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異世界転生したら第21王子だったけど、許嫁も侍女も姫も俺に夢中で嫉妬の嵐 モテすぎて部屋に引きこもってます  作者: マーたん


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バトルウォーク ― 血と誓いの進軍

戦乱と混沌の時代を越え、ひとつの王国がようやく未来を見据える瞬間を迎える。

これは剣と血で築かれた歴史の果てに、新たな世代へ託される「希望の物語」である。

最後に残されたのは、勇者の名でも、王の栄光でもない。

次代へと受け継がれる「国そのものの姿」であった。

バトルウォーク:血と誓いの進軍


――夜明け前、まだ薄い霧が大地を覆っていた。

重苦しい空気の中、王都から南に延びる石畳を踏み鳴らす音が響く。甲冑の擦れる音、槍が地を突く音、そして兵たちの荒い息遣い。


進軍の最前列に立つのは王子であり、そして今や「血と誓い」を背負った男――。

その傍らには、唯一無二の伴侶リィアナが弓を背負い、冷ややかな視線を霧の彼方へ向けている。


「進軍は止めない。だが……この道は血で染まるだろう」

低く王子が呟くと、兵たちの間にざわめきが走った。

誰もが恐れている。敵はただの異世界勢力でも、女神に操られた魔獣だけでもない。

その背後に蠢く、影の契約者。復讐を誓った存在が、彼らを待ち受けているのだ。



「――歩け」

号令とともに、一歩、また一歩と進む。


それはただの行軍ではない。

血を流すことを前提とした誓いの進軍――バトルウォーク。


リィアナは歩きながら静かに王子に囁いた。

「あなたの誓いは、この血で汚されてもなお揺るがないのね」

「揺るぐものか。たとえこの足取りが死者の上を歩むとしても……俺は進む」


霧が割れ、最初の敵が姿を現す。狼の群れ。しかしその瞳は赤黒く濁り、女神の呪詛に蝕まれていた。

兵たちが槍を構えるが、王子は手をかざし、低く叫んだ。

「突撃――血で道を拓け!」



戦いは始まった。


剣が肉を裂き、弓が唸りを上げ、炎の魔術が闇を照らす。

だがそれ以上に恐ろしいのは兵たちの足取りが決して止まらないこと。

倒れた仲間の屍を踏み越え、進み続ける。


それが「バトルウォーク」。


血で染まり、誓いで縛られた進軍の形。

彼らはもう戻れない。


王子とリィアナの誓いを中心に、進軍はまるで大地そのものを押し流すように前へ――。



だが、霧のさらに向こう。

その進軍を待ち受ける影の姿があった。

契約により女神の力を取り戻した存在――その笑みは、すべてを血の海に沈めることを望んでいた。


「来るがいい、王子……そしてエルフの妻よ。お前たちの誓いごと、その血で穢してやろう」


進軍は止まらない。

血と誓いの進軍は、復讐の影との衝突へ突き進んでいく――。


第一の襲撃 ― 森の魔獣


進軍が始まって三日目の夕刻。

軍勢は広大な森へと足を踏み入れていた。木々は幾重にも枝を伸ばし、薄暗い影が兵士たちの顔を覆う。風はほとんどなく、聞こえるのは靴音と鎧の軋み、そして時折響く鳥の羽音だけだった。


だが、その静けさは長くは続かなかった。


――カサリ。


乾いた音に兵が振り返る。

次の瞬間、木々の間から赤い光が無数に灯った。それは眼だった。大小さまざまな魔獣の眼。女神に取り憑かれた狼、樹皮のような皮膚を持つ熊、翼を持つ異形の鹿……森そのものが牙を剥いたかのように、魔獣たちが群れをなして現れたのだ。


