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追放された魔導保全官、俺がいなくなった場所から次々壊れていくんだが  作者: 空条ライド


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第16話 英雄がいる国は、止まらない

 英雄国家グロリアスの城門は、開きっぱなしだった。


「……閉めないんですね」


 エリスが、城壁を見上げて言う。


「閉める必要がないからだ」


 俺は、城門の向こうを見た。


 警備兵は多い。

 装備も整っている。

 だが、どこか――待っている。


「英雄様がいるから、ですか」


「ああ」


 それが、この国の癖だ。


 城内は、忙しそうだった。


 使者が走り、伝令が声を張り上げる。

 作戦図が次々に更新され、会議が重なっている。


 だが、決定は出ない。


「……英雄様の判断待ちだ」


 その言葉を、何度聞いただろう。


「現英雄レオンは、どこだ」


 案内役の官僚が、少し誇らしげに言う。


「英雄様は、北方警戒線に」


「現在の状況は?」


「魔物群、増加傾向。

 ですが――英雄様が出れば問題ありません」


 問題がないなら、

 なぜ誰も安心していない?


 北方警戒線。


 そこにいた英雄レオンは、

 想像よりずっと若かった。


 鎧は傷だらけ。

 剣も、手入れは完璧だが使い込まれている。


 立ち姿は、まさに英雄。


 ――ただし。


(……休んでないな)


 目の奥が、沈んでいる。


「あなたが、魔導保全官の」


「カイだ」


 名乗ると、彼は少しだけ肩の力を抜いた。


「……来てくれて、助かります」


 その一言で、分かった。


 この人は、

 強いが、限界だ。


「状況を教えてください」


 エリスが、地図を広げる。


「魔物は、ここ数日で増えた。

 まだ大規模侵攻じゃない」


「なら、出ない?」


 俺が聞くと、

 レオンは一瞬、言葉に詰まった。


「……出れば、勝てる」


「でも?」


「……その後が、怖い」


 正直な答えだった。


「一度出れば、

 “なぜ次は出ない”と言われる」


「出なければ、

 “英雄が怠けている”と言われる」


 彼は、苦笑した。


「だから……

 今は、様子を見る」


 それは、慎重さではない。


 疲労だ。


 城に戻る途中、

 エリスが小さく言った。


「……あの人、

 聖女リリアと似てません?」


「ああ」


「周りが、

 全部背負わせてる」


 違いは一つだけだ。


「この国は、

 英雄が壊れるまで止まらない」


 聖護国家は、

 聖女が声を上げた。


 だが、ここでは――


「英雄は、

 声を上げられない」


 なぜなら。


「英雄が弱音を吐いた瞬間、

 物語が壊れるからだ」


 その夜。


 王城で緊急会議が開かれた。


「英雄様は、

 まだ出るべきではない」


「だが、国境の不安は高まっている」


「英雄が出れば、一日で終わる話だ」


 全員が、同じ結論を見ている。


 ただ一人を除いて。


「……質問があります」


 俺は、手を挙げた。


「英雄が倒れたら、

 次は誰が出ます?」


 沈黙。


「英雄が判断を誤ったら、

 誰が止めます?」


 さらに沈黙。


「英雄がいなかったら、

 この国は――

 どう戦いますか?」


 誰も、答えなかった。


 それが、この国の答えだ。


 会議後。


 レオンは、城壁の上で夜風を浴びていた。


「……俺がいなくなったら、

 この国は終わるんでしょうか」


 俺は、即答しなかった。


 代わりに、言った。


「この国は、

 あなたを終わらせる構造です」


 彼は、目を見開いた。


「だから――」


 俺は、続ける。


「英雄を、

 減らします」


「……え?」


「あなたを、

 英雄から降ろす準備をします」


 彼は、言葉を失った。


 恐怖と、

 わずかな安堵が混じった顔。


「それは……

 国を、壊すことじゃ」


「いいえ」


 俺は、夜空を見上げた。


「国を、

 止めるだけです」


 遠くで、魔物の咆哮が響いた。


 英雄国家は、

 まだ止まらない。


 だが――

 止める理由は、揃った。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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