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追放された魔導保全官、俺がいなくなった場所から次々壊れていくんだが  作者: 空条ライド


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第6話 直さない。それが条件だ

 王都は、静かすぎた。


 以前の喧騒はなく、人の流れもまばら。

 結界がまだ持っている証拠でもあり、

 同時に――限界が近い証拠でもある。


「……ひどい」


 エリスが、思わず呟いた。


 魔導結界の内側で、魔力が澱のように滞留している。

 目に見えないはずの歪みが、皮膚にまとわりつく感覚。


「まだ“壊れてない”だけだ」


 俺は、歩きながら答えた。


「つまり……」


「致命傷を負って、歩いてる状態だな」


 中央魔導局の正門前には、既に人だかりができていた。

 役人、技師、貴族。

 全員が、こちらを見る。


 期待と、不安と、

 そして――責任転嫁の視線。


 会議室に通されると、すぐに話が始まった。


「状況は説明した通りだ」


 課長が、疲れた顔で言う。


「結界、魔導炉、水路。

 どれも部分修理はしているが、安定しない」


「当然です」


 俺は、椅子に座らず答えた。


「“部分修理”してるから」


 一同が、ざわつく。


「なにを言っている?」


「壊れた場所を直すほど、

 他が壊れやすくなる」


「馬鹿な……!」


 俺は、結界構造図を机に広げた。


「王都は、溜めすぎだ」


 指で、中心部を叩く。


「魔力も、責任も、成果も。

 全部ここに集めて、逃がさない」


「それが、中央だ」


「だから壊れる」


 沈黙。


 誰も、反論できない。


「……では、どうする?」


 老魔導士が、慎重に聞いた。


「直さない」


 再び、ざわめき。


「ふざけているのか!」


「本気だ」


 俺は、はっきり言った。


「まず、壊れる前提を捨てる。

 次に、逃がす道を作る」


「それは、結界を“弱く”することだ!」


「違う。

 生き延びさせる」


 エリスが、一歩前に出た。


「今の王都は、

 強く見せようとして、窒息してます」


 場が、静まる。


「……条件だ」


 俺は、視線を巡らせた。


「今から三日間。

 王都の魔導インフラに関する決定権は、俺が持つ」


「三日!?」


「一つでも口出しが入ったら、即帰る」


「……!」


「成果報告は、現場ログをそのまま残す。

 編集、不可」


 課長は、唇を噛みしめた。


「……それで、本当に助かるのか」


 俺は、即答した。


「助かる“可能性”が生まれる」


 それ以上は、言わない。


 万能じゃない。

 だが、やることは分かっている。


 会議が終わり、廊下に出る。


「……緊張しました」


 エリスが、小さく息を吐いた。


「よく言った」


「本当のことですから」


 俺は、王都の結界を見上げた。


「最初にやるのは、修理じゃない」


「じゃあ、何を?」


「止める」


「……何を?」


「王都の“頑張りすぎ”を」


 遠くで、警告灯が一つ、消えた。

 負荷が、逃げ始めている。


 まだ、始まったばかりだ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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