再び、会う
ぎちぎちとぎこちない動きをしながら、橋姫が背後を振り返った。
三人の目線も橋姫の背後へと動く。
その視線に気づいているのかいないのか、二人の足音が止む気配はなかった。
「誰、ぞ?」
低く低く、おぞましい声で、橋姫は問うた。
足音はもうすぐそこまで来ていた。煙々羅の霧が少しずつ人影を写し始める。
一人は背の高い男のシルエット。
もう一人はさほど高くない、しかし同じく男のようだ。
橋姫が首をぎしりと動かし、袖を振った。
その瞬間、霧がふわりと晴れた。
そこにいたのは。
「嘘、だろ。」
龍風が驚いて呟く。そのせいで刀が霧散した。
「なんで、ここに・・・」
雀景も唖然として口を開けていた。
唯一、虎瞬だけがにこりと笑顔だ。
「無理聞いてくれてありがとう。玄清。」
背の高い男、玄清がむすっとして答えた。
「本当に無理な話だったな。」
「でも、そのお陰でこうして来て頂けた。感謝するよ。」
ちらりと玄清の隣の人間を見て、深々と頭を下げた。
「今宵は現世に起こし頂き、恐悦至極に御座います。藤原済時様。」
そこにいたのは、光洋であった。
だがその顔はまったくの別人の顔。悲しみを湛えた、優しげな表情を浮かべ、こくりと頷いた。
その目は、無惨に変化した橋姫を見つめながら。
一歩前に出た光洋、いや、済時を、玄清が制した。
「済時様。あまり前へ出られては危のう御座います。」
やんわりと首を振る。その仕草はとても優美で、いかにも雅な貴族の感じがした。
「・・・よいのだ。」
顔を歪め、一筋の涙を流しながら橋姫を見つめていた。
「徳子殿・・・」
その声に、橋姫がぶるりと震えた。
橋姫に変化が生じた。
崩れかけていた顔からびちゃびちゃとどす黒い肉塊が落ちた。そこから覗いたのは、先ほどまであった美しい橋姫の顔。
長くぬめっていた髪の毛がずるりと落ち、そこから再び美しい艶やかな黒髪が揺れていた。同時に、角もぽろりと落ちた。
まるで生まれ変わったように、美しい橋姫がそこに立っていた。
その目は今までにない、優しい光が灯っていた。
もう一度ぶるりと体を震わせ、その目から涙を流した。
「済、時・・・様・・・?」
済時は深い悲哀の色を浮かべ、しかし、驚くほど優しく微笑んだ。




