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真実の語り部

今にも飛び掛ろうとした橋姫の動きが止まった。驚愕で目を見開いている。

「な、何を・・・」

「あの時代、仕方が無かった。あれは、心から望んだことじゃなかったんだよ。」

「う・・・五月蝿いっ! 五月蝿い五月蝿い五月蝿い!」

大きく頭を振りながら否定している。何がなんだかわからず、龍風と雀景は虎瞬を見つめた。

「どういう、ことだ?」

「いったい何があった?」

穏やかに、そしてどこか寂しく、微笑んだ。

「これが、橋姫が『虎瞬』を封印し、殺そうとした理由だよ。そうさね・・・もうじきわかる。」

ごう、と殺気が混じった強風が吹いた。見れば、橋姫が恐ろしい鬼の形相でこちらを睨んでいる。

 二本の角に金色に光る鬼の目。爪は長く伸び、簡単に人を引き裂けそうなほど鋭かった。

「生成り・・・生きたまま鬼と成り、いや、鬼となる前の人間。人でも鬼でもない。歴史上にも数えるほどしかいないほど貴重で、悲しい者たち。橋姫は元々人間だったんだ。あのばらばらの長さの牙は、生成りの特徴だ。」

虎瞬の言葉に、二人は頷いた。

「そりゃあ、歌舞伎の演目になるほど有名な話だからな。」

「だけど、あなたのせいじゃないっていうのは?」

取り乱している橋姫を悲しそうに見つめながら、言った。

「貴船神社の丑の刻参り。話は知ってるよね?」

「ああ、あれは有名だったな。ちょうど俺たちもその時代ら辺にいたし。」

「あのときはかなり短い期間で転生させられてたからな。」

貴船神社の丑の刻参り。とある司の長男が女との約束を破って別の女と結婚した。それを怒った女は、縁結び神社で有名な貴船神社で呪いの儀式、丑の刻参りを行った。

呪いを行った後、宇治川に身を浸して恨みの念を高めた。それを七日七晩行い、最後の晩、女は生きたまま鬼と化して男を食い殺した。

その怨念を沈める為に、女は宇治の橋姫という橋神として祭られたのだ。

 虎瞬が頷いた。が、すぐに首を振った。

「そう。それが一般的に言われている、有名な話、『鉄輪』だ。だけど、本当は違うんだ。」

「違う? 何が違うんだ?」

龍風が首を傾げた。雀景も眉根を寄せている。

「一応、俺たちが話を聞いたとき、年代的にかなり近かった。後世になって話が大きく変わるなんてなことはよくあるが、俺らは当時そこにいたんだぜ? 現に・・・」

ちらと虎瞬に視線を移した。深く頷く。

「うん、わかってる。俺が人柱になったのも、そのときだったからね。」

ありありと思い出しているのか、龍風が下唇を強く噛んだ。

「だけどね、もし、元から違ったら?」

ぴたりと二人が動きを止めた。

「元から、だって?」

「あの話は・・・意図的に変えられていた。あれは――」

そこまで言って、はっと振り返った。

 鬼と化した橋姫が、ぎろりと三人を睨み上げていた。

「もう、許さぬ。うぬら、全て消してくれようぞ。」

かあっと開いた口は、自らの血で真っ赤になっていた。目も同じように真っ赤に光っている。

「あ、まずい。来るよ。」

暢気にそれだけ言うと、右手から虎の鋭い爪が伸びた。

 それにならって二人も力を高める。

 大きく跳躍した直後、三人がいたところに波が襲い掛かった。


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