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追放された魔導保全官、俺がいなくなった場所から次々壊れていくんだが  作者: 空条ライド


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第3話 壊れるはずだった結界は、壊れなかった

 監査官たちは、役所の会議室を占拠した。


「結界の再点検を行う」

「こちらで負荷試験を実施する」


 宣言は一方的だった。


「許可は?」


 エリスが食い下がると、監査官の一人が冷たく言い放つ。


「王都の権限だ。

 辺境の技師見習いに拒否権はない」


 ――来たな。


 俺は内心で、そう思っただけだった。


「……結界に負荷をかけるのは危険だ」


「危険?

 報告では“完璧に安定している”はずだろう?」


 若い監査官が、にやりと笑う。


「もし壊れるなら、それは管理不行き届きだ」


 エリスがこちらを見る。

 止めてほしい、という目。


 俺は、首を横に振った。


「好きにすればいい」


「カイさん!?」


「壊れる前提でやるなら、止めても意味がない」


 その言葉に、監査官たちは眉をひそめた。


「……ずいぶんと投げやりだな」


「仕事はした。

 あとは、そっちの責任だ」


 それだけ言って、俺は席を立った。


 結界制御塔の前。

 監査官たちは、持ち込んだ魔導装置を結界に接続していた。


「通常の三倍の負荷をかける」


「この条件で耐えられなければ、

 “たまたま事故が起きていなかった”だけだ」


 エリスが唇を噛む。


「……あれ、結界の逃げ道塞いでます」


「わざとだな」


 俺は空を見上げた。


(……七分)


 本来なら、五分も持たない設定だ。

 だが今は違う。


「開始する!」


 魔導装置が唸りを上げ、結界が淡く光った。


 一分。

 二分。


 空気が、わずかに重くなる。


「……反応が、安定しすぎてるな」


 三分経過。

 監査官の顔から、余裕が消えた。


「おかしい……負荷値は確実に上がっているのに」


 四分。

 五分。


 結界は、揺れない。


 軋みも、悲鳴も、ない。


「……どういうことだ?」


 六分。


 監査官の一人が、装置の表示を叩いた。


「逃げ場がないはずなのに、魔力が循環している……?」


 エリスが、静かに呟く。


「……流してる」


「何を?」


「負荷を。

 溜めないで、街全体に分散させてる」


 七分。


 俺は、ぽつりと言った。


「だから壊れない」


 全員の視線が、こちらを向いた。


「……どういう意味だ?」


「結界は、壁じゃない。

 流れだ」


「受け止めるから壊れる。

 逃がせば、壊れない」


 監査官の顔が、みるみる青くなる。


「そ、そんな設計……

 中央の理論では――」


「中央は、壊れてから直す前提だからな」


 八分。


 負荷試験装置が、警告音を上げた。


「……装置が限界です!」


「停止しろ!」


 慌てて装置を切り離すと、結界は何事もなかったように静まった。


 沈黙。


 風の音だけが、通り抜ける。


「……つまり」


 震える声で、監査官が言う。


「我々は……

 壊れないものを、壊そうとしていた?」


「そうなるな」


 エリスが、はっきりと言った。


「それ、報告書に書きますか?」


 監査官たちは、答えなかった。


 その夜。


 役所に戻ると、王都からの緊急通信が届いていた。


「……中央結界区画で、魔導事故発生」


「被害、拡大中……?」


 エリスが、息を呑む。


 俺は、目を閉じた。


(……始まったな)


 俺がいなくなった場所から、壊れ始める。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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