御伽噺
今回はカツエがいい役してますよー!
涼村はどうするんでしょうね⁇
結局涼村は次の日の朝、緑明の前には現れなかった。
宇佐美が緑明を見送る。
「じゃあまー、涼村さんのことは僕にまかせて、頑張って調査してきて。」
「あぁ…頼んだよ…。」
緑明はそう言ってヘリで旅立った。
宇佐美はその後も書類確認やら、活動報告やらで忙しく、ようやくひと段落ついた時にはもう夕方だった。
「王様。少し休憩成されますか⁇」
「そうしよかな。」
「では、今お茶を持って参ります。」
「頼むわ。」
使いが部屋から出て行った。
それから30秒ほどしたときだ。
コンコン
扉がノックされた。
「何か忘れたん⁇」
さっきの使いの者が帰ってきたのだと思い声をかけた。
「いえ、カツエです。」
「おっと、これは失礼。どーぞ入ってください。」
カツエが扉を開け、中に入ってきた。
「どーしたんですか⁇」
「いえ、少し…ね…涼村さんと中結くんについて話したいと思ってね…。」
カツエが宇佐美の前まで来た。
「立ち話もなんなんで、座ってください。」
と、イスを指し示した。
「では、失礼します。」
カツエが腰掛ける。カツエは現在王宮内で宇佐美の書類確認などの手伝いをしている。
「カツエさん。緑明先輩から何か話聞いてますか⁇」
「ええ。すべて聞きました。」
「そーですか…。もしかして、それ聞いて何か思うところあったから僕んトコに⁇」
「ええ、まぁ…。」
カツエが続けて言おうとしたとき、扉がノックされ、お茶がやって来た。
宇佐美とカツエの分が用意され、使いは部屋を出た。
「えっと、じゃあ、私の思ったこと話しますね。」
「はい。」
「…京介の話を聞いて思い出したことがあります。私がまだ小さい頃、よく祖母から聞いた話です。」
カツエが遠くを見るような目で話しだした。
「あるところに仲の良い男の子と女の子がいたそうです。2人は何をするときも一緒で、毎日遊んでいました。
ある日一緒に遊んでいるとき、急に戦争が起こり、それに巻き込まれました。
どうにか逃げようと必死にその場を離れようとした2人でしたが、途中、男の子の背中に弓矢がささり、その場に倒れて動かなくなってしまいました。女の子は泣き叫びながら必死に男の子の名を呼びますが返事もなく、ついには息が絶えました。
そんな現実を受け止められなかった女の子はウソだウソだと繰り返し、男の子を抱きしめ何度も名前を呼びました。
しかし、どうやっても息を吹き返すこともなく、ついにお墓に入る時が来てしまいました。
棺桶に入れられ、運ばれて行きます。女の子はそちらを見ようともせず、ずっとうつむいたままでした。
棺桶が埋める場所に到着し、いよいよ埋められるその時でした。女の子がポツリと最後に男の子の名前をつぶやいて、静かに涙を流しました。
どうして泣いてるの⁇
突然どこからか声がしました。しかも、知っている声が。女の子はまさかと思いつつも棺桶のほうを見ると、男の子が普通に起きて座っていました。
キセキが起きたのです。」
長い御伽噺を静かに宇佐美は聞いていた。カツエが少し間をおいて、再び話し始めた。
「このお話、単なる御伽噺じゃありません。アキラさんとやらが言っていた神秘の地。実はこの御伽噺で、男の子が目を覚ました場所がその神秘の地ではないか、という言い伝えがあります。私の言おうとしてること、これでわかりましたよね⁇きっと中結くんは生きてます。この男の子のように何かの拍子でふとまた姿を現すかもしれません。…いや、必ず現します。」
最後は強く言い切った。
「…なんで僕にその話を…⁇」
「…。これは私の勝手なお願いです。中結くんの捜索をこれからも続けてください。私のためなのではなく、京介のためであり、宇佐美さんのためであり、朝月のためであり、何より…」
なぜかカツエは扉の方を向いて言った。
「涼村さんのために。」
ー翌日朝ー
宇佐美はここ最近疲れているからか、少し長く眠ってしまっていた。
いつも通り、Tシャツとズボンを履き、食堂へ向かう。
「あ、宇佐美さん。おはようございます。」
食堂の扉を開けると、約1週間ぶりに見る顔が。
「…うん!おはよう!」
宇佐美が笑って返した。
「じゃあ、宇佐美さんも来たんで、私の話、聞いてもらえますか⁇」
涼村はその場にいる宇佐美とカツエと使用人に声をかける。全員が頷いた。
「えっと、まずご迷惑おかけしました。この1週間は本当に悲しすぎて、逆に感情のない毎日を送っていた気がします。今も完璧に立ち直ったわけではありません。」
涼村が全員の顔を一人一人みながら話す。
「でも、緑明先生が私の部屋に来て話をしてくれたり、調査のために旅に出られたり、昨日実は、カツエさんの御伽噺を聞いちゃってて…(笑)あのあと一晩考えて、もし中結が生きてるのならそれほど嬉しいことはないですけど、例え死んでしまっていたとしても、私がしっかり朝月を取り戻すために、中結の分まで頑張らないとって思いました。だから決めたんです。ー。私、また今日から復帰したいです!ここにいるみなさんのために。緑明先生のために。朝月のために。そして、中結…。いや、晴のために。」
涼村は中結のことを初めて晴と呼んだ。
「涼村さん」
宇佐美が話しかける。
「それが、涼村さんの決意やな⁇」
「はい。もう、これだけのことがあった後ですから揺るぎません。」
「…よっしゃ!待ってたで。お帰り!」
宇佐美が涼村に笑い掛けた。
「…!ただいま!」
いかがでしたか⁇
いよいよ次は新たな旅の始まりです!
涼村が中結を晴と呼んだのは、何か大きく心の持ちようが変わったのでは⁇
では、また次の機会に!




