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異世界転生したら第21王子だったけど、許嫁も侍女も姫も俺に夢中で嫉妬の嵐 モテすぎて部屋に引きこもってます  作者: マーたん


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虚界の門(アビスゲート)

前回までの王子は?

──風が止まった。

灰色の空が裂け、黒き光が地平線を貫く。まるで世界の底が口を開いたかのように、無音の渦が天と地を呑み込んでいく。


リィナは丘の上に立ち、震える手で剣を握り締めた。

その視線の先には――巨大な円環の門。

幾千の符文が空中に浮かび、脈動する黒い霧が、まるで生き物のように蠢いていた。


「……これが、“虚界アビス”の門……」


彼女の隣には、父の形見である蒼銀の盾を背負った青年・カイルがいた。

かつて王国を守る盾騎士の末裔。だが今は、王国の残兵と共に流浪の戦士として戦う日々だ。


「リィナ、感じるか? あの奥に……“呼んでる”何かがいる」

「うん……でも、それは人を救う声じゃない。私たちを壊そうとしてる」


門の向こう――そこにあるのは、かつて神々が封じた“もう一つの世界”。

生者の理が通じぬ、虚無と絶望が支配する世界。


リィナの耳元で、微かな囁きが聞こえた。

それは、あの“女神”の声だった。


『リィナ……開けなさい。お前の力で、門を解き放つのです……』


「またあなた……!」

リィナは怒りに燃える瞳で空を睨む。

「もう二度と、あなたの声には従わない!」


しかし、女神は静かに笑った。


『ならば見せましょう。あなたが拒んだ未来を――』


その瞬間、門が爆ぜた。

虚界から無数の影が這い出し、地を這い、空を裂いた。

叫び声でも唸りでもない――“存在の悲鳴”だった。


カイルが前へ出る。

「来るぞ! リィナ、背中を預けろ!」

「ええ……!」


二人は息を合わせ、襲いくる異形の群れに立ち向かう。

黒い爪が剣を弾き、腐食の風が肌を焼く。

それでもリィナは退かない。父が守ったこの地を、今度は自分が守る番だった。


炎の剣が閃き、影を焼き払うたびに、虚界の奥からまた別の何かが生まれてくる。

――その数、尽きることなし。


「カイル、門を閉じなきゃ!」

「だが、どうやって!? 神々が封印したものだぞ!」


リィナは荒れ狂う魔力の奔流の中で、ふと胸の奥に響く“記憶”を感じた。

前世――彼女が“王子”として生きていた時の記憶。

あの時、女神を封じた術式の断片が、確かに頭の中に刻まれていた。


「……わかった。私がやる!」

リィナは門の中心へと駆け出す。

その背に無数の黒い槍が飛ぶが、カイルが盾で全てを受け止める。


「お前の道は、俺が守る!」

「ありがとう、カイル!」


彼女は両手を広げ、詠唱を始めた。

声が震え、世界が震えた。


――“因果律逆転イニティウム・リバース


光が爆ぜる。

門が軋み、虚界の奥から悲鳴が響く。

あの女神の声がかすかに混じった。


『まだ終わらない……リィナ。因果は巡り、またあなたを喰らう……』


黒い門は、やがて光に溶け、音もなく消えた。

静寂。風が戻り、鳥の声がどこかで鳴いた。


だが、リィナはその場に膝をつく。

肩から血が流れ、意識が遠のいていく。

「……また、あの声が……聞こえる……」


カイルが駆け寄り、彼女を抱きしめる。

「リィナ! しっかりしろ! お前がいなきゃ、俺たちは――」


彼女は微笑み、目を閉じた。

「また……会えるよ。だって……因果は……巡るから……」


そして、光が彼女を包み込む。


その夜、虚界の門は完全に閉ざされた。

だが同時に、世界のどこかで――新たな門が、ひっそりと開こうとしていた。

リィナ・クロニクル「虚界のアビスゲート」篇は、

“因果の輪廻”と“人の意志”を描く転換章です。


女神と人間の戦いは、もはや正義と悪の境界を越え、

「何を守り、何を捨てるのか」という選択の物語へ。


リィナが見た光は、絶望か、それとも希望か。

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