第八話 遠方からの来訪者
この日、ティロス王国の政治的な中心であり「心臓」と呼ばれる王都――クロオスクに、遠洋から来た異国の二人の貴賓が到着した。新生の日出する国の内閣官僚である陸軍大臣村上幸と、海軍大臣元清川だ。
初代天皇である秋篠宮優雪の命を受け、後継ティロス王位に就いたロルスと海上貿易安全保障条約を締結するため、二人の若き俊英は千里の遠航に挑戦。祖国のまばゆい黄金色の海岸線を離れ、使節団を率いて出発した。
同盟国「ティロス」への誠意を示し、長年途絶えしていた関係を修復するため、今回の久しぶりの訪問に、彼らは「ティロス」への豊富な贈り物を三隻の貿易船の船倉いっぱいに積んだ。
天皇が儀仗隊を率いて見送る中、元清川と村上幸は依都港で、天皇に付き添って来た妻――李敏と月宮愛と別れた。糸を引き裂くように、切ない情念が心の湖に揺らめいていたが、蚊に刺されるような酸楚を我慢し、心に湧き上がる小さな波紋を払いのけなければならなかった。
腕の中の儚い佳人の眼頬の涙を拭い去、李敏と別れた後、元清川は振り返り、妻の月宮愛と笑顔で話す村上幸を見た。少し首を垂れてため息をつき、横を向いて近づいてくる林文と木村洋介を凝視した後、手を振って喜んで二人を抱きしめた。
彼ら四人は、皇族の末裔である秋篠宮優雪を筆頭に、国の再編と体制改変を手伝い、前例のない歴史を創造した。また、参謀として彼女を助け、潮のように押し寄せる政敵を討伐した。
秋篠宮優雪が日出する国の初代女性天皇になった後、すぐに元清川と村上幸ら少数の側近重臣に、内閣組織の崇高な使命を与えた。
外務大臣を担当める林文と、文部大臣を担当める木村洋介との会話を終えた後、元清川は強引に村上幸と月宮愛の不適切な愛情表現の場面に巻き込み、村上幸の手を引いて心配そうに港に着いた「ヤマト号」戦艦に乗り込んだ。
数隻の護衛艦からなる海上貿易船団は、プトラ大洋を横断した。途中、「絹の国」が悪意を持って他国の海域に追放した、悪事を働く海賊団を討伐し、さらに赤道で海難を祓う祓禊の祭祀を行った。
船団はついに、半年がかりの晴れた夏の日に、カモメが枝をくわえて描く華やかな海図を眺め、ついに再び東海岸半島のなじみの土地に上陸した。
船乗りに指示を出し、ティロス王国から派遣された外事長のロマーノの協力を得て、船倉に積まれたロルス七世国王への献上品を、一つ一つ丁寧に海港近くの倉庫へ運搬させた。
元清川と村上幸は、空に続く海岸線を沿って静かに散歩し、海風が吹き抜け、波が打ち寄せる爽やかな海の匂いを感じながら、地元の人々に熱心な挨拶を送った。
浜辺に立ち止まり、目を閉じて海浪の轟きを聴くと、湿った霧がほとんど音もなく耳に触れた。その時、ちょうど波が砕けて輝く飛沫が、陽光の下でノロノロと彼らの靴先に跳ね散った。互いに顔を見合わせて笑うと、子供の頃、父に連れられてここを訪れた記憶が蘇った。
錦簇とした雲海を駆け抜ける二つの稲妻のような疾い影、黒鳶の爪が雲を引き裂く雄大な姿、そしてその後を追う白頭鷲が放つ、九霄を揺るがす怒号――それらを見た瞬間、二人の堅い表情に自然と緊張の色が浮かんだ。同じ鷹科の鳥が、果てしない蒼穹の制空権を巡って、息を呑むような激闘を繰り広げている。
村上幸は握りしめた手を放し、冷たい汗に濡れた掌紋の下に、まるで無数の細い川が描かれたようだと感じた。
「あの姿、俺らが初めて会った時の場面に似てない?」
言い終わるや否や、元清川のほぐれた眉を見て、村上幸の口角が高く上がった。突然元清川の肩に手を置き、二人は空に向かって手を広げ、低い音と共に掌を打ち合わせた。その後、元清川は唇を噛みしめて笑い、首を垂れて赤くなった掌を見た、指の痺れを振り払った。そして横目で村上幸を睨みつけた。
「なんで毎次ハイタッチする時、そんなに力を入れるんだ?」
「陸軍出身だからさ。」
村上幸は腰をかがめて地面から平らな石を拾い、身を低くして荒い波の海面に投げた。その石は電流を帯びた彗星のように波を突き破り、七つの水環を立ててから静かに沈んだ。
