき、爆発魔法を唱えた。
(ココ!)
晴がそれと同時に風系統の基本魔法、突風を発動した。
爆発と突風がぶつかり合い、激しい風をおこして晴に向かってくる。
それを待っていたかのように、晴が跳び上がった。
そのまま風に乗って、敵とのキョリをかなりあけた。
「凪沙!」
晴が凪沙のいるあたりで着地する。
敵が来るまでたっぷり2分ほどはありそうだ。
「晴。多分、あっちの爆発の人、アイスラーがいないと動けないんじゃないかな?」
「…つまり?」
「さっき見ててわかったんだけど、アイスラーと爆発の人、同じ動きをしてるの。全く一緒ってワケじゃないんだけど、基本の動き、例えば右に出るとか、左に出るとか…」
晴が凪沙の説明を静かに聞く。
「これって、ようするにアイスラーが操ってるってことじゃないのかな?」
凪沙の言ったことを晴は頭の中で整理する。
「…ふーん…そーゆことか。」
納得した晴はニヤリと笑った。
「凪沙。アレ、使うぞ!」
「え、今?」
「いや、使うのはあっち戻ってから。その話から予想するに、多分アイツはアイスラーが近くにいねーと動けない。つまり、ココには来れないから、充分準備してからな。」
晴が言ったのに少し遅れて、凪沙が頷いた。
アキラは苦戦していた。
アイスラーには流石に歯が立たないワケでもないが、不利だった。
しかし、どう言うわけか魔法使いのほうはさっきから動いていない。
それと同時に、アイスラーの動きが先ほどよりも、鋭敏になっている。
と、考え事をしているうちに足がお留守に。
思いっきり倒された。
「アキラ。お前が裏切って長いこと経ったが、全然変わってないね。」
アイスラーはアキラに顔を近づけて話す。
「あっちのガキのほうもなかなかやるようだけど、あれじゃ、勝てないね。甘い。大甘だよ。」
みぞおちに一発いれる。
アキラが唾を吐いて意識が朦朧とする中必死に打開策を考えている。
「アキラ。君は不愉快だ。」
アイスラーがアキラと目をバッチリ合わせ、ゆっくりと喋り始めた。
「でも、もうすぐ不愉快じゃなくなる…。また、私の元へ帰って来てくれるのだから…」
全く目を離すことなく、凝視。
アキラはさっきとはまた別の感じで朦朧としてきた。
「さ、後で一仕事、お願いするよ。」
一旦ここで目を離した。
ゆっくりと目を閉じる。
しばらくそのままでいた。が、ピクリと眉を動かした。
「…。確かに私が君たちのこと忘れて油断してたのも悪いが…。人の集中してるときにやって来ないでくれるかな?」
目を閉じたまま話すアイスラーの前には、息を切らした凪沙と晴が。
「…アイスラー。アンタの魔法は目にある。そうだよな?」
晴の質問に深く頷いた。そして、
「だから何か?」
「いや、それだけ聞ければ充分です。」
「…面倒だし、君たち2人もまとめてやります。」
やります。つまり記憶操作を行うということだ。
アイスラーがアゴをクイッと動かすと同時に、さきほどまで停止していた魔法使いが動き出した。
2人に近づいて来る。
「…凪沙。」
「大丈夫。」
2人は手をつないだ。
『UNISON!』
大きな声でコールすると同時に一気に魔力を解き放つ。
『Into The Light《光の中へ》!』
2人を激しい光が包む。
その光はだんだんと広がっていく。
やがて、辺り一体を全て包み込んだ。
『…解除!』
光が一気に弾け飛ぶように消える。
周りを見回すと、アイスラーも魔法使いも倒れたままピクリとも動かなかった。
「…成功したの?」
「あぁ。」
少し待っていると、アキラが起きた。
「あ、起きた。大丈夫ですか?」
「…。」
アキラは不思議そうな顔をしている。
「?どうかしましたか?」
「…いや、途中、すごく穏やかな気分になったような気がしまして…。柔らかい光に包まれているような…」
アキラがまだはっきりしない頭を振りながら話す。
それを聞いていた凪沙と晴は顔を見合わせて笑った。
2人が使った魔法、Into The Light《光の中へ》。
UNISONの中でもSランク、それも最も難しい部類に入る魔法の一つだ。
自分たちが敵とみなす全ての者には強力な攻撃となり、味方には安らかな光になる。
光に包まれるだけで効果が発揮され、敵は何が起こったのかわからないまま、意識が飛ぶ。
意識が回復してもそのあとしばらくの間は動けない。
最悪の場合は魔法を永遠に使えなくなったりするため、使用厳重魔法に指定されており、使える者は世界でみても、凪沙と晴だけだろう。
乱発は厳禁。充分な魔力、信頼、意志、力…たくさんのものが備わって初めて使用可能となる。
使用方法を間違えれば死に至ることだってありうる。
もちろん、凪沙も晴もそれは承知の上で使用した。それだけの自信があった。
しかし、流石に強力なだけあって、おそらく今日1日、下手すれば明日も魔法は使えないだろう。
アイスラーが目を覚ましたのは、王宮の中だった。王宮にいる1人の魔法師の魔法で拘束されているため、動くことが出来ない。
「目、覚めたか?」
晴が冷たく聞いた。
「…こんな…子どもにやられるなんて…。」
アイスラーは天井を、いや、その先にある何かを眺めているようだった。
「アンタに聞きたいことがある。」
「…答えない…と言ったら…?」
「死なないギリギリのトコで、まぁいろいろやるよ。」
「…君が言うと…冗談に聞こえない…ね…」
「冗談じゃないですから。で、話してくれますか?」
「…元から、話す予定…だったよ…」
「…じゃ、率直に聞きます。アンタを倒した。あっちの爆発魔法使う人の記憶操作は解けた。なのになんで朝月は元に戻らねーんだ?」
さっき、宇佐美から連絡があった。
敵が元に戻る気配は全くなく、アイスラーを倒したのにおかしいと。
「…朝月の人たちは…私を倒しても…戻らないよ…。確かに…記憶操作したのは私だが、…管理してるのは…別の人…」
「別の人?」
少しアイスラーが頷いた。
「…名前は、天野秀喜。この事件の黒幕…。記憶操作…というか、洗脳…はヤツのオハコだ…」
晴はこのとき、その天野秀喜が宇佐美が以前言っていた、この事件が解決したら話す人なのだろうと推測ができた。全てが繋がった。
「…その天野ってヤツを倒せば戻るのか?」
「…いや、天野は…今どこにいるかわからない…。」
「じゃあどーすんだよ?」
「おそらく…君達も行っただろう、中枢ビル…」
「え?あぁ。」
「…あの建物自体に細工がしてあって…、あのビルもろとも倒す…のが、唯一の方法だ…」
「わかった。ありがとう。」
晴はそう言って立ち上がった。
部屋を出ようとしたら呼び止めれらた。
「君、中結くん…だっけ…?朝月をこんな風にした私が言うのもどうかと思うけど…、君は英雄だね…。」
おそらく、これはアイスラーが本当に思っていること。
晴は何の反応を示すこともなく、部屋を後にした。
戦いはやはり、苦手です(笑)
さて、本当に
次こそ本当にラストです!
後日談を含めてあと2話。
全力で頑張ります!




