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異世界転生したら第21王子だったけど、許嫁も侍女も姫も俺に夢中で嫉妬の嵐 モテすぎて部屋に引きこもってます  作者: マーたん


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勇者の息子の誕生

物語は佳境を迎えつつあります。小屋の裏に隠されていた扉は、ただの通路ではなく、勇者の血を引くアルディスに試練を与えるための道標でした。閉ざされた道の奥には、父の残した秘密が眠っているのか、それとも新たな絶望が待ち構えているのか――。隠し扉の存在は、物語全体の流れを大きく変える転機となるでしょう。

長い戦いと悲しみを越えて、ついにその時が訪れた。

夜明け前、静かな空気を破るように産声が響き渡る。


「……生まれた……」

セリーナは汗に濡れた額で微笑み、腕に小さな命を抱く。

その姿に戦士の胸は熱くなり、涙が自然と溢れた。


「勇者の……息子だ」

戦士は震える手でその小さな指を包み込む。

温かい命が確かにそこにあり、過去の喪失を癒やすように彼の心を満たしていく。


娘は弟の誕生に目を輝かせ、リオも小さな声で「おとうと」と呼びかける。

家族全員が新たな希望をその瞳に映し、未来への誓いを新たにする。


戦士は静かに言葉を紡ぐ。

「この子が歩む未来は、血に濡れたものではなく……光に包まれたものにする」


その誓いは、家族への愛だけでなく、国と人々への決意でもあった。

勇者の息子の誕生――それは新たな時代の始まりを告げる鐘の音だった。


「未来を託す者」


勇者の息子が誕生してから、街には久しぶりに温かな空気が満ちていた。

人々は「新しい命は国の希望だ」と語り合い、復興に励む手にも力が入る。


戦士は剣を脇に置き、揺りかごの中で眠る息子を見守る。

「眠っている顔は、まるで天使だな……」

彼はそっと指で額を撫でる。

その小さな呼吸の一つひとつが、未来への灯火に思えた。


娘は弟を抱きたくて仕方がない様子で、セリーナの傍らに座っていた。

「私がお姉ちゃんだから、守ってあげる」

その言葉に戦士とセリーナは笑みをこぼす。


だが、平穏の影には必ず闇が潜む。

遠く離れた廃墟の教会では、黒衣の者たちが集まっていた。

「勇者の血を継ぐ者が生まれた……」

「ならば、その命を奪い、我らの力とせねば」


赤い蝋燭の炎が揺れ、冷たい祈りの声がこだまする。

勇者の息子は希望であると同時に、敵にとっては狙うべき存在。


戦士はまだ知らなかった。

新しい命が光であるならば、それを覆い尽くそうとする影が、すでに動き始めていることを――。


 「勇者の血脈」


勇者の息子の誕生から数年――。

小さな村の片隅で育つその少年は、まだ幼いながらも、瞳の奥に父と同じ光を宿していた。


村人たちは彼を「新しき光」と呼び、災厄の世に差す希望として語り継いだ。

しかし同時に、彼の存在は教会や諸国にとっても「力の象徴」となり、密かにその命を狙う影が忍び寄る。


幼き勇者の息子は、母の腕に抱かれ、ただ無垢に笑っていた。

だが父の仲間たちは知っていた――その背後に潜む陰謀の匂いを。


平和会議の裏で、まだ果たされぬ約束と、教会の真の狙いが交錯し続ける。

そして、「勇者の血脈」を巡る新たな戦いが始まろうとしていた。


村の夜空には星が瞬き、かつて倒れた友の魂が見守るかのように輝いていた。

だが、その星明かりの下に生まれる影の動きは、やがて大きな嵐へと育っていく――。


――物語は次の世代へと移り、勇者の息子の物語が幕を開ける。


 「幼き勇者の試練」


勇者の息子――名を「アルディス」と名付けられた少年は、まだ七つにも満たぬ年であった。

村の子どもたちと駆け回り、森の小川で遊び、無垢な笑みを絶やさぬその姿は、誰もが平和の象徴と信じて疑わなかった。


だが、血は争えぬもの。

彼の手に握られた木の枝は、まるで剣のように鋭く振るわれ、時に相手を圧倒する気迫を帯びていた。

村の老人は目を細めて呟いた。


「やはり……勇者の子よな。」


しかし、その才能の芽生えは同時に「影」を引き寄せる。

夜の村に忍び込む黒衣の男たち。

教会の密偵であり、彼らはただ一つの使命――「勇者の血を絶やす」ために放たれた者たちだった。


その夜、アルディスは初めて死の匂いを感じる。

母の叫び、仲間の剣戟、燃え上がる家々――。

幼き少年の胸に刻まれたのは、「生まれながらに背負う宿命」であった。


星明かりの下、彼は父の遺した剣に触れ、かすかに誓った。


――「ぼくは、守る」


涙に濡れたその瞳に、勇者と同じ光が宿る。

ここから、新たな勇者の物語が本格的に動き出すのだった。


 「逃避行の始まり」


黒衣の男たちによる襲撃から一夜。

村は焼け落ち、かつての穏やかな生活は灰の中に消えた。


アルディスは、母に手を引かれながら夜明けの森を進んでいた。

振り返れば、瓦礫の下で倒れた友の姿、助けられなかった人々の叫び――幼い心には重すぎる記憶が刻まれている。


母は決して涙を見せなかった。

「生きるのです、アル。あなたが生きることが、皆の願いなのだから」

その言葉に少年はただ頷き、ぎゅっと母の手を握りしめた。


やがて二人は、森の奥にひっそりと佇む古い小屋に辿り着く。

そこには父の旧友――隠者のように暮らす剣士が待っていた。

灰色の髪を揺らしながら彼は言う。


「勇者の子よ。お前はもう、選ばれる側ではない。狙われる側だ」


剣士はアルディスを見据え、静かに父の面影を探しているようだった。

その眼差しに、少年は思わず背筋を伸ばした。


ここから始まるのは、ただの逃亡ではない。

「勇者の息子」としての運命を知り、仲間を得て、やがて立ち向かうための、長い旅路の第一歩だった。


 「隠者の剣」


森の奥の小屋で暮らし始めて三日。

アルディスは初めて木剣を手にした。


「構えろ」

隠者の剣士――名をガルディアンと言った――は、鋭い声で指示を飛ばす。


アルディスは慣れない両手で木剣を持ち上げるが、すぐに腕が震えた。

幼い体には重すぎる。しかし、ガルディアンの眼光に気圧されて、決して剣を下ろそうとはしない。


「いい目だ。お前はまだ子供だが、その瞳にだけは折れぬ火がある」


ガルディアンは枝を拾い、軽く打ち込んできた。

木剣を構えるアルディスの体は弾かれ、背中から地面に倒れる。肺の空気が一気に抜けた。


母が駆け寄ろうとするが、ガルディアンは片手で制した。

「これは鍛錬だ。助けるな」


アルディスは苦しみながらも起き上がり、再び木剣を構える。

「……僕は、負けない……父さんの子だから」


その言葉に、ガルディアンの眉がわずかに動いた。

そして次の瞬間、枝が再び襲いかかる。


何度も叩き伏せられ、血の味を覚え、体中に擦り傷を負う。

それでもアルディスは立ち上がり続けた。


やがて、ガルディアンの枝を受け止めた木剣が、わずかに震えながらも折れなかった。


「……今日の稽古はここまでだ」


夜、焚き火の前で母は息子の小さな手を包み込みながら涙を堪えた。

その手のひらは、もう幼子のものではなく、勇者の血を継ぐ戦士の手になろうとしていた。


 「隠し扉の先に」


鍛錬の合間、アルディスは小屋の裏手の岩壁を探っていた。

風に晒され続けた岩のはずなのに、一部分だけ苔が生えていない。


「……ここ、だけ違う」


小さな指で押すと、鈍い音と共に石が沈んだ。

すると岩壁全体が低く震え、地面に埋もれていた縦長の線が淡く光を帯びた。


母が慌てて声をあげる。

「アルディス! 触っては――」


だが遅かった。

石の壁が音もなく割れ、奥へと続く暗い通路が現れた。


「隠し扉……?」


ガルディアンは険しい表情で通路を覗き込み、しばし無言だった。

やがて低く呟く。


「……この小屋に身を隠すと決めた理由を、お前に話す時が来たようだ」


通路の奥からは、かすかな魔力の波動が漏れている。

アルディスの胸に眠る勇者の血が、それに共鳴するように熱く脈打った。


「父さんの……何かがあるの?」

「確かめるかどうかは、お前の選択だ」


焚き火の光に照らされるガルディアンの横顔は、長年の秘密と後悔を宿していた。

アルディスは唇を噛みしめ、剣を握りしめた。


「行くよ。父さんに繋がるものなら、必ず見つけたい」


隠し扉の向こう、運命を決定づける暗き道へ――。

今回描いた「隠し扉」は、古典的ながら物語の緊張感を一段と高める装置です。家族の絆と勇者の宿命が交錯する場面で、この通路が何を意味するのかを考えながら執筆しました。次回は、その奥に潜む「遺物」あるいは「守護者」との出会いを描く予定です。アルディスの覚醒と血の記憶に繋がる重要な章となりますので、ご期待ください。

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