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追放された魔導保全官、俺がいなくなった場所から次々壊れていくんだが  作者: 空条ライド


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第21話 英雄がいなくても、勝った

 朝日が昇るころ、北方戦線は静まり返っていた。


 血の匂い。

 折れた槍。

 崩れた防壁。


 そして――

 立っている兵たち。


「……本当に、

 退けたんだな」


 誰かが、信じられないように呟いた。


 英雄の一撃はない。

 奇跡的な逆転もない。


 ただ、

 耐えて、考えて、動いた結果。


 城下町では、簡素な集会が開かれていた。


 勝利を祝うためではない。

 報告のためだ。


「今回の戦闘で、

 我々は北方を守り切った」


 壇上に立ったのは、

 英雄管理官ではなく――

 一人の将校だった。


「犠牲は出た。

 だが、全滅は避けられた」


 数字が、淡々と読み上げられる。


 人々は、黙って聞いた。


 英雄の物語を聞く顔じゃない。

 現実を受け取る顔だった。


 その後、レオンが前に出た。


 拍手は、ない。


 それでいい。


「……俺は、

 英雄として戦っていない」


 彼は、そう言った。


「ただの一人の兵士として、

 指示を出した」


「それで、

 この国は勝った」


 ざわめきが、広がる。


 誰かが、声を上げる。


「……じゃあ、

 英雄って、何だったんだ?」


 その問いに、

 レオンは答えなかった。


 代わりに――

 俺が答えた。


「英雄は、

 結果です」


 人々の視線が、集まる。


「戦ったあとに、

 誰かを象徴として語る」


「最初から、

 背負わせるものじゃない」


 静かな言葉だったが、

 深く刺さった。


「この国は、

 ずっと逆をやっていた」


「だから、

 一人が壊れかけた」


 沈黙。


 やがて、一人の老人が、

 杖をついて立ち上がる。


「……ワシは、

 楽だった」


 震える声。


「英雄様がいれば、

 考えなくてよかった」


「だが……

 昨日は、考えた」


 人々が、頷く。


「怖かった。

 だが――

 生きている実感があった」


 それは、

 どんな勝利宣言より重かった。


 その日の夕方。


 王城では、

 制度改定の草案が出された。


英雄称号の凍結


指揮権の分散


自警団・軍の再編


反対は、多い。


 だが、

 もう「元に戻す」選択肢はない。


 城壁の上。


「……終わった、のか」


 レオンが、空を見上げる。


「一章分はな」


 俺は、そう答えた。


「英雄を降りて、

 怖くなったか?」


「……少し」


 彼は、正直に言った。


「でも――

 初めて、

 明日を考えられる」


 それで十分だ。


 夜。


 城下町では、

 小さな灯りが点いていた。


 英雄の像は、

 そのまま立っている。


 だが、

 誰も祈っていない。


 人々は、

 隣の人と話している。


 それが、

 この国の新しい強さだった。


 出立の準備をしながら、

 エリスが言った。


「……また、

 救っちゃいましたね」


「救ってない」


 俺は、首を振る。


「手放させただけだ」


 それが、

 俺の仕事だ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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