王国の孤独な王子 〜全ての人がいなくなる日〜
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王国の孤独な王子 〜全ての人がいなくなる日〜
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ある日、宮殿の門をくぐる者は誰一人としていなかった。
広場には足跡もなく、王宮の廊下は静まり返り、扉を開ける音すら吸い込まれていく。
第21王子リュクスは、自室の窓から王国の街を見下ろした。
「……誰もいない」
市場も街路も、兵士も侍女も、国民の姿もない。ただ、風に揺れる旗だけが、かすかに生気を帯びていた。
初めは驚き、そして恐怖した。
国の人々が消えた理由はわからない。災厄か、魔法の暴走か、あるいは異界の干渉か――答えは闇の中にあった。
リュクスは宮廷の書庫に駆け込み、魔導書や古文書をめくる。
「何か手がかりが……」
しかし、答えは見つからない。ページの文字は静かに光るだけで、王子に解決策を示さなかった。
孤独は静かに、だが確実に心を蝕む。
誰もいない王国で、王子はただ立ち尽くす。呼びかける声も、返事もない。
「……俺しかいないのか」
その言葉は静寂に吸い込まれ、応えるものはなかった。
しかし、孤独の中でもリュクスは生きなければならない。
食事も、警護も、国の安全も、すべて自分ひとりの責任となった。
「守る者がいなくても、俺がこの王国を守る」
剣を手に、王子は宮廷の廊下を歩く。廊下の先に広がる広間は、かつての喧騒の面影を残すだけで、人の気配はゼロだ。
夜になると、月明かりだけが孤独な王子を照らす。
庭の泉に映る自分の顔を見つめ、リュクスは思う。
「孤独でも、ここから始められる……」
誰もいなくなった王国で、王子の心には決意だけが残る。
孤独は試練であり、成長の舞台であり、そして未来への希望でもあった。
王国に誰もいなくても、王子は生きる。
孤独の中で、知識を磨き、力を蓄え、魔導書を読み解き、異界の謎に立ち向かう。
「いつか……誰もいなくなった意味がわかる日が来る」
リュクスの瞳は静かに輝き、孤独の中で、ひとり未来を見据えていた。
さくらの願望
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王国の廃れた広場で、リュクスは静かに歩いていた。
誰もいない街に、ただ風が旗を揺らす音だけが響く。
そんな孤独な世界の中、ひとりの少女が現れた。桜のような髪を揺らし、淡い光をまとったその姿――さくら。
「リュクス王子……」
その声は柔らかく、しかし王子の心に深く届いた。孤独に耐える毎日の中で、唯一の安らぎとなる声だった。
さくらは手を差し伸べ、穏やかに微笑む。
「王子、私……ずっと願っていたの。誰もいなくなったこの世界で、あなたと一緒に歩きたいって」
その言葉に、リュクスの胸は熱くなる。孤独だった日々の重みが、少しずつ溶けていく。
「俺……もう、ひとりじゃないのか」
王子は戸惑いながらも、さくらの手を握った。
彼女の願望――それは、王子を孤独から救い出すためのもの。
さくらはただ、自分が王子の傍にいることで、彼が再び世界と向き合えるようになってほしいと願っていたのだ。
二人は廃墟の街を歩く。
誰もいない王国だが、希望の光は、さくらの存在によって確かに差し込む。
風に舞う桜の花びらのように、二人の歩みは静かに、しかし力強く、未来へと続いていった。
さくらの願望――それは、孤独を打ち破り、王子の心に新たな希望を灯すものだった。
そしてリュクスは、彼女の存在に支えられながら、初めて自分の意志で未来を歩み始める。
さくらの願望 〜忍び寄る影〜
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王国が静まり返った中、リュクスとさくらは廃墟の街を歩いていた。
誰もいないはずの王国に、しかし、奇妙な気配が漂い始める。
「……誰かいる?」
リュクスの声に、さくらは微かに肩を震わせる。
「大丈夫、王子。でも……後ろ、気をつけて」
影はいつの間にか二人の後ろをつけていた。
廃れた街灯の光に、その黒い影がわずかに映る。人の形をしているが、どこか異質で、息遣いすら聞こえない。
「……まさか、ストーカー?」
リュクスは剣を握り、警戒の構えを取る。
さくらは恐怖を抑え、王子の手を握る。
影は静かに、しかし確実に二人に近づく。
「俺たちを……追っている」
リュクスは低く呟き、魔導書から光を放つ。小さな結界が二人の周囲に広がる。
影はその光に触れると、ひとたび後ずさりする。しかし、簡単には退かない。
「……何者だ?」
リュクスの声には怒りと恐怖が混ざる。影は無言のまま、ゆっくりと体を歪め、まるで影そのものが意思を持ったかのように蠢く。
さくらは手元の小さな魔法石に手を触れる。
「王子、二人で力を合わせれば……!」
魔導書と魔法石の光が重なり、影に向かって放たれる光の矢となった。
影は叫びもせず消え去る。
「……ふぅ、逃げたか」
リュクスは剣を収め、息を整える。さくらの手を再び握り、安心をかみしめる。
廃墟の王国には再び静寂が戻る。
しかし、二人の間には確かな絆が生まれていた。
ストーカーの影――それは、孤独と不安を象徴する存在だったが、二人の信頼によって退けられたのだ。
「これからは、もう恐れなくていい……ね」
さくらは王子の肩に頭を寄せ、微笑む。
リュクスは頷き、二人は再び歩き出す。
誰もいない王国であっても、二人でいれば恐れるものは何もない。
王子への影 〜忍び寄るストーカー〜
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宮殿の夜は、いつもより静かだった。
第21王子リュクスは自室に閉じこもり、引きこもりの生活を続けていたが、その孤独を狙う存在があった。
「……また、誰か来たのか?」
薄暗い書斎で、リュクスは魔導書の光を頼りに辺りを見回す。
窓の外、廊下の奥、気配がする。だが人の声は聞こえない。
その影は巧妙だった。王子の生活を観察し、行動を追い、孤独な時間を狙って忍び寄る。
彼は誰にも知らせず、静かに王子の心理を探っていた。許嫁でも、宮廷でもない、異質な影。
ある夜、リュクスが寝室で魔導書を開いていると、後ろから微かな足音が聞こえる。
「……またか」
王子は冷静に剣を取り、振り返る。だがそこには誰もいない。
足音は部屋の外、廊下を巡り、再び消える。
リュクスは理解した――このストーカーは、孤独な王子の心理を見抜き、じっと忍び寄っているのだと。
翌日も、魔導書の光が漏れる夜の書斎に、影は現れる。
「俺を……試しているのか」
リュクスは魔法陣を描き、結界を張る。光が部屋を満たすと、影は一度後退する。しかし、完全には消えない。
孤独と恐怖の中で、王子は決意する。
「……俺は逃げない。孤独でも、この王国を、そして自分を守る」
そしてリュクスは、魔導書と剣を手に、影の正体を探るための戦いを始める。
ストーカー――それは王子に忍び寄る危険であると同時に、孤独を打ち破る試練でもあった。
宮殿の廊下には、影と王子の静かな戦いが夜ごと繰り広げられ、王子は少しずつ、孤独から脱却する力を身につけていく。
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