「陸軍は国の柱であり、国民の安寧を守る堅い国防力だ。だからこそ、疾走如火の気概と、天崩地裂前でも動かぬ広い胸を持たなければならない。」
言い終わると、元清川のぼうっとした顔を見て、村上幸は得意そうに笑った。しかし笑い声がまだ海風に揺れているうちに、背後から元清川の勢いのこもった重いパンチが飛んできた。村上幸が前に傾いで転び落ちそうになるのを見、慌てて彼の宙を泳ぐ手を掴んだ。そして地面に立ち直った村上幸が、胸をバタバタ叩きながら狼狽した顔をしているのを見じた、元清川は高く胸を張り、腕を組んで怒ったように言った。
「ほら!君の自慢の陸軍精神も、僕この海軍出身の人が間に合わなければ、海に落ちる『落ち鶏』になっちゃうとこだったぞ。」
手を伸ばして額の冷汗を拭き取り、村上幸は歯を食いしばり指先に凝固まった汗を振り払い、元清川が差し出した素白い絹のハンカチを受け取った。そして山のように巍然と背筋を伸ばした。
掌に握られたハンカチはまるで魔法をかけられたかのように指の引きに従い、蠕動するしわが渦巻きくように深海へと伸びていき、やがてねじれたボール状の柔らかい布が村上幸の二つの指の間で挟まれた。彼は濁った息を吐き、ほんのり白くなった頬に付いた汗の跡を拭いた。ハンカチを折りたたんで四角い形にし、元清川が広げた手のひらに返すと、冷たい表情で斜めに目をやりながら言った。
「それは奇襲だぞ。正面で対決すれば、陸軍の力は無敵だ。もちろん…陸上限定でね。」
最後の一言はまるで声に出さないように言われた。
「え?最後の一言何?もっと大きな声で言わないと!」
元清川は右手をラッパのように耳に当て、細い目を細めて前方を見た。その先には、時に静かな湖のように穏やかで、時に荒い獣のように波を打ち上げる濃い青の海が広がっていた。突然、頭上を強い荒波の海風が吹き抜け、混ざった塩の粒が陽光の中で踊る精霊のように、元清川の肩に降り注いだ。
彼は先の軽い態度を収め、落ち着いた表情で体を起こし、両手を背中に組んで村上幸と並んで、水平線から海港へと向かう巨大な商船を見守った。
その商船の船首には威厳のある金鍍りの竜頭が刻まれており、船体全体は木板の上に薄く金粉を塗っていた――遠くから見ると、澄んだ黄色い海面の上に、浮かぶ移動する金山のような錯覚を与えるほどだった。
「実は、君が代表する陸軍であれ、僕の背後にいる海軍であれ、両者は共に国防建設を守る重要な力だ。普段はいつもお互いの欠点を指摘するけれど、これもまた…互いに研鑽し、黙契を磨く手段の一つじゃないか。」
海港に寄せた商船に、数人の水夫が船長の指示の下にマストに上り、風で押される帆を器用に巻き上げていた。船工たちは貨物庫と陸地の間を行き来帰し、甲板に積まれた重い荷物で船体が少し垂れ下がっていたが、それはティロス王国の繁栄と豊かさを支える貴重な品質だった――それは単に人が船から降りるための道具ではなく、国の安定した発展を象徴するものだった。
「あの商船で働く人々のように、背後に強い祖国が支えているからこそ、彼らは温かい家庭を離れ、家族の視線を気にせずに出発できる。風を切って波を越えて稼ぐわずかな報酬…それは命を賭けた犠牲とは比例しないかもしれないけれど…」
元清川は体をかがめて、遠くの道路から疾走してくる騎士をじっと見つめた。軍装を整え、両手で襟を挟んで力一杯引き、その勢いで村上幸の背中を叩いた。
「少なくとも自分の家族や子供たちが、豊かで平和を謳歌するこの国で、安定で快適な生活を送れることを保証できる。そして我々の海軍と陸軍は、まさにそのために存在するのだ。」
「その理屈は当然分かる。我々はもう軍校時代の…」
村上幸は二本指で帽檐を軽く撚り、海風で歪んだ軍帽を直し、腰に下がる軍刀に指先を近づけた。暖かい黄色の光が鞘の桜の花弁模様に反射していた。左手をわずかに上げると、五本指が曲がり、そこですぐに二名の近衛兵が「ヤマト号」戦艦から戦馬の手網を手に引っ張っている、戦艦を降りるしてきた。
その二匹の戦馬は肌色が似ているが、眉間にそれぞれ三日月と星の模様が点在していた。今回は、村上幸と元清川が祖国を離れるのに付き添った俊逸な馬であり、日出する国が衰退から復興へと向かう様子を見証した象徴でもある。
近衛兵から手網を受け取り、村上幸は靴先で馬鐙を軽く蹴り、体が絨雪のように軽やかに舞い上がるように、瞬きする間に馬背に飛び乗った。指腹で「霜月号」の首元の柔らかい鬣を撫で、両手で手網を締め、横目で「聖星号」に乗った元清川を見て、淡雅な微笑みを浮かべた。
「戦術上の些細なずれで、夜中から翌朝の光が窓辺に上がるまで議論を続けるような、衝動的な学生だった頃はもう過ぎた…国家の運命を担う軍人として。」
元清川は馬背にかがみ、近衛兵が差し出した馬鞭を受け取り、軍帽を「聖星号」の頭に被せた。指を額の前髪から髪の毛の先まで差し込み、近づいてくる騎士の姿を見つめ、唇をわずかに開いて、低く重い口調で言った。
「そして天皇陛下の重要な閣僚でもある。」
その言葉が落ちるや否や、冷たい語気が海浪の船体への衝突の轟音に混じり、徐々に消えていった。青紺と白の縞模様の鎧を着た騎士が、股間の優俊な戦馬から飛び降り、三歩を二歩で、元清川と村上幸の低沈した嘶きの戦馬の前まで歩み寄った。両手を拳に握り、片膝をついて跪いた。
「お二方は日出する国からの使臣ですか?」
「そうです。」
村上幸は左手で左側の手網を引き、馬頭をかたむけた。蹄鉄をはめた馬蹄がポートランド石で敷かれた堤防の地面を叩く音は、まるで天ノ川が流れるような清らかな音だった――あたかも琴の鍵を弾くように、穏やかな風の指揮の下で星々が漫歩するような音だった。
「船上から降ろされた貨物は、我が国天皇陛下が貴国国王への謁見礼として献上したものです。」
馬鞭を持ち、指で差し指すと、波に揺れる三隻の貿易船では、船工たちが夜幕が迫る中でも、荷物を倉庫に運び続けていた。そして村上幸は右手を急に五本指に並べ、元清川のいる方向を指し、優雅な口調で言った。
「こちらは我が国の海軍大臣――元清川閣下。そして俺は今回同行する副使を務める陸軍大臣村上幸です。」
「両位の貴使にお目にかかれて光栄です。我が国の陛下と王妃殿下は、すでに昏玉宮で二位のために宴席を用意しており、特に俺に案内を命じてくださいました。」
騎士は拳を握ったままの腕に急に力を込め、その動きに合わせて鎧の鱗が御川の流れが岩を撫でるように、「カランカラン」と軽快な音を立てた。
元清川は体を少し後ろに傾け、「聖星号」の馬背からひらりと飛び降りた。手を伸ばそうとした一瞬目、「聖星号」はすでに元清川の意図を察していた。前蹄を軽く屈め、おとなしく頭を下げた。元清川は軍帽を取り、再び頭に被せた。指先で「聖星号」が頬を擦り寄せる感触を優しく撫で、その後で騎士の落ち着いた表情に目を向けた。
騎士の前に駆け寄り、手を貸して立ち上がらせた。その浅緑色の瞳に映る光が、ちょうど降り注ぎ始めた夕暮れの空に広がる繊美な夕焼けと、まるで共鳴するかのようだった。元清川は指を締め、唇に優しい笑顔を浮かべた。
「では、お願いします。先頭で案内してください。」
夜空に輝く星の光が、月の柔らかな銀り輝きを引き立てていた。少し寂しいような海港の暗い堤防は、次々と町の灯りに照らされていた。町の通りの両側では、遙か東方の古い国から来た友を歓迎するため、ティロス王国の国民たちが自発的に家の軒先に色とりどりの提灯を吊るしていた。
宮城内では、巡回の兵士がいつもより多く配置され、提灯の光で一寸一寸と潜む冷たい影を払っていた。通りを行き交う灯りは、まるで銀河から降り注る星屑のようで、厳粛な宮城に神秘的な雰囲気を添えていた。
これはきっと素敵な夜になるだろう。遙か離れた二つの国を、満天の星の下で結びつける橋渡しをする夜だ。そして彼らの到着が、ライオンハート城の辺境に追放された可哀想な皇子に、どんな不思議な転機をもたらすのだろう?
今、濃い霧の中に潜む致命的な危険がどれほどあるかは分からない。でも少しは期待できる――父王の愛情を受けていない二人の皇子の心の中に鋳かれた氷が、この爛漫とした星の夜の下で、青蓮のような清浄な強靭さに鍛え上げられることを。
昏玉宮で行われる宴席は、謎に包まれた深層で、知られざる企みを明らかにするだろう。




