ファンタジー化した現実を、俺の設定で攻略する
俺の名前は江戸川乱暴、17歳。
今、俺はアルバイトの面接用に履歴書を書いている――はずだった。
「……ああ、つい癖でまたやっちまった」
気づけば、趣味のWeb小説の設定を履歴書に書き込んでいた。
ジャンルは異世界ファンタジー。現代に突如現れる異世界。
スキルの発現条件、世界を戻すためのルール、ゲームオーバーの定義……
俺の脳内は完全に“そっち側”に切り替わっていた。
ペンが止まらない。
特技欄には「次元干渉(Dimensional Override)」、
資格欄には「世界改変スキル保持者(仮)」、
志望動機には「現代社会に異世界の知見を還元したい」――
気づけば、履歴書のスキル欄がとんでもないことになっていた。
「……ま、いっか。どうせバイトだし」
乱暴はそう呟いて、最後の一文を書き加える。
“スキル:次元干渉(Dimensional Override)”
ペン先が紙を離れた瞬間、どこかで“何か”が軋む音がした。
遥か上位の次元に存在する、高次元生命体たちの会話。
「地球人は我々よりも次元が低い。あちらから我々を認識することはできまい」
「油断は禁物です。次元を超えて干渉する手段がないとは限りません」
「ほう? だが、どうやって我々に接触するというのだ」
「地球人は“履歴書”という媒体に、自らの能力を記録する文化を持っています」
「記録媒体……? それが、我々の次元に干渉する“鍵”だと?」
「可能性は否定できません。先ほど観測された波動も、ある個体が“スキル”を記述した瞬間に発生しました」
「……興味深い。ならば、その記録を抽出しよう。地球人の“履歴書”に記された能力が、我々にとって脅威となるか――確かめる価値はある」
「了解。対象を選定します。名前は……江戸川乱暴」
彼の書いた“設定”が、現実に顕現する。
異世界の門が開かれたのは、ちょうどその日の午後。
面接会場の扉が開いた瞬間だった。
それは、何の前触れもなく始まった。
空が裂けた。
まるでガラスを割るような音とともに、渋谷の上空に黒い亀裂が走る。
そこから這い出てきたのは、現実ではありえない“何か”だった。
牙を剥き、触手を蠢かせ、目がいくつもある異形の魔物。
その数、数十体。いや、もっとかもしれない。
人々の悲鳴が、街に響き渡る。
「う、うわあああああああああ」
魔物の爪が振るわれ、逃げ惑う人々が次々と地に伏す。
車はひしゃげ、ビルのガラスが砕け、街は地獄と化した。
誰もが絶望し、ただ命を守ることだけに必死だった。
江戸川乱暴は、履歴書を片手に、瓦礫の舞う交差点のど真ん中に立っていた。
周囲では、魔物の咆哮と人々の断末魔が交錯し、世界が崩れ落ちていく音が響いていた。
だが、彼の足元だけが、まるで別の法則に守られているかのように静かだった。
履歴書の紙面が、ふわりと風に舞い上がる。
その瞬間、紙の文字が淡く光り出した。
「特技:次元干渉」「スキル:因果逆転」「資格:世界改変適性」――
記された文字が、まるで命を得たかのように、空中に浮かび上がる。
「……マジかよ。これ、俺が書いたやつ……」
彼の胸元で、何かが脈打った。
心臓の鼓動と同調するように、空間が波打つ。
視界の端が歪み、色彩が反転し、音が遠のいていく。
「スキルコード、認証完了。対象:江戸川乱暴。
認識階層、三次元を超越。スキル実行権限、付与」
無機質な声が、彼の脳内に直接響いた。
「……うわ、なんか始まったぞ。これ、俺の設定そのまんまじゃん」
彼の足元に、幾何学模様の魔法陣が展開される。
赤、青、金、黒――複雑に絡み合う光の帯が、地面を這い、空へと伸びていく。
まるでこの世界そのものに、彼の“設定”が上書きされていくかのように。
「よし……じゃあ、試してみるか」
彼は履歴書を掲げ、静かに呟いた。
「“スキル:次元干渉(Dimensional Override)”――発動」
その言葉と同時に、空気が爆ぜた。
魔物の一体が、突如として悲鳴を上げる間もなく、空中で“解体”されていく。
肉体が、骨が、存在そのものが、まるで設計図を逆再生するように分解され、
光の粒となって消えた。
「……うわ、やっべ。これ、マジで俺のスキルだ」
次の瞬間、乱暴の背後にいた別の魔物が飛びかかる。
だが彼は振り返りもせず、ただ一言。
「“スキル:因果逆転(Causal Reversal)”」
魔物の動きが止まり、次の瞬間、自らの爪で自分の頭を貫いた。
因果が逆転し、「攻撃した結果」が「自分を傷つける原因」となったのだ。
「……ふぅ。やっぱり、設定盛りすぎたかもな」
彼の周囲には、もはや誰も近づけない。
魔物たちは本能で理解した。
この少年は、“この世界の理”を超えている。
「次、いってみようか。“スキル:世界境界の再定義”――」
空が裂ける。
今度は、魔物たちの世界が、逆に侵食されていく番だった。
「うわぁああっ!やめろ!こんなスキルを実体化させたら、我々の世界まで崩壊する!」
高次元生命体たちは慌てて、江戸川乱暴のスキルを封じようとした。
だが、時すでに遅し。彼のスキルによって、それは不可能になっていた。
「……ダメです。もはや、元には戻りません」
重く沈んだ声が、空間に響く。
「こうなっては、彼が書き遺した“世界を戻すためのルール”を、クリアしてもらうしかないのです」
「な、なんだと……!? ならば、我々が全力で彼をサポートすればいい! それで解決するんだろう!」
その瞬間だった。
静寂を切り裂くように、別の声が告げる。
「……だが、忘れるな」
「もし彼が——ゲームオーバーすれば、その時は我々もろとも、この世界は終わる」
空気が凍りついた。
それは、希望の裏に潜む絶望の宣告だった。
そして、世界は静かにその時を迎えた。
江戸川乱暴は、最後のページにペンを走らせる。
「“スキル:物語の終焉(End of Narrative)”」
その瞬間、空の裂け目が閉じ、崩壊しかけた次元が静かに収束していく。
魔物たちは消え、高次元の存在たちは言葉を失った。
ただ一人、少年だけが、静かに立っていた。
「……これで、いいんだよな」
彼の手に握られていた履歴書は、白紙に戻っていた。
スキルも、記録も、すべてが消え去った。
だが、誰もが知っていた。
彼が再び“書けば”、世界はまた動き出すのだと。
——そして、彼は微笑んだ。
「次の物語は、もう少し平和にしようかな」
空は晴れ渡り、風が吹いた。
新たな物語の始まりを告げるように。
この小説は、Xでネタから発生した内容になります。
プロットを書いて、要所要所の台詞を書いて、AIに整えてもらいオチを付けて短編にしてみました。
気が向いたら長編にしようと思います。