「構えろ!」

王子の声が鋭く響く。


兵たちは慌てて盾を前に出すが、魔獣の咆哮がそれを打ち破る。

槍を構える者が吹き飛ばされ、弓を引く前に首筋を噛み砕かれる者も出た。


リィアナは即座に弓を取り、矢を三本同時に放った。矢は闇を裂き、三体の狼を正確に射抜く。

「散開して! 集団で動いたらやられるわ!」

彼女の指示で兵たちは小隊に分かれ、森の木々を盾にして戦い始める。



しかし、魔獣の異常さは目を見張るものだった。

傷を負っても動きを止めず、倒れても立ち上がり、まるで死を知らぬかのように襲いかかってくる。

「これは……ただの魔獣ではない!」

王子は剣で狼を斬り伏せながら呻いた。

「女神の呪詛が……生と死の境を歪めている!」


リィアナの矢が再び光を描き、空から襲いかかる異形の鹿の翼を撃ち抜いた。

地に墜ちた魔獣はなおも立ち上がろうとするが、王子が駆け寄り、剣を突き立てる。

その瞬間、魔獣の体から黒い煙が立ちのぼり、消えていった。


「王子! 首を狙え! 呪詛の核はそこに!」

リィアナの叫びで、兵たちも次々と首を狙い始めた。血が飛び散り、咆哮が木霊する。



戦闘は長引き、森の中は死体と血の匂いに満ちていった。

兵の半数は傷を負い、何人も命を落としたが、それでも王子の号令のもと進軍は止まらない。


ついに最後の熊型の魔獣が倒れたとき、王子は剣を杖にして息を整えた。

その肩をリィアナが支える。

「……これが第一の襲撃ね。女神は私たちの進軍を、ここから潰すつもりよ」

「ならば、俺たちは立ち止まらない。血を流してでも、誓いを貫く」


森は再び静寂を取り戻した。だがその静けさは、次の嵐の前触れにすぎなかった。


――進軍の行く先には、さらなる陰謀と血の試練が待ち受けている。


第二の刺客 ― 異世界の影


森の魔獣を退けた軍勢は、重苦しい空気の中で進軍を続けていた。

疲弊した兵の顔には土と血がこびりつき、矢羽根の折れた矢筒は空に近い。

だが王子の瞳は揺るがなかった。リィアナがその隣を歩み、時折兵たちに励ましの言葉を投げかけることで、かろうじて軍は秩序を保っていた。


――だが、その夜。


焚き火が森の闇を追い払う中、ひとりの兵が突如として悲鳴を上げた。

彼の胸から黒い刃が突き出ていた。

「敵襲!」

王子が立ち上がるより早く、影が焚き火の明かりに揺らめき、数人の兵が次々と斬り倒されていった。


「……ようやく見つけたぞ、王国の血筋よ」


闇の中から現れたのは、異世界の装束を纏った黒衣の男だった。

顔の半分を仮面で覆い、目だけが冷たく輝いている。

その存在感は人ならざるもの――影そのものが人の形をとったかのようだった。


「名を名乗れ!」

王子が剣を構えると、男は口元に笑みを浮かべる。

「我は〈影渡り〉ザルヴァ。女神の契約に従い、お前を消すために遣わされた刺客だ」


瞬間、彼の姿は掻き消えた。

次に現れたのは王子の背後。振るわれた黒刃を、間一髪でリィアナの矢が逸らす。

「見えない……!」

兵たちは混乱に陥り、仲間の悲鳴が森に響き渡る。



ザルヴァの力は、影を媒介とした瞬間移動だった。

焚き火が作り出す影、木々の根元に広がる闇、そのすべてが彼の通り道になる。

「闇の支配下で、お前たちに勝ち目はない」


次々と兵が影から現れる刃に倒れ、軍は一気に崩壊の危機に陥る。

だが王子は叫んだ。

「恐れるな! 影は光がなければ存在できぬ! 炎を広げろ!」


兵たちは必死に松明を振りかざし、追加の火を森中に灯す。

暗闇が後退し、ザルヴァの移動は制限されていく。

「小賢しい……!」


リィアナは王子に短く言う。

「彼を仕留めるには、影を閉ざすしかない。光で罠を作りましょう」

王子は頷き、兵に命じた。

「円陣を組み、火を絶やすな! ここで決着をつける!」



光の輪の中に追い込まれたザルヴァは初めて焦りを見せた。

影が逃げ場を失い、彼の輪郭が人間らしい姿へと定まっていく。

「くっ……! だが女神の命は絶対だ!」


彼が最後の一撃を繰り出そうとした瞬間、リィアナの矢が彼の胸を貫いた。

黒い煙が立ちのぼり、仮面が落ちる。

見えた顔はまだ若い男で、苦しげに笑っていた。


「……影は一つではない。第二、第三の刺客が……必ず来る……」


その言葉を残し、ザルヴァの身体は闇と共に消え去った。



王子は剣を下ろし、荒い息を吐く。

リィアナが肩を支えながら言った。

「これは始まりにすぎないわ。女神は本気で、あなたと王国を滅ぼそうとしている」

「ならば俺たちは、最後まで抗う。血を流してでも――この誓いを守るために」


森を抜けた先には、さらに多くの影と陰謀が待ち構えている。

夜風は冷たく、兵たちの心に不安を残したまま、新たな夜明けが近づいていた。


クライマックス ― 魔導兵器の待つ丘


王国軍は、血と汗にまみれながらもついに魔導兵器が待つ丘へと辿り着いた。

その丘は、不気味な沈黙に包まれていた。風は止み、鳥も鳴かず、ただ空気だけが異様に重く感じられる。


丘の頂には、異世界から持ち込まれたとされる巨大な魔導兵器が鎮座していた。

城砦のような外殻に無数の魔法陣が刻まれ、中央の砲口からは淡い赤光が脈打つように明滅している。

その一撃は都市を丸ごと消し飛ばすほどの力を持つと噂されていた。


