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異世界転生したら第21王子だったけど、許嫁も侍女も姫も俺に夢中で嫉妬の嵐 モテすぎて部屋に引きこもってます  作者: マーたん


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羅眼の覚醒

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夜の帳が降り、廃れた神殿に冷たい風が吹き込んでいた。

 石壁に刻まれた古代文字は、まるで血管のように淡い光を放ち、中央に立つ青年の影を浮かび上がらせる。


 ――その瞬間、彼の右目が裂けるように赤く輝いた。


「……見える。世界の裏側が……!」


 それは「羅眼」。

 万物を編み目のごとく結びつける糸を見抜き、真実と虚構を織り分ける禁忌の眼。

 彼の瞳に映ったのは、仲間と共にいたはずの人々の影が、蜘蛛のような魔の糸に操られている姿だった。


「お前たちは……傀儡だったのか」


 絶望と怒りが入り混じり、青年の胸に炎が灯る。

 羅眼はただの視覚ではなかった。

 見抜いた糸を断ち切る力をも秘めている。


 目の奥で、光がさらに強く燃え上がる。

 操られていた仲間たちの口から、一斉に悲鳴があがった。

 彼はその全てを背負うように、剣を握りしめる。


「この羅眼で、必ず真実を取り戻す!」


 神殿を揺るがす叫びと共に、運命の糸が断たれていった。


羅眼の宿命


 糸を断ち切った瞬間、仲間たちは膝をつき、まるで夢から覚めたように荒い息を吐いた。

 しかし安心する暇もなく、神殿の奥から重い音が響く。

 石扉が軋み、暗黒の霧が流れ込んできた。


「……待っていたぞ、羅眼の継承者よ」


 低い声と共に現れたのは、漆黒の鎧を纏った巨影だった。

 その頭部には、ひとつの異様な瞳――血のように赤い“偽りの羅眼”が輝いていた。


「お前も……羅眼を……?」

 青年は剣を構えながら、声を震わせる。


「そうだ。羅眼は一つではない。真実を見抜く眼と、虚構を創り出す眼……二つでひとつ」

 敵の声が神殿に響き渡る。


 仲間の一人が叫んだ。

「気をつけろ! あいつの瞳に捕らえられたら、現実そのものが塗り替えられる!」


 敵の羅眼がぎらりと光った瞬間、神殿の空間が歪んだ。

 床が海となり、天井が無数の翼ある影で覆われる。

 恐怖に叫ぶ仲間たち。


 だが青年は震える手で自らの眼に触れた。

「ならば……俺の羅眼で、その虚構を斬り裂く!」


 二つの羅眼がぶつかり合う。

 闇と光、虚構と真実。

 その狭間で、世界そのものが裂ける音がした――。


干された戦士


 羅眼を手にしてから数日。

 青年――カイは、冒険者パーティーの仲間たちから距離を置かれるようになっていた。


「お前の目……正直、気味が悪い」

「俺たちが何を考えてるかまで覗かれてる気がするんだ」

「仲間にそんな化け物がいるなんて、もう耐えられない」


 言葉は刃のように突き刺さる。

 羅眼は真実を見抜く力を持つがゆえに、隠し事を抱える者にとっては脅威そのものだった。

 カイが否定しようとする前に、リーダーが冷たく言い放った。


「……カイ。悪いが、今日限りで俺たちのパーティーから出ていけ」


 焚き火がぱちりと弾けた音だけが、沈黙を裂いた。

 カイの胸は空洞のように冷たく、重かった。


 だが背を向けて去るとき、羅眼が映したのは仲間たちの影に絡みつく黒い糸だった。

 それは、あの“虚構を創る羅眼”と同じ気配を放っていた。


「……やはり、敵はもう近くまで来ている」


 干された孤独と裏切りの痛みを抱えながらも、カイは一人で戦う道を選ぶ。

 彼の眼には、仲間さえ気づかぬ真の闇が映っていた。


追放者たちの集い


 夜の街をさまよい歩いたカイは、寂れた路地裏の酒場に辿り着いた。

 扉を開けた瞬間、酒と煙草と汗の匂いが鼻を刺す。

 中にいたのは、どこか影を背負った者ばかりだった。


「よう、新顔か?」

 カウンターの奥から声がかかった。

 片腕を失った斧戦士、背に大きな傷を持つ女魔導師、そして獣人の盗賊――

 彼らは皆、かつて冒険者パーティーから追われた者たちだった。


 斧戦士が豪快に笑った。

「ここは干された連中の溜まり場よ。居場所がねぇなら、好きに座ってけ」


 カイは黙って席につき、羅眼の力を隠すことなくその瞳を晒した。

 他の者たちは一瞬だけ息を呑んだが、すぐに薄く笑った。


「いい目だな。お前も何か背負ってるってことだ」

「俺たちはもう、追放も恐れねぇ。ここから先は、自分のためだけに戦う」


 その言葉に、カイの胸の奥でわずかな熱が灯った。

 孤独に抗い続けていた心が、少しだけ和らいでいく。


 ――だがその瞬間、羅眼が再びざわめいた。

 酒場の奥、闇の中に潜む影が蠢いている。

 黒い糸が、追放者たちをも狙って伸びていた。


「……やはり、敵はここにも来ているのか」


 カイは静かに剣を握りしめた。


追放者たちの反撃


 闇の糸は、酒場の梁や床下から這い出し、客たちの足へ絡みついた。

 誰かが悲鳴を上げる前に、黒い塊が形を持ち、異形の魔獣へと変じた。


「チッ、ここまで嗅ぎつけてきやがったか!」

 斧戦士が椅子を蹴り飛ばし、斧を振り下ろす。

 鋭い刃が黒い影を裂くが、切り口はすぐに繋がっていく。


「普通の武器じゃ……通らない!」

 女魔導師が杖を構え、青白い炎を放つ。

 炎に焼かれた影は一瞬だけ悲鳴をあげたが、それでもなお再生しようと蠢いた。


 そのとき、カイの羅眼が赤く光る。

 彼の視界には、影の核を貫く一本の細い糸が見えていた。


「――あそこだ!」

 叫ぶと同時に剣を振り抜く。

 刃は影の胸を裂き、羅眼に映った糸を断ち切った。


 影は断末魔をあげ、霧のように消え去った。


 酒場に残されたのは、荒い息をつく追放者たちと、割れたグラス、散らばった酒瓶。


「お前……今のは……」

 斧戦士が息を吐きながら、カイを見た。


 カイは静かに答える。

「俺には“羅眼”がある。真実を見抜き、敵の核を断ち切る眼だ」


 女魔導師が薄く笑った。

「いいじゃない。干された同士、最高の力じゃない」


 獣人の盗賊が牙を見せ、笑った。

「これで決まりだな。俺たちは今日から――“追放者の牙”だ」


 新たな絆が、血の匂い漂う酒場で結ばれた。

次回も楽しみに

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