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異世界転生したら第21王子だったけど、許嫁も侍女も姫も俺に夢中で嫉妬の嵐 モテすぎて部屋に引きこもってます  作者: マーたん


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喪失の章

前回のお話は?

戦いは終わったはずだった。

 だが、静寂の中に訪れたのは安らぎではなく、奇妙な隔たりだった。


 街が再建されていく中で、アリアの許嫁であった青年──ルカは、深くため息をついた。

「アリア…君の魔導は強すぎる。君と共に歩むには、俺はあまりにも…小さい」

 そう言い残し、彼は街を去っていった。


 彼女を支えていた幼馴染の女性・ミナも、傷ついた仲間の治療に身を捧げることを決意し、アリアから距離を置いた。

「アリア、あなたといると…自分が追いつけない。私は私の道を行く」


 さらに、冒険の中で心を通わせた女戦士レイまでもが、別れを告げる。

「あなたの隣は、戦う力のある者でしか立てない。私は…もうそこにいられない」


 ひとり、またひとりと去っていく。

 それは裏切りではなく、それぞれが選んだ未来だった。

 けれど、アリアの胸に残ったのは、深い喪失の痛みだった。


 夜。静まり返った街外れの教会。

 アリアはひとり、古びたベンチに腰を下ろし、魔導書を抱きしめた。

 そのページは新たな力を授けようと淡く輝いていたが、彼女の心を癒すことはなかった。


「私は…皆を守るために戦ったのに。

 どうして、気づけば…誰も隣にいないの?」


 声は虚空に溶け、返事はない。

 ただ、孤独だけがそこに残っていた。


 ──だが、その喪失はやがて、彼女をさらなる冒険へと導く。

 時空の狭間に潜む「羅眼のらがんのぬし」が、彼女を待っていることを、まだ誰も知らなかった。



孤影の王子


 大陸の果て、朽ちた城の片隅に、一人の若者がいた

 彼の名はエルディオン──第21王子


 かつて彼の周囲には許嫁がいた

 貴族の娘も、戦士の女も、歌姫も、彼に夢を託して集った

 だが、すべては去った

 王位継承の争いに敗れ、彼に従う理由を誰も持たなくなったからだ


 広間は静かだった

 蝋燭はほとんど溶け落ち、風の音だけが壁を撫でる

 エルディオンは玉座にも座らず、ひび割れた床に腰を下ろしていた


「……結局、俺には何も残らなかったな」


 指に残るのは、砕けた結婚指輪の欠片

 愛を誓ったはずの女も、友も、兵もいない

 鏡に映るのは、ただ孤独に取り残された第21王子だけ


 しかし、不思議なことに、その瞳にはかすかな光が宿っていた

 失ったものの大きさに押し潰されながらも、それでも彼は生き延びた

 彼がただ一人であることこそが、何かの「始まり」であるかのように


 夜空を裂くように、遠雷が轟く

 彼は立ち上がり、胸に残された小さな決意を呟いた


「……もう誰も信じなくていい

 だが、この孤独の先に…必ず俺の答えを見つけてみせる」


 孤高の王子の旅路が、ここから始まった


夢の果て


 闇を裂いて、王子は立ち尽くしていた。

 失った許嫁たちの面影が遠ざかり、国は炎に呑まれ、友は次々と死に、ただひとり自分だけが残された。


 孤独と絶望の果てに、王子は叫んだ。


「……これが、俺の運命なのか!」


 その瞬間。

 視界が歪み、崩れた城も、燃える大地も、消え去っていった。


 ――目を開けると、そこは白い天井だった。

 硬い寝台の上で、王子は荒く息をつきながら目をこすった。

 窓から差し込む光は穏やかで、戦場の喧騒も、血の匂いもない。


「……夢、だったのか」


 胸の鼓動はまだ速かった。

 だが、夢の中で感じた喪失の痛みと孤独は、確かに残っている。

 あまりに生々しく、現実よりも現実のような夢。


 寝台の横には、小さな机。

 そこに置かれていたのは――彼が読みふけっていた一冊の魔導書だった。

 夢で見た時空戦闘、消えた許嫁たち、崩れゆく国。

 その全てが、この書の頁に描かれていた。


「……これは」


 王子は震える指で魔導書を閉じた。

 夢で体験した運命は、ただの幻影にすぎなかったのか。

 それとも、これから訪れる未来の予兆なのか。


 静寂の中、彼は深く息をつき、ゆっくりと立ち上がった。


「夢に呑まれるか、それとも夢を越えるか……

 選ぶのは、俺自身だ」


 窓の外で、風が新しい一日を告げるように吹き抜けた。


新たなる出会い


 静まり返った部屋の扉が、わずかに軋む音を立てた。

 王子が顔を上げると、そこに――一人の女性が立っていた。


 長い黒髪が光を受けて揺れ、深い瞳が真っ直ぐに王子を見据えている。

 見覚えのある姿ではない。夢で出会ったどの許嫁でもなく、記憶のどこを探しても名前は浮かばなかった。


 だが、不思議と懐かしさを伴う気配があった。


「……あなたが、第21王子様ですね」


 澄んだ声が、現実の空気を確かに震わせた。

 夢の幻影ではない。そこに“彼女”はいた。


「俺を……知っているのか」

「ええ。長い夢を見ておられたでしょう。その夢を終わらせるために、わたしはここに来ました」


 王子の心臓が、再び強く脈打った。

 夢で失った者たちの面影が、よみがえる。

 だが今、目の前にいるのは唯一の現実。


「……お前は、誰だ」


 女性は一歩進み、柔らかく微笑んだ。

 その手には、王子が先ほど閉じたはずの魔導書が握られていた。


「わたしの名は――」


 言葉が紡がれる瞬間、部屋の空気が震えた。

 王子の運命を大きく変える、新たな章が始まろうとしていた。

次の機会があれば

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