第28話 評議会が責任を思い出す時
評議会からの正式連絡は、境界が三度目に揺れた後だった。
「……遅いですね」
エリスが、通信石を見ながら言う。
「揺れが、数字になったからだ」
俺は答える。
「責任は、数字が出ないと動かない」
それが、世界規模の組織だ。
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再招集された評議会は、前回よりも空気が重かった。
各代表の前には、報告書が積まれている。
被害規模、発生頻度、拡散予測。
――全部、現実だ。
「境界異常は、拡大傾向にある」
議長が、低い声で言う。
「だが、破裂は回避されている」
「これは……」
「境界開放の結果です」
ユイが、はっきりと答えた。
場が静まる。
「開放は、評議会の正式決定ではない」
誰かが言う。
「ですが、結果は出ています」
ユイは一歩も引かない。
「集中していた歪みは拡散」
「致命的崩壊は回避」
「現在は、局地的不安定のみ」
それは、成功例だった。
**完全ではないが、機能している。**
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「……問題は、責任だ」
南方代表が、重々しく口を開く。
「誰が、この判断を下したのか」
視線が、集まる。
俺は、立ち上がった。
「俺だ」
一瞬、空気が止まる。
「評議会が決めなかった」
「だから、現場が決めた」
「越権だぞ!」
「はい」
即答した。
「でも、世界は壊れていません」
沈黙。
反論できない沈黙だ。
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「……では、今後はどうする」
議長が、疲れた声で聞く。
「簡単です」
俺は、境界図を指す。
「評議会は“管理”をやめる」
「境界を一箇所に集めない」
「責任を、分散する」
「それは……権限の縮小だぞ」
「ええ」
頷く。
「だから、機能します」
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ユイが、続ける。
「境界監視官制度は、廃止してください」
ざわめき。
「代わりに、各地に観測者を」
「一人に集めない」
彼女は、一瞬だけ言葉を詰まらせた。
「……私が、その証明です」
評議会は、沈黙した。
それは、理解の沈黙だった。
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「……認めよう」
議長が、ゆっくりと頷く。
「我々は、“溜めすぎた”」
その言葉が出た瞬間、
この会議は、初めて意味を持った。
「評議会は、方針を転換する」
「境界は、開放状態を前提に再設計」
「監視権限を、各地域へ委譲」
拍手は、ない。
だが、誰も反対しなかった。
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会議後。
「……責任を、降ろしましたね」
エリスが言う。
「戻しただけだ」
俺は答える。
「本来、持つべき場所へ」
ユイが、静かに息を吐いた。
「……私、もう必要ありませんね」
「必要だ」
俺は、否定する。
「ただし、“一人”としてじゃない」
彼女は、少しだけ目を伏せて、笑った。
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境界管理領域に戻ると、空気が軽かった。
完全ではない。
だが、重苦しさは消えている。
「……世界、ちゃんと揺れてますね」
エリスが、冗談めかして言う。
「揺れない世界は、長持ちしない」
俺は、境界を見た。
今度は、恐ろしくない。
世界はようやく――
**自分でバランスを取ろうとしている。**
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