王子大失
「王子シリーズ」もいよいよクライマックスへ近づいてきました。
今回の物語は、王子の「大失態」を描いたものです。これまで勇気やドタバタを見せてきた王子ですが、今回は彼にとって最大級の失敗をやらかしてしまいます。失敗は誰にでもありますが、王子のは規模も影響も桁違い。果たしてこの出来事が、彼の成長や国の未来にどうつながっていくのでしょうか。
――玉座にて、落ちるもの――
宮殿の大広間は、ざわめきとため息に満ちていた。
煌びやかな燭台の下、王子は緊張に震えながらも、堂々と立ち上がろうとした――が、次の瞬間、豪華な玉座の階段で足を滑らせ、盛大に転倒してしまった。
「お、おおお……!」
「王子様っ!」
重苦しい沈黙のあとに、爆発するような笑い声が広間を揺らす。廷臣たち、侍女たち、そして楽師までもが肩を震わせた。
王子の顔は赤くなり、耳まで火を吹いたよう。必死に立ち上がろうとするが、裾を踏んで再び転倒――。
もはや「威厳」などという言葉は、この場に存在しなかった。
「……こ、これも余興だ!」
王子は震える声で叫んだ。
しかし、誰も信じてはいない。
その日、彼につけられた新しい呼び名は――「転倒王子」であった。
城下町にまで響き渡った、王子の大パニック劇の余波は、まだ収まっていなかった。
城門前に集まった群衆は笑い、侍女や従者たちはひそひそと噂を交わす。
そして当の王子――ユリウスは、自室で机に突っ伏していた。
「ぐぬぬ……どうしてこうなった……」
あれほど堂々と演説を決めるはずだった。
民に向かって威厳を示し、未来の王としての姿を焼き付けるはずだった。
それが……馬に引きずられて広場を横切り、顔から泥水へダイブ。
しかも救い出される時には、片足が桶にすっぽりはまり、見事なまでに動けなくなった。
「王子様……お顔が……」
「し、静まれ! 余計なことは言うな!」
侍女が差し出した鏡には、泥と青あざで見事に台無しとなった“王子の顔”。
まさに“威厳”とは対極にある光景だった。
「……お父上に報告だけはするな。絶対にだ」
必死の懇願に、従者たちは苦笑するしかない。
しかし――城の外では、既に「王子の泥まみれ行列」として歌にされ、広まろうとしていたのである。
ユリウスの大失態は、もはや国民的な娯楽となりつつあった。
王城の大広間。
豪華な燭台の灯りが揺れ、各国から招かれた貴族や賓客が見守る中、王子アルディスの姿は一層目立っていた。
しかし、その堂々たる立ち居振る舞いの裏では、冷や汗が背を流れている。
なぜなら、今宵の舞踏会で彼が披露するはずのダンスは、まだ一度もまともに成功していなかったからだ。
「王子、そろそろご準備を」
侍従が耳元で囁く。
アルディスは無理に笑みを作るが、足は震えていた。
やがて楽団が奏でる音色が高らかに響き渡る。
王子がパートナーを迎えに進み出ると、視線が一斉に注がれた。
相手はエリカ。堂々とした足取りで現れると、軽く微笑む。
(くそっ、頼むから今日は転ばないでくれ、俺の足……!)
――その祈りも虚しく、最初のターンで王子の靴が床に引っかかり、盛大に転倒。
見事に床へ突っ伏した彼の姿に、場内は凍りつき……次の瞬間、あちこちから忍び笑いが漏れた。
「お、お怪我はありませんか!」
慌てて手を差し伸べるエリカ。
しかし王子は真っ赤になった顔でそれを振り払い、勢い余って再びつんのめる。
「……二度目っ!」
観衆の誰かが小声でつぶやくと、堪えきれずに笑い声が広がった。
王子のプライドはズタズタだった。
必死に立ち上がり、もう一度踊ろうとするが、焦れば焦るほどリズムは崩れ、最終的には楽団すら演奏を止めざるを得ないほどの大失態となった。
広間に残るのは、気まずい沈黙と、王子の息荒い声だけ。
その場の誰もが思った。
――これは「王子大失態」と語り継がれる夜になるだろう、と。
王子、まさかの「大失敗」。乾杯を「乾物」と言い間違えるのはまだ可愛いものの、女王のドレスにワインをぶちまけるのは洒落にならない事件でしたね。
ただ、この一件がきっかけで王子の“人間らしさ”が広く知られることになり、逆に国民から親しみを持たれる未来に繋がる……かもしれません。失敗の先にどんな物語が待っているのか、次回をお楽しみに。