「……ついに来たか」

王子は剣を握り直し、背後に並ぶ兵を振り返った。

皆、恐怖を抱きながらも彼の瞳を見つめている。

リィアナは弓を構え、王子の隣に立って小さく頷いた。


丘の上で待ち構える影が一つ。

女神の力を受け継いだ異世界の将――黒銀の鎧に身を包んだ「魔導将軍ザハラ」であった。


「王子よ、ここが貴様の終焉だ。女神の意思に逆らう者は、誰ひとり生かしておけぬ」

ザハラが片手を掲げると、魔導兵器の魔法陣が轟音と共に輝き出す。大地が震え、兵たちは思わず膝を折りそうになった。


「撃て!」

ザハラの号令で砲口が唸りを上げ、灼熱の光が放たれた。


だが次の瞬間、王子は叫ぶ。

「防御陣を展開しろ! 全員、盾を構えよ!」

兵士たちと魔法師団が必死に防御魔法を重ねる。光が大地を裂き、炎が嵐のように吹き荒れる。

何人もの兵が吹き飛び、地面は抉られ、血と煙が渦巻いた。


しかし、王子は倒れなかった。

リィアナの弓が次々と魔導兵器の魔力核を狙い、兵士たちは命を懸けて砲口へ突撃する。


「この丘を奪い取るぞ! 王国の未来のために!」


王子の声が轟き、兵士たちが叫びと共に前進した。

炎の中、鉄の獣のような魔導兵器と人の軍勢がぶつかり合い、戦場は地獄と化す。


ザハラは剣を振りかざし、王子と激突した。

「貴様がいる限り、女神の未来は揺らぐ! 消え去れ!」

「たとえ神でも、俺の民を弄ぶことは許さない!」


剣と剣が火花を散らし、丘全体が震えた。


――ここでの戦いが、王国と異世界、すべての運命を決する最後の一歩となる。


終章 ― バトルウォークの意味


丘を覆っていた硝煙と炎は、ようやく静まりつつあった。

血に濡れた大地の上で、王子は剣を杖代わりに立ち尽くしていた。背後では兵士たちが仲間を担ぎ、負傷者の呻き声と泣き声が風に流れていく。


魔導兵器は沈黙し、異世界の将ザハラの黒銀の鎧は瓦礫の下で動かない。

長い戦いの末、王子たちはついに勝利したのだ。


だが、勝利の歓喜はどこにもなかった。

あまりにも多くの犠牲が払われすぎたからだ。


リィアナが王子に寄り添い、震える声で問う。

「……どうして、こんなに歩み続けなければならないの……?」


王子は血に濡れた両の手を見下ろし、かすかに微笑む。

「それが俺たちの『バトルウォーク』だ」


兵士たちが顔を上げる。

その言葉は、戦い抜いてきた彼ら全員の胸に届いた。


「バトルウォーク――戦場を歩むこと。それはただ剣を振るうだけじゃない」

王子の声は掠れていたが、丘に立つ者すべてに響いた。


「仲間の命を背負い、犠牲を忘れず、未来のために歩みを止めない。血と涙にまみれたこの歩みこそ、俺たちが生きた証だ。だから……俺たちは負けない」


静まり返った丘に、その言葉が刻まれるように響いた。

兵士たちが剣を掲げ、リィアナは涙を拭きながら頷いた。


空はようやく朝焼けに染まり始める。

長い夜が終わり、新たな時代の光が差し込む。


――バトルウォーク。

それは、戦うことではなく、共に生き抜くために歩み続けること。


王子と仲間たちの歩みは、ここで終わりではない。

新たな国を築き、次の世代に受け継がれるまで、その歩みは続いていくのだ。


次世代に受け継がれる王国の姿


王都の鐘が鳴り響き、玉座の間には静かな光が差し込んでいた。

長き戦乱を超え、幾度も滅びかけながらも立ち上がった王国は、ようやく新たな時代を迎えようとしていた。


老王は杖を握りしめ、玉座の前に立つ若き後継者を見つめる。

その眼差しには厳しさも憂いもなく、ただ安堵と未来への希望が浮かんでいた。


「我らが王国は血と涙で築かれた。だが、次に求められるのは剣ではなく、心を結ぶ力だ」


王の声は深く響き、列席した重臣たちも静かに頷いた。

代々の争いは終わり、次代を担う者たちには「守る」ではなく「育む」という使命が与えられる。


広場に集った民衆もまた、その瞬間を待ちわびていた。

かつては飢えと恐怖に怯えていた人々の目に、今は確かな光が宿る。

鍛冶場の火は武具を作るためではなく、農具や器を打ち出すために燃え、

学び舎には戦を知らぬ子供たちの笑い声が響いていた。


その日、新王は玉座に就き、初めての宣言を行った。


「この王国は我らのものではない。未来を生きる子らのものだ。

 ゆえに私は、この地を豊かに、平らかにするために全てを捧げよう」


その声は王都の石畳を渡り、やがて大地の果てまでも響き渡った。


──次世代に受け継がれる王国の姿とは、

ただ権力を譲り渡すことではなく、

「人々が希望を託し続けられる場所を築く」ことそのものだった。


王国は新たな一歩を踏み出し、

その姿は、果てなき未来へと受け継がれてゆくのであった。

戦いを描いてきた物語の果てに訪れるのは、いつも静かな日常と未来への祈り。

「次世代に受け継がれる王国の姿」とは、ただ玉座を継ぐことではなく、

そこに生きるすべての人々の願いを繋ぎとめることだろう。


血で塗られた歴史の終わりにこそ、真の始まりがある。

その瞬間を読者と共に描けたことに、深い感謝を込めたい。

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