誰もしなない学校 〜誰もいない教室〜
School
誰もしなない学校 〜誰もいない教室〜
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放課後、校舎の廊下は静まり返っていた。
誰もいない教室のドアを押すと、空気はひんやりと冷たく、机と椅子だけが整然と並んでいる。
まるで時間が止まったかのように、誰の声も、足音も、笑い声も聞こえなかった。
ミナトはゆっくりと教室に入る。
「……誰もいない」
リナや仲間たちと過ごす賑やかな教室とは対照的に、机の上には使いかけのノートやペンが残されているだけだった。
黒板には、昼間の授業で書かれたままの文字が残り、窓から差し込む夕陽がゆっくりと光の筋を作る。
その光に照らされる机の上の埃までが、静かに輝いて見えた。
「ここ……本当に人がいたのか?」
ミナトは小さくつぶやく。
誰もいない教室は、不思議な安心感と同時に、どこか孤独な空気を漂わせていた。
窓際に座ると、遠く校庭の木々が風に揺れる音だけが届く。
「……ここなら、誰にも邪魔されずに考えられる」
ミナトは深く息を吸い、机に肘をつく。授業のこと、実力クラスの試練、異界での冒険……あらゆる出来事が頭を巡る。
教室には誰もいないが、空間は決して寂しいだけではなかった。
生徒たちの残した痕跡や、窓から差し込む光、机に置かれたノートの文字が、確かにここに「時間」と「記憶」が存在することを示していた。
ミナトは一枚のノートを開く。
そこには、以前に実力クラスの仲間が書き残したメッセージがあった。
「困ったら、自分を信じろ」
その短い言葉に、彼の胸は熱くなる。
教室の扉を閉めると、廊下の静けさがさらに増す。
誰もいない教室――しかし、そこで流れる時間は、決して止まってはいない。
むしろ、ここは自分と向き合い、思考を深め、次の行動を決めるための特別な場所なのだと、ミナトは感じた。
夕陽が沈むと、教室は一層静かになる。
しかし、誰もいないからこそ、思考は自由で、未来への選択肢は無限に広がっていた。
ミナトは立ち上がり、机の上のノートをそっと閉じる。
「よし……次に進もう」
誰もいない教室の静寂に、静かな決意が響いた。
誰もしなない学校 〜誰もしなプール〜
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夏の日差しが校舎の屋上や校庭を照らす中、プールは静かに水をたたえていた。
誰もいない。だが、そこには誰も死なない特別な世界のルールが息づいている。
ミナトは水着に着替え、プールサイドに立つ。
「……誰も死なないなら、思い切り泳げるな」
そうつぶやくと、跳ねる水しぶきに恐れも痛みもないことを確認し、思い切り飛び込む。水面は光を反射してきらめき、彼の体を包む。
プールの底まで潜っても息切れの心配はなく、浮力も絶妙に体を支える。
「こんな環境、他の学校じゃありえない」
水中で体をひねり、ターンして蹴り出す。水の抵抗がまるで訓練用の障害のように変化し、ミナトは全力で泳ぐ感覚を楽しむ。
突然、水面が揺れ、光の渦が現れる。
「これは……異界の影響?」
プールの水面が波打ち、色が赤や青に変化する。水中に浮かぶ光の粒は、まるで小さな魔力の結晶のようだ。
ミナトは魔導書を取り出し、光の流れを操作して泳ぎやすいルートを作る。
水面から顔を出すと、校庭の空気と同じように、静寂が広がっていた。
「誰も死なないけど、危険は感じられる」
不思議な感覚に胸が高鳴る。泳ぎながら、プールの水自体が挑戦者の体力や魔力を試すかのように変化するのだ。
やがて、水面に映る自分の姿の周囲に小さな泡が集まり、光となって浮かび上がる。
「ここに秘密がある……」
ミナトは泡を手で掬うと、そこに異界の力の痕跡を感じ取る。プールはただの水場ではなく、この学校の「異界への通路」のひとつでもあった。
誰もしなプール――
そこは、命を気にせず挑戦し、成長し、未知の力を知る場所。
水の中で体を動かすたび、次の冒険への準備が整っていく。
そしてミナトは、水面に浮かぶ光の結晶を握りしめ、決意を新たにした。
「さあ……泳ぎ続けるしかない」
誰もしなない学校 〜誰も知らない音楽室〜
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校舎の最奥、普段はほとんど使われない音楽室の扉を開けると、空気がひんやりと重く、微かに埃の匂いが漂っていた。
誰もいない。だが、部屋に置かれた楽器たちは静かに息づいているかのようで、まるで待っていたかのように光を反射していた。
ピアノの鍵盤に手を置くと、指先に微かな振動が伝わる。
「……誰も知らない部屋なのに、こんなに力を感じるのか」
ミナトは小さく息を吐く。音楽室には、普通の楽器の音だけでなく、空間全体に潜む魔力が共鳴しているのだ。
ヴァイオリンやフルートを触れるたび、光の粒が浮かび、空気を揺らす。
弦を弾くと、微かに空間が震え、天井の光の模様が波打つ。
「ここは……ただの音楽室じゃない」
ミナトは感じ取る。音楽が、異界の力とつながり、現実の物理法則さえ変えてしまう空間だと。
楽譜を手に取ると、不思議な旋律が頭の中に流れ込んできた。
ページの文字は光を帯び、読み進めるごとに魔法の力を解放する。
「この旋律を奏でれば、何かが起きる……」
恐る恐るピアノの鍵盤を押すと、空気が震え、微かに光が部屋中を走った。
突然、部屋の奥の窓から異界の影が覗き込む。
「……これは試練か?」
ミナトは鍵盤を叩きながら、旋律の魔力で異界の影を押し返す。
音の波動は防御にも攻撃にもなる。奏でるほどに、音楽室の力が彼の体に流れ込み、力と知覚が研ぎ澄まされる。
やがて、旋律が頂点に達した瞬間、音符の光が部屋全体を包み込み、影は消え去った。
静寂が戻り、ただピアノの余韻だけが残る。
「……これが、誰も知らない音楽室の力か」
ミナトは微かに微笑む。
誰もしなない学校――
その中で、音楽室は魔法と音楽が融合する特別な場所。誰も知らないからこそ、思い切り力を試し、未知の世界に触れることができるのだ。
ミナトは鍵盤に手を置いたまま、そっとつぶやく。
「この旋律で、次の冒険を呼び込もう」
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