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異世界転生したら第21王子だったけど、許嫁も侍女も姫も俺に夢中で嫉妬の嵐 モテすぎて部屋に引きこもってます  作者: マーたん


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消えた魔法少女 ―異界の牢獄編―

前回のお話は?

夜の帳が街を覆い、かすかな灯火が石畳を照らしていた。

魔法少女アリアの不在は、人々の心から笑みを奪って久しい。

彼女が最後に戦った礼拝堂の廃墟には、今もなお、誰も近づこうとしない。

そこに漂う冷気は、ただの風ではなく、どこか“異界”から漏れ出したものに思えた。


ミナは一人、震える手で床石を撫でていた。

その下に潜む魔法陣の痕跡――円環をなす刻印は、血のような赤を帯び、見る者の心をざわつかせる。


「アリア……あなた、ここで何を……」


答えはない。だが彼女の直感は、友がまだ生きていると訴えていた。

ただ、普通の世界にはいない。異界に囚われている。


ミナは立ち上がると、振り返った。そこには剣を携えたカイルが立っていた。

「決めたか、ミナ。異界に行く気なんだな」

「ええ。アリアを見捨てることなんてできないもの」


二人の背後に、軽やかな足取りで盗賊レイが現れる。

「まったく……危険だって分かってるのに、どうしてみんな無茶をするんだか。ま、俺も付き合うけどな」


さらに、その場にもう一人の影が加わった。

フードを深くかぶった青年――治癒士ルカ。かつて仲間から無能と蔑まれ、冒険者パーティーを追われた男。

「俺も行く。……俺にしかできないことがあるかもしれない」

その声はかすれていたが、瞳にはかつてない決意の光が宿っていた。


ミナは微笑んだ。

「ありがとう、ルカ。あなたがいてくれるなら、きっと心強いわ」


四人は視線を交わし、異界の牢獄へ踏み込む覚悟を固める。

礼拝堂の床石の中心、赤黒く輝く魔法陣。

そこから低い唸り声が響き渡り、闇が広がる。


――《ようこそ、我が牢獄へ》


その声とともに、彼らの視界は歪み、闇に飲み込まれた。

次に目を開けたとき、そこはもう、この世の光では照らされない世界だった。


冷たい空気が、肌を突き刺す。

闇の牢獄――その中心に、鎖に縛られた少女がいた。


アリア。

白い衣は裂け、淡い光を放っていた魔力の結晶は砕かれ、彼女の胸元で鈍く光るだけだった。

その瞳には、かつての力強さはない。けれど、消え入りそうな呼吸の中でも、彼女はまだ戦っていた。


「……まだ……負けない……」


低く笑う声が牢の奥から響く。

異界の支配者――〈羅眼〉を持つ魔獣王ゼルド。

「哀れな魔法少女よ。お前の力は、この牢の闇が吸い尽くす。いずれ心もまた、我がものとなろう」


アリアは顔を上げ、震える声で返した。

「……仲間が……きっと来る。私は……信じてる」


その言葉が虚しく響いた瞬間、牢の壁が震えた。

異界の結界に裂け目が生じ、四つの影が飛び込んでくる。


「アリアッ!」

ミナの声が牢に届いた。


鎖に縛られたアリアの瞳が大きく見開かれる。

「ミナ……カイル……レイ……そして……ルカ……!」


しかし、その再会はすぐに闇の波動に遮られた。

ゼルドが咆哮し、牢全体が血のような赤に染まる。

「来たか……だが、ここは我が世界! お前たちの力は半分も出せぬぞ!」


仲間たちは武器を構えた。

剣の刃に炎を灯すカイル。

短剣を両手に輝かせるレイ。

祈りを込めて魔法陣を展開するミナ。

そして――震える手で杖を握るルカ。


(俺は……ここで証明する。俺が無能なんかじゃないって……アリアを救う、この仲間を守る……!)


ルカの胸の奥で、微かに封じられていた光が目を覚まそうとしていた。


ゼルドの咆哮が響く中、ルカは震える手で杖を握り直した。

 心の奥底に眠る力――過去に冒険者パーティーから干され、無力と蔑まれた自分を証明するための光が、微かに脈打つ。


「……俺にできることは……もう、これしかない!」


 ルカの眼が赤く輝き、杖から白く強い光がほとばしる。

 その瞬間、羅眼の力と共鳴するかのように、彼の周囲の闇がざわめき、ゼルドの影の触手が逆に震えた。


「なっ……!?」

 ゼルドの声が不意にひるむ。


 ルカは叫びと共に杖を振り下ろす。

 光が鋭い刃のように伸び、ゼルドの腹部を裂いた。

 黒い霧が炸裂し、空間全体に衝撃が走る。


 その衝撃で、アリアを縛る鎖が緩む。

 「これなら……仲間も!」

 ルカの力は、仲間たちの魔力とも共鳴し、複雑に絡み合う光の網を作り出した。


 カイルが剣を振り、レイが短剣で敵の影を切り裂く。

 ミナは魔法陣を完成させ、アリアの力を封じた闇から引き出す。


「アリア、今だ!」

 ルカの叫びに合わせて、四人の力が一点に集中する。

 束縛の鎖が光を弾き返し、異界の牢獄が轟音を立てて揺れる。


 アリアの瞳が一瞬、再び輝いた。

 「……ありがとう……!」


 ゼルドは怒りに震えながらも、光の刃に押され、次第に後退を余儀なくされる。


 ルカの覚醒――それは、干された者としての屈辱を超えた、真の力の目覚めだった。


光が牢獄を満たし、アリアの瞳が再び鮮やかに輝いた。

 裂けた鎖は完全に消え、彼女の手には光の弓が再び握られていた。


「……行くわ、みんな!」

 アリアの声には迷いがなく、かつての勇気と決意が戻っていた。


 ゼルドは黒い翼を広げ、咆哮する。

「消えぬか……羅眼の継承者どもよ!」

 闇が渦を巻き、触手のような影が四方から襲いかかる。


 しかし、仲間たちは恐れなかった。

 ルカの光、ミナの魔法陣、カイルの剣、レイの短剣――全員の力が一点に集中し、アリアの弓に宿った。


 アリアは深呼吸すると、弓を引き絞る。

 矢は一瞬、光の柱となり、ゼルドの胸へ一直線に飛んでいった。


「――これで、終わりよ!」


 矢が命中した瞬間、ゼルドは断末魔をあげ、黒い霧となって消え去った。

 異界の牢獄は崩壊を始め、暗黒の空間が光に押し流される。


 アリアは地面に膝をつき、呼吸を整える。

 仲間たちが駆け寄り、彼女を抱きしめる。

 涙と笑顔が、長い絶望の夜を終わらせた。


「ありがとう……みんな、無事でよかった」

 アリアの言葉に、ルカも微笑む。

「俺たち、もう二度と見捨てない……お前も、俺たちも」


 夜明けの光が、崩れた牢獄を照らし出す。

 魔法少女と追放者たち――異界での試練を乗り越えた者たちの、新たな絆がそこにあった。


 静かに、だが確かに、希望の光が街に戻ってきたのだった。


消えた魔法少女 ―帰還と再会―


 街は久しぶりの太陽に包まれていた。

 屋根の上には鳩が舞い、石畳には温かい光が差し込む。

 人々は立ち止まり、空を見上げる。


 その中心に立つのは、完全に復活したアリア。

 光の弓を肩にかけ、微笑むその姿は、街の人々にとって希望そのものだった。


「アリア!」

 子供たちが駆け寄り、彼女の手を握る。

 大人たちも、涙をぬぐいながら、感謝と歓声を送る。


 アリアの隣には、ルカ、カイル、ミナ、レイ――

 異界で共に戦った仲間たちが揃っていた。

 追放者だった者たちも、今は英雄として認められ、街の人々の視線を浴びる。


「無事でよかった……」

 ミナが小さく呟くと、アリアは笑顔で答えた。

「ええ、みんなのおかげよ。ひとりじゃ、絶対にここまで来られなかった」


 街の広場には、急造の記念碑が建てられていた。

 そこには「魔法少女アリアと仲間たちの勇気、永遠に」と刻まれている。


 ルカはその碑を見上げ、心の中で誓った。

「俺たちは、もう二度と見捨てない。困っている人のために、この力を使おう」


 アリアは光の矢を空へ放ち、天高く舞う。

 矢が光となって広がると、街は一層輝き、長かった闇の記憶を溶かすようだった。


 こうして、魔法少女と追放者たちの物語は、新たな日常の光に包まれて幕を閉じた。

 だが、異界での戦いの記憶は、彼らの胸に深く刻まれ、次なる試練に向けて静かに力を蓄えていた。

次回も楽しみに

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