第十二話 始めて秋風の涼しさを聞く
重洋を越えた日出する国は、英姿颯爽とした天皇・秋篠宮優雪の指導の下、皇権を固める戦いを開始した。
彼女は額に雪桜模様の純白髪帯を結び、白羽皇女鎧の上に羽織った衣が翻っていた。「日の丸」を刺繍した白袍が、失地・九州島の戦場で、大和民族の覚醒を呼びかける狂潮を巻き起こした。
一方、豊饒な海域に囲まれたティロス王国の大地では、聖ゼアン帝国とのジャガン平原の戦いから、もう半月以上経っていた。
空の太陽はまだ夏のままだったが、辺境の地にあるライオンハート城では、気候がだんだん涼しくなってきていた。しかし、空気の中に漂う哀戚の気持ちは、より不気味なものになっていた。
そう、ジャガン平原での惨敗と灼眼城陥落の報告がゆっくりと伝わってくるにつれ、ここに住む一般市民の顔に浮かぶ切ない悲しみは、ほとんどが彼らの総督様――エドワード大皇子が今だに行方不明であることに焦点を当てていた。
前線で敗戦し逃げ帰ってきた傷兵の口から聞いたところによると、エドワード皇子はジャガン平原の戦場で、ガロとミュースという二名の万騎長が放った冷箭に惨めに撃たれ、最後は悲壮に美しく鮮やかな虞美人の花畑の中に倒れたという。
彼の遺体は、もしかしたらあの戦場で戦死した同袍に伴なわれ、風の中で美しい明い赤色と溶け合い、個人の不屈な意志を果てしない大地に貫いているのかもしれない。
「皇兄、君は本当にこの世にいないの?」
ズノーは手に握っていた氷糸制の紫藤御守りを一目見た後、魂を失ったようにライオンハート城の塔楼に登った。
彼は振り返り、総督府内の瞭望塔の高い所にいる、ぼんやりとしたサンタンヘラの姿を見た。
彼女の眸に閃く凄涼は、まるで蒼穹に染まった霜の華のようで、霞の中で漂い――酔い込みに、朦朧とした…砕けた影が、光を失い暗くなった「ルシファー」と呼ばれる暁星を掠めた。
だんだん濃くなる秋の哀愁を吹き飛ばしていた。その気迫は、まるで「立ち直れ、我々の民よ。エドワード皇子の未完成の事業は、我々が共に背負い上げよう」と無言で語っているかのようだった。
まさにこの凛々と震えるような声が、エドワードの背後守護にいる民たちの目から消えかけた「希望ノ光」を取り戻させた。
軍営の中、表情が厳粛な甲斐が冷たい顔をして軍列を抜けた。五本の「金紋獅子頭」の王旗がはためき、銀獅嘯月が刻まれた点将台の両側には三名の千騎長が立っている。ゆっくりと階段を上ってくる姿を身をかがめて待っていた。
この時、ウルフトが鍛冶屋から落ち着いた足取りで出てきた。彼は顔を上げて、額の熱い汗を拭い。遠くの点将台で命令を下している立派な姿を横目で見た。
彼が熾灼い息をひと口吐き出す間に、一隊一隊の歩兵が、鋭い鋒が咲くるを研ぎ澄ませた武器を肩に担ぎ、雲を割くような喊声の中、無表情にウルフトのそばを通り過ぎた。
これらの武器は、ウルフトがこの半月間に集め戻したライオンハート城の鍛冶師たちが骨を折って急いで作り上げたものだ。
聖ゼアン南部軍の次の攻撃がいつ来るか分からないため、近日では彼らはエドワードという主心骨を失った悲しみに浸り、神経を張り詰めて一日一日とつらい日々を過ごしている。
悲しみの風が編み上げた陰謀を払いのけ、聖ゼアン帝国のカイザー元帥が率いる南部軍の鉄蹄を防ぐため、ライオンハート城は皇子妃・サンタンヘラの指導の下、鉄壁のような団結力と天塹のような気概を発揮した。
全員が積極的に備戦に取り組む最中、羽翎衛が檄文を携えてライオンハート城を訪れ、王都クロオスクで新たに発布された御詔――ウィンザー王后腹中の未出世の子を、ティロス王国の次の唯一合法の王位継承者に冊立と伝えた。
これに対し、エドワード皇子の未亡人ヘラはただ落ち着いて袖を振って微笑んだにすぎなかった。
なぜなら、ウルフトから永遠に愛する男を失ったと知らされた瞬間、彼女の心はすでにエドワードが心を込めて守ったライオンハート城という要塞都市の安寧に全て注ぎ込まれていたからだ。
その目的は、自らが統治する民を戦火の災いから守り、彼を偲ぶ唯一の使命となったからだ。
何況、ヘラの腹の中で静かに成長する命も、エドワードが彼女に残した最後の強い支えとなった。
一方、ズノーは他の二人の皇兄グロスターとホーエンスのように、まったく同じ笑顔を浮かべていた。
「大丈夫だよ。私は一度も王位を継ぐ念頭を持ったことはないから。亡くなった皇兄も、私と同じ考えを持っていると信じている。父王が喜んでくれるなら、私は彼のすべての命令に従うよ。」
この数人の皇子たち、彼らの寛大で落ち着いた態度は、父王に寵愛されていないがゆえの落ち着いた心境を十分に表している。
でも…
この大胆な措置は、ていらくすおうこく全土の国民を衝撃させ、かつて父王に間接的に追放され封地に移された多くの皇子たちの震える心を揺さぶった。
彼らの反応はまず驚きで固まったが、すぐに安堵の笑みが漏れた「どうせ父王に変相で追放されてから、いつか認められて御座に就くなど、期待していなかった…」と、玉卓に注がれた葡萄酒の水晶杯を手に取り、太陽の下で妖しい美しさを放つ液体を映しながら呟いた。
生母の身分の卑微さを思い出し、彼らの唇に浮かぶ沈黙は、嗤笑の中で滲んでいった。
「庶子」の身分でていらくす王統に加わった者たちは、幼少期から豪華な衣食生活を送ってきたが、彼らの母妃の宮廷での地位は決して高くなかった。
その中でも、アンナウィアは例えば、ティロスがかつて東海岸半島の小国の一つであった頃、「伯爵夫人」の身分でロルスに嫁いだ最初の正妻だった。
その頃、先王アーサー王の勇武の名はまだ広まらず、「双頭獅身」の旗は辺鄙な地で苦闘していた。
ロルスの心に植えられた「野望」の種はまだ芽を出しておらず、二人は長い間優しい愛情を育てていた。
その後、ロルスの懐めの目の前で、若い夫婦はイザベラやエドワードなど四人の王室子女を次々に迎えた。特に長女のイザベラ王女は、幼い頃から先王アーサー王の寵愛を受けていた。
アンナウィアは自分の目で見てきた。ティロスが東海岸半島の弱い小国から、氷と火のような激しい奮闘の中、わずか数年で束縛から解き放たれ、神様のような英明と知略で半島を征服し、ついに群雄の頂点に立つまでの歴史を。
それからこそ、若いロルス王太子の優秀な軍事才能が、血と汗に染まった半島で頭角を現した。
金辺青底の「双頭獅身」王旗が、半島の四分の三の空を、青金石のような澄んだ光で彩った。ただし、聖ゼアン帝国に隣するアラヤ公国だけが、最後の熾烈な息を引き延ばしていた。
このアラヤ公国は、かつてティロスと共に風雨を乗り越え、今日まで戦い続けてきた同盟国であり、同時にアンナウィアの父であるビモスが宰相として仕えていた国でもある。
しかし、半島統一という偉業を成し遂げるためには、必然的にアラヤと敵対せざるを得ない。それは、ロルスが自らの義父が心血を注いで築き上げた栄光の生涯を、手に葬送することを意味するのだ。
皆が机に向かって悩み込んでいる中、ロルスは鞘から数多くの人々の血で汚れた戦剣を抜き出した。刃先がきらめき、壁に掛けられた軍事地図――そこにはアラヤ公国が濃い緑の筆跡で印されていた――を突き刺した。
剣先の下で次々と滅びていく王国を見つめ、まるで燃え上がりそうな炎の中で、焦げた死体で埋まった道上で、そして剣の刃が義父ビモスの喉を切り裂く瞬間に、アンナウィアが自分を憎む背中を見ているかのようだった。
彼は狂ったように嘲笑った「この父殺しの汚名を背負おう」。
その時、偶然的ドアの外からお茶を運んできたアンナウィアは、ロルスの断固たる言葉を耳にした。
彼女はドアを叩こうとした手を宙に止めた。「父」という言葉がまだ喉に詰まったまま、目じりから涙がこぼれ落ちると共に、重く気を失って床に倒れた。
三年後、深藍が最後の躍動する火の垢を飲み込み、ティロスがついに「東海岸半島」を王国として統一した偉業を成し遂げた。
でもこの中に埋もれているのは、王者自身が放棄した「人間性」なのだ。そして無数の死骸と亡霊が敷き詰めた、金獅子の御座へと続く副次的な飾り。悲鳴の音は、毎晩「背徳の者」の耳元を取り巻くことにある。
しかし秋風は止まらず、王城の鐘が急に鳴り響いた――三年後、アーサー王は遠路から来た最後の使臣を接見した後、旧疾で急に崩じた。かつて鉄と血で山河を築いたロルスが、万人の注目の中、王位を継承した。
御座前の彼は、眉間に戦いの鋭さが薄れ、代わりに深不可測な威厳が漂っていた。
だが、これらすべてが、人々の目に映るエドワードの消えた輝きと共に、時間の無情な流れに飲み込まれていった。
灼眼城が「星ノ塔」と名付けられた瞭望塔の頂上で、カイザーは二人の親衛を率いて影に覆われた階段を上ってきた。彼は親衛の足取りを止め、金獅子模様の仮面をつけた男のそばに直行した。
「俺の手配してあなたのそばに置いた、日常の世話をする侍女からの報告ですが、明日にライオンハート城に戻る準備をしているのですか?」
「どうした?俺を放してくれないのか?」
「そんなはずはない。実はあのかわいらしい小侍女が、あなたが去るのを寂しがるのが心配なのだ。」
この男はその言葉を聞いて冷笑を浮かべた。
「引き留める言葉も古臭すぎるな。」
「本当に言ってるんだ。今夜部屋に戻って直接彼女に聞いてみればいい。」
カイザーは小さなナイフを握りしめ、真っ赤に熱された火鉢から鉄の塊をつまみ上げた。氷蚕の手袋に包み込んでしばらく弄んだ後、急に顔に赤みが広がり、不意に瞭望塔の銃眼から投げ出した。その時、男は振り返ってカイザーを見つめた。彼の大柄な身体が、自分の前に決して崩れない山のように見えた。
まさにこの静止のような瞬間に柔らかく清らかな月光が薄い雲の覆いを突き抜け、降り注ぐ一筋の銀色の輝きが、男の顔につけた仮面の流れる獅子の紋様を描き出した。
「カイザー、冗談を言うようになったのか。」
男は塔壁に寄りかかり、カイザーの熱い視線を横目で捉え、仮面の下で優雅な笑顔を浮かべた。夜の涼しさを運ぶそよ風が耳元を撫で、明るい火光に揺れる長髪が男の目の前で舞った。
「そうだね。俺を死神の手から奪い戻すために、あなたはなんと皇帝の御医まで呼び寄せた。今ではまた生き返った――」
男は両手を広げ、火に飛びかかろうとする蛾を指先でつまんだ。
「今更に、またどうして簡単に自分の強敵を許し、敵国の懐に戻らせるの…」
彼は蛾を掌に載せ、翅に付着した塵を丁寧に払った。
「軍隊を率いて、またお前と敵対する。」
「俺ってそんなに心が狭い人に見える?」
「しかも、皇帝の御医を呼び寄せて君を治療したのは、わが国のマリアーナ長公主だ。つまり、君の温厚で優しい継母だ。」
「たとえ俺がどんなに大きな権柄を握っていても、皇帝の御医を、俺のような一介の武人が使役できるわけがないだろう。」
言葉が落ちるや否や、カイザーの厚い繭だらけの大きな手が突然火鉢の中で乱れて走る火の舌をつかみつけた。我に返って男をちらりと見た後、残りの音が天井に消えないうちに、彼は体を潜めてますます濃くなる闇の隅に浸った。
「まったく、俺たちの長公主は今でも子供の頃と全く同じでわがままだ。血縁のない継子のあなたのために、なんと皇帝の実兄を脅しをかけて、夜通し羽翎衛を竜都無月城へ派遣させた。」
「もしもその城に駐留している将校が使者を急ぎ馬で灼眼城へ走らせ、俺の南部軍がライオンハート城に進軍する軍勢を止めさせなければ、俺は生涯初めて陛下の聖顔に怒りを買うことになっただろう。」
「マリアーナ殿下ですか?」
男は広げた手を瞭望塔の外の夜の闇に浸し、手のひらに丸まっていた蛾を放した。しかし「マリアーナ」という名前を聞いた瞬間、ふと子供の頃母妃が仙逝した後の情景が思い出された。
深い夜ごとに庭園で寂しく月を眺めているとき、彼女はいっさいじゅうのズノーを抱きしめ、そばに来て付き添ってくれたのだ。
「実は今までずっと、彼女は黙って俺を気にかけていたのか。」
カイザーの立ちふさがるような立派な体が陰暗面的に溶け込む見つめる一瞬時、男の体がぞっと震えた。
「そうだ。もしもマリアーナ長公主が立ち上がって阻止してくれなければ、我が聖ゼアン帝国の『飲剣蛟竜』国旗は、もうライオンハート城の城壁にはためいていただろう。」
カイザーの言葉に隠された真意を読み取った後、男の視線はすべて火鉢の中、燎原の勢いのように燃え上がる炎の中へと集中し、つぶやいた。
「俺のためじゃなくても、マリアーナ殿下はやはりあなた方の皇帝陛下に命じる、お前のライオンハート城への進軍を妨害するだろう。」
「エドワード、お前の言ってることはどういう意味だ?」
階段を下りようとしていたカイザーは、背後から漂ってきた落ち着いた声に、足取りを宙に浮かべた。
彼は空を裂くような灰色の狼のように、後ろにいる親衛を押しのけ、怒りの目を開いて「エドワード」と呼ぶ青年男子を見下ろした――そうだ、彼はあの戦場で戦死していなかったのだ。ライオンハート城の民衆が手を合わせて偲ぶエドワード皇子は、マリアーナ殿下の神を感動させるほどの日夜の祈りにより、邪風に打たれて死んだ地獄から、「三重の門」に縛られた瘀血の鎖を断ち切り、雄々しい姿を現世に蘇らせた。
エドワードは顔を上げ、カイザーの剛毅で異なる表情をした顔と向き合った。両手で軽く揚げた袍の襟を引き、落ち着いた仕草で口を開いた。
「なぜなら――マリアーナ殿下の息子、すなわちあなた方の皇帝陛下の実の甥が、今、ちょうど俺のライオンハート城内にいるからだ。」
その言葉を聞いて、塔内で揺れる火の光が、カイザーの驚きの身形を映し出した。
彼は肩を微かに震わせ、隠れた影の中に潜む衝撃を読み取った――「ズノー親王殿下の行方、やっと…見つかった。」
エドワードは深く息を吸い、カイザーの慌てた表情を掠めた。ゆっくりと火鉢のそばまで歩き、燃える炎で掌に付着した薄い霜を擦り落とした。
その後、女壁に凭れかかり、交じり合った指で顎を支えた。エドワードの奥深い瞳は、夜の静寂をすべて飲み込んでいた。
「俺のバカ弟、兄ちゃんは帰ってきた。本当にごめんよ、君とヘラを心配させて、申し訳ない。」
夕暮れの風が冷たく吹くが、城中の切なさを吹き飛ばすことはできない。月は明るいが、人々の心の底にある震える傷を照らすことはできない。
始めて秋風の涼しさを聞く、この時、我々の心に揺れるメッセージを、運命に目を覆われた人々に贈ることができるだろうか?